宮城県、漁港再編で水産業立て直し
「拠点港」選定、企業参入促進に漁業者が反発[復興]

がれきが散乱する漁港で復旧作業を進める漁業者たち=宮城県石巻市桃浦で11年6月26日

 宮城県は東日本大震災で壊滅的な被害が出た水産業の立て直しに向け、漁港を集約再編し、民間企業の参入を積極的に促す方針を早々に打ち出した。「原型復旧ではなく再構築」を掲げる同県の村井嘉浩知事。震災前より発展した水産業を目指して国に財源や規制改革を迫り、政府の方針にも盛り込まれた。一方、被災漁業者との足並みはそろわない状態が続く。

 震災で宮城県内では全142港が被災した。津波で堤防が破壊され、地盤沈下で岸壁が水没するなどし、被害総額は約4200億円に上った。県は全漁港の原型復旧は財政的に困難と判断し、震災翌月の昨年4月に開かれた政府の復興構想会議で「漁港を3分の1から5分の1に集約再編する」と打ち出した。石巻や塩釜といった大規模な拠点港を重点的に整備して経営力を上げ、小規模な漁港は最小限の整備にとどめる考えだ。

 さらに、5月の同会議では「水産業復興特区」を提案。沿岸部では漁業法に基づいて、一定の水域で特定の漁業を営む漁業権が設定されている。権利の付与には優先順位があり、漁協が事実上、漁業権を独占してきた。

 特区構想は、この順位を同等にし、民間企業も参入しやすくするものだ。県は、漁師が民間企業と共同で会社を設立し、企業の資金を使って船や漁具をそろえる▽漁師が企業の従業員となって海で働き、流通では観光業なども取り入れて多角経営を進める---といったイメージを描いている。

深刻な高齢化の危機感

 こうした構想の背景には、県内漁業者の深刻な高齢化への危機感がある。県によると、県内の漁業就業者は03年には1万1449人いたが、08年には9753人と1万人を割った。5年間で約15%の減少となり、年齢構成では60歳以上が約半数を占めた。

 村井知事は言い切る。「全てを元に戻せば、将来的には水産業の衰退につながる。水産業は少ない労働力で利益を上げる構造にしていかないと。経営効率を上げる工夫をすべきだ。私は今が体質改善を図るのに、一番いいタイミングだと思う」

 だが、構想の打ち出し方に問題があった。漁業者の多くが津波で家族や同僚を亡くした中、震災直後から浜や海中のがれきを片付け、懸命に復旧に取り組んでいた。その地元の浜に説明しないまま、復興構想会議で漁港の集約再編、水産業復興特区を提案したのだ。県漁協幹部への説明も事前に行わなかったため、県漁協は怒り、村井知事への不信感がいっそう高まった。

 県の方針を受け、漁港を集約するまちづくりの方針を決めた被災市町では、「拠点港から漏れた漁港は廃港になるのか」と迫る漁業者が相次いだ。特区構想についても村井知事は民間参入を「地元漁業者が望んだ場合の選択肢の一つ」と説明するが、県漁協側の怒りは収まらない。「漁師をサラリーマン化しようとしている」「人の権利を黙って他人にやるということは到底許されない」として、構想撤回を求める約1万3000人に上る署名を知事に提出し、対決姿勢を鮮明にした。

 一方で、村井知事の意志は固く、政府には県の構想を国の方針、予算に反映するよう迫り続けた。結果的に、7月には政府の復興基本方針に水産業復興特区の構想が明記され、8月には被災漁港の中でも生産流通の拠点となる主要漁港の復旧に重点を置く工程表が示された。12月に成立した復興特区法では、水産業復興特区が復興特区で活用できる規制緩和メニューとして盛り込まれた。

 ただ、具体的に実施する段階になり、県の方針は地元漁業者の声を受けて、少しずつ軌道修正を迫られている。

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