雑誌 企業・経営
働いている人で、主人公でない人間など一人もいない。 当たり前のことでも徹底してやればオンリーワンになれる
ニッカ ウヰスキー 中川圭一

 ウイスキーは蒸溜開始から出荷まで長い年月がかかるため、ニッカウヰスキーは創業間もない時期、資金繰りのためリンゴ果汁を売った。当時の社名が『大日本果汁』、略称の「日果」がのちにニッカとなった。昨年も『竹鶴21年 ピュアモルト』が、国際的なウイスキーコンテストで、世界最高賞を3年連続受賞するなど絶好調。社長は農学博士号を持つ中川圭一氏(56歳)だ。

働いている人で、
主人公でない人間など 一人もいない。
当たり前のことでも
徹底してやれば
オンリーワンになれる
なかがわ・けいいち/'55年、東京都生まれ。東京大学農学部を卒業し、'79年にニッカウヰスキー入社。仙台工場へ配属され、先輩たちと寮住まい。その後、理化学研究所へ出向してウイスキーがなぜおいしいかについて、化学のメスを入れる。'01年に生産技術研究所長就任。栃木工場長、仙台工場長を経て'10年3月より現職

長い眠り

 ウイスキーづくりは、気の長い仕事です。私は研究畑が長く、いい香りがする原酒を造れる酵母などの研究をしていました。しかし、原酒を蒸溜しても、その後10年、20年と樽で熟成させなければ、ウイスキーとしておいしいかどうかはわからない。研究の成果が出るのはずっと先なんです(苦笑)。

こだわり

 余市蒸溜所では、今も、原酒を昔ながらの石炭直火焚きの炎で蒸溜しています。スチームだと120度くらいなのですが、石炭だと700度を超えるから、釜の底がわずかに焦げて、絶妙の香ばしさが出せるんです。ブレンドウイスキーに欠かせない、ライ麦などが原料のグレーンウイスキーづくりにも、世界に何台も残っていない蒸溜機を使い続けています。

切腹と敬意

 ウイスキー発祥の地はスコットランドです。私たちが世界最高の賞を受賞した時、現地の新聞に、スコットランドの民族衣装であるキルトを着た人が切腹をする風刺画が掲載されました。日本のメーカーに最高賞を獲られるなど切腹ものだ、という意味です。しかし、徐々にジャパニーズウイスキーの人気が高まり、今や日本製品が世界五大ウイスキーに数えられています。すべては品質にある。その意気込みがもたらした変化だと思っています。

志望動機

 私が弊社へ入社したのは、好きなお酒を飲む機会が増えるだろう、と思ったからです。それに、日本ではウイスキーなど誰も知らない時代に命がけでスコットランドに渡り、国内に製造技術をもたらした創業者・竹鶴政孝の話を本で読み、感激したからです。技術だけでなく、彼は奥さんを連れてきちゃったところもすごい(笑)。

技術開発

 入社後、パンの酵母なども研究しました。冷凍耐性があるパン酵母があれば、パン生地を冷凍してお店に運び、その場でオーブンに入れ、焼きたてとして提供できます。今はすでにある技術ですが、当時は夢のようなことと思いました。