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 田中直紀防衛大臣が支離滅裂な国会答弁を繰り返しているので陰に隠れているが、安住淳財務大臣の答弁も実はかなり滅茶苦茶だ。2月2日の衆院予算委員会でも大蔵省OB・山本幸三議員(自民党)の質問攻勢に珍回答を連発していた。

 日本の名目GDP額を聞かれ、「500兆円弱」(実際には約470兆円)、この20年間で中国のGDPが何倍になったかを問われると、「30倍」(正しくは12倍)。まあ、目くじらを立てるほどではないが、財務大臣としては甚だ心許ない答弁で失笑を買った。

 また、細かい言い間違いも頻発。国会答弁の場合、言い間違えると役人が国会の記録部に出向いて、速記録を訂正しなければならない。単純な言い間違いならその場で修正できるが、多少なりとも内容に関わる間違いの場合は委員会の了解も必要になる。2日の審議では30分程度の間に数ヵ所あったから、開会以来の累積は相当な数だろう。普通、事務方の作った答弁書があればそれほど間違わないのだが、安住大臣は答弁書の内容をよく理解せず適当に読むので、言い間違いが桁違いに多い。資質が疑われる所以だ。

 見過ごせない答弁もあった。インフレターゲティングに関する質疑だ。

 山本議員はまず、白川方明日銀総裁をやり込めた。FRBは1月25日、新たに2%の長期的な物価目標を導入したが、日銀が「これはインフレターゲティングではない」と説明しているのは「完全な誤訳だ」と切って捨てたのだ。実際、バーナンキFRB議長は「物価安定だけを目標とする政策をインフレターゲティングと解釈するなら、そうではない。

 FRBは物価安定と雇用最大化の二つを達成するのが責務なので、その両方を同時に目指すからだ」と述べたのである。インフレターゲティングの世界的権威であるだけに正確に説明したのだが、日銀はその一部を取り上げて曲解させる文章に仕立て上げたわけだ。日銀らしい姑息な手だ。

 この狡っ辛さを指摘した上で山本議員は安住大臣に、日銀に対してインフレターゲティング政策導入を求めるか、と質した。安住大臣は、日銀には独立性があるので任せている、と逃げを打った。

 すると山本議員はすかさず、「独立には目標設定の独立と政策手段の独立があり、日銀に目標設定の独立はないことを知っているか」と畳みかけた。安住大臣は「知っている」と答えたものの、「では日銀に2~4%程度の物価目標を与えるべきだ」と迫られると、あとはもうシドロモドロ。答えにならない答弁をモゴモゴ繰り返すばかりだった。

 それにしても、日銀の二枚舌には呆れ果てる。国会でインフレターゲティング論争をしたのと同じ2日、山口廣秀日銀副総裁が高松市で、「日銀は中心値1%程度が中長期的な物価安定の数値と理解している」として、2%の目標を掲げたFRBの手法と「基本的に変わりはない」と言っているのだ。白川総裁に至っては6日の参院予算委員会で平然と、「むしろFRBが日銀の政策に近づいてきたという認識」とまで語っている。笑止千万だ。

 だが、いくら日銀は優れていると言い張ったところで、実績を見ればそのウソは一目瞭然である。'98年の新日銀法施行以降、日本で前年同月比のインフレ率が0~2%に収まっていたのはわずか1割6分。一方、FRBが1~3%に収めたのは実に7割以上だ。20点も取れない落第生は、つべこべ言わずに70点超の優等生を見習うべきだろう。

「週刊現代」2012年2月25日号より


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