「素人感覚で突貫取材」を始めた「東京プレスクラブ」弱腰記者の本当の狙い

 大新聞など既存のメディアは本当の事を伝えていないのではないか。昨年3月の東日本大震災以降、そんな疑念が国民の間に急速に広がっている。ブログやツイッター、フェースブックなどの新しい"メディア"が台頭し、ジャーナリズムのあり方にも変化が生じている。もっと国民の目線で政治家に体当たりできないか---。そんな思いで生まれた新しいジャーナリズムの試みがある。東京プレスクラブ。「弱腰記者」という不可思議な名刺を持つ松島凡氏の様々な取り組みが今、ネット上で話題になっている。

 書籍の大手取次会社である日本出版販売株式会社(日販)の社員である松島氏にはもう1つの顔がある。昨年6月に知人の会社経営者らが趣味で立ち上げた東京プレスクラブに参加し、ジャーナリストとしてデビューしたのだ。名刺にある「弱腰記者」という肩書きとは裏腹に、「フツーの人が疑問に思っていることを素直に聞いてみる」(松島氏)という素人ならではの突撃主義を掲げている。そんな突撃主義がいくつもの"戦果"を上げている。

松島凡(まつしま・ぼん)氏 1964年 福岡県生まれ。1990年上智大学文学部哲学科卒。ゼネコン他を転々とした後、1993年より日本出版販売に勤務。アミューズメント施設の開発やミシュランガイドの発売企画など、幅広く出版の新規事業にかかわる。2011年よりustreamやyoutube、ニコニコ動画などソーシャルメディアを中心に活動する「東京放送部」をスタート。6月には「東京プレスクラブ」を発足させた。本人によれば「シニカル&弱腰記者として」活動中。取材からリアル出版までを手がける。

 最初の突撃作戦は蓮舫行政刷新担当相(当時)の記者会見での質問。当時、経済産業省の改革派官僚として話題になっていた古賀茂明氏のベストセラー『日本中枢の崩壊』(講談社刊)を「蓮舫大臣はお読みになったか」と聞いたのだ。答えはNO。それで終われば普通の下世話な記者と変わらない。

 さっそく、古賀氏に会って、蓮舫大臣が読んでいないことを伝えると、古賀氏からサイン本を託された。その後取材で訪れた渡辺喜美みんなの党代表に、蓮舫大臣に手渡して欲しいと依頼する。二つ返事で引き受けた渡辺氏は国会の委員会で蓮舫大臣にサイン本を手渡したのだ。その一部始終を動画を駆使したブログで詳報したのだ。記事も作れて書籍告知も出来る一石二鳥作戦でもある。

 松島氏は「プロの記者が集まる会見に初めて出て、プロが聞かないことを聞かねばと思った」と語る。行政改革に取り組まない民主党政府を批判する古賀氏の主張を直接の責任者である大臣に無理やりにでも読ませてしまおう、ということだ。記者がそこまでやるのはジャーナリズムを逸脱しているという批判もあるだろう。だが、ネットなどの新しいメディアを駆使することで、政治家に行動を促す手法は面白い試みではないか。

 そんな弱腰記者の行動が次に向かったのが、朝霞公務員宿舎問題。まずは現場である埼玉県朝霞市の建設予定地に向かった。周辺住民に話を聞くためにやったことはプラカードである。「朝霞に公務員住宅を作るお金を、震災復興の財源に回してはいかがでしょう。野田首相」という趣旨の看板を掲げて街を歩いた。地元の人々が集まってきて公務員住宅を巡る生の声を聞くことができたが、もちろん、この場でもカメラを回して動画を撮影している。東京プレスクラブは徹底した公開主義なのである。

 東京プレスクラブのブログにもこうある。

 〈 オンライン会見の開催や勉強会の中継、話題となっている出来事の取材やネットでのオープンな素材提供をおこなっております。また、特定の記者やジャーナリストだけではなく『誰でも参加でき、質問できる記者会見』をネットを活用してつくり、共有すべき情報や資料は迅速に共有し拡散することでみなさんのお役に立つことを目指しています 〉

 フリージャーナリストが記者クラブを批判して第二記者クラブを作ったのとは発想が根本から違う。ともかくオープンにしてしまおう、というわけだ。しかも「情報は自由に使ってください」と掲げて、以下のように述べている。

 〈 東京プレスクラブに掲載された情報は転載・引用・転送・共有・拡散、すべて自由です。もちろん、ブログ、ニュースサイト、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等々、各種メディアでの利用も自由です 〉