サッカー
二宮寿朗「ロマンチスト・反町の挑戦」

 フットボールにロマンを持って取り組むのは何もプレイヤーだけではない。指揮官たちにもそれぞれのロマンがある。
  現在、日本人指揮官のなかで一番の“ロマンチスト”と言えるのは誰か? 
  ぱっと頭に浮かぶのは、海を渡って中国スーパーリーグ・杭州緑城の監督に就任した 前日本代表監督の岡田武史だろうか。

松本山雅に感じたロマン

 日本代表、Jリーグで結果を残した日本人監督が海外のクラブに挑戦する初めてのケースであり、「いつかバルサを倒せるように」と壮大なロマンを持って新しいチャレンジに乗り出した。そしてこの岡田に負けず劣らずの、“ロマンチストぶり”を発揮しているのがJFLから今季J2に昇格したばかりの松本山雅FCの新監督を引き受けた反町康治である。

 反町監督の実績は今さら言うまでもあるまい。
  J2のアルビレックス新潟をJ1に引き上げて人気クラブとして定着させ、北京五輪代表監督として本大会に出場。その後、古巣・湘南ベルマーレの監督に就任してチームを11年ぶりのJ1へ導いた。サッカーへの関心が低かった新潟にサッカー熱を植えつけ、湘南ではJ1で戦えるポテンシャルがあることを証明してファンを呼び戻した。北京五輪ではグループリーグ敗退に終わったものの、本田圭佑(CSKAモスクワ)、長友佑都(インテル)ら今、A代表の中心になっている選手を育てている。彼なりにロマンを感じるところで、就任を引き受けていることが興味深い。

 今回もそうだ。就任会見ではこのように言っている。
「(要請を受諾したのは)今年からJリーグに参入するという、まったくまっさらな状態からスタートするということと、社長やGMの熱意、それとチームを応援していただけるたくさんのサポーターの存在。それは目に見えるものではないが、伝わって来るものは十分にありました」

 昨シーズン限りで湘南の監督を退任した日本で指折りの理論派で知られる指揮官にはJ1クラブからヘッドコーチでのオファーもあったとされる。だが、結局はJFL4位で昇格したJ2“22番目の実力”の山雅を選んだ。クラブ側の熱意、そして1試合平均観客動員数7461人というJFL最多記録を更新した熱烈なサポーターの存在に心を動かされ、山雅でのチャレンジを選んだのである。