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アメリカ人新聞記者は1年間のサバティカル休暇をもらって本を書く、元ロサンゼルス・タイムズ経済部長にインタビュー(前半)

 世界的ベストセラー『フラット化する世界』などで知られる著名ジャーナリスト、トーマス・フリードマン。昨年1月にサバティカル休暇(少なくとも1ヵ月以上の長期休暇)に入った。

 ニューヨーク・タイムズの看板コラムニストとしての仕事を中断し、新作の取材・執筆に集中するためだ。新作は「ザット・ユースト・ビー・アス(われわれはかつてそうだった)。中国との競争などでアメリカが出遅れてしまったことに焦点を当てた力作だ。

 アメリカでは新聞記者が数ヵ月から1年に及ぶサバティカル休暇を取得し、本を出版することが多い。本がベストセラーになれば、本人がジャーナリストとして自分のブランドを築けるばかりか、新聞社の評判も結果的に高まる---こんな考え方がある。新聞社にしてみればサバティカル休暇は人材への投資に相当する。

新聞記者歴20年のリック・ワルツマン氏

 2011年11月24日付の当コラムでも書いたように、日本の新聞界ではサバティカル休暇は論外だ。勤続10年目や20年目のリフレッシュ休暇さえ難しい。私が新聞社で取得した20年目休暇は年末年始の休みを含めて3週間。それでも「前代未聞」と言われた。

 長期休暇の取得を強行したことで懲戒解雇された記者もいる。1980年に会社の命令に反して連続1ヵ月の夏休みを取った時事通信記者だ。裁判になり、最高裁で記者側の敗訴が確定している。日本では夏休みはせいぜい1週間。1年間どころか1ヵ月間の休みでも波紋を呼ぶのである。

 こんな状況下ではサバティカル休暇は夢物語になる。1年間かけて本の取材・執筆に集中しようとしたり、大学院で専門分野の知識を深めようとしたりするならば、会社を辞めなければならない。新聞社側には「サバティカル休暇=記者の成長促進」ではなくサバティカル休暇=記者の成長停止」という考え方があるのだろうか。

 実際にサバティカル休暇を取得したことがあるアメリカ人ジャーナリストに話を聞いてみた。ウォールストリート・ジャーナルとロサンゼルス・タイムズの2紙で計20年間新聞記者として働いたリック・ワルツマンだ。彼はサバティカル休暇を利用して本を書いている。

 ロサンゼルス・タイムズ経済部長などを歴任し、現在はカリフォルニア州クレアモントにあるシンクタンク「ドラッカー研究所」所長を務めるワルツマン。インタビューの要旨は以下の通り。<>で示したカッコ内は私の補足説明。

 ---日本では「新聞記者=超多忙」は通説です。実際、ニュース競争の最前線に置かれながら記者を20年も続けると、心身共に疲弊してしまいます。だから20年も記者を続ければ、大抵はデスク(記者の原稿に赤字を入れる編集者のこと)へ昇進するのです。

ワルツマン 「忙しい」と不平をこぼすのは新聞記者の特性だと思います。その点で日本もアメリカでも同じです。新聞記者は性分として忙しいのが好きなのでしょう。世の中に衝撃を与えるようなスクープを放つことでアドレナリンを感じたいと思う記者が多いのでは。