運転40年で原則廃炉へ新規制
法律に初めて明文化、20年延長の例外規定も[原発]

記者会見で原子炉等規制法の見直し案を発表する細野豪志原発事故担当相=環境省で1月6日

 政府は今通常国会に、原発を運転開始から40年で原則廃炉とする原子炉等規制法改正案を提出する。同案には「20年を超えない期間、1回に限り延長を可能とする」とする「例外規定」を設けた。適用されれば国内で今後認められる原発の運転期間は最長60年となる。政府は4月1日施行を目指す。

 細野豪志原発事故担当相は1月6日の記者会見で、改正案の骨子を発表した。原発の老朽化対策として「40年運転制限制」の導入のほか、過酷事故(シビアアクシデント)の対策も法規制に盛り込むなど安全確保の強化を図るとした。

 原発の寿命を法律で明文化するのは初めて。これまでは事業者の自主的な保安規定に基づいて運転開始から30年以降、施設の評価を行っている。関西電力美浜原発1号機、日本原子力発電敦賀原発1号機が41年を経過している。

 だが、発表当初から、運転延長の審査基準も未定で規制の実効性に疑問の声が上がっていた。導入の背景には、福島第1原発の事故後高まっている原発への不信感を、老朽化した原発は使わないことをアピールして払拭し、原発再稼働に向けた「地ならし」を進めたい狙いがあるとの見方もあった。

 全国の商業用原発54基のうち、定期検査などで51基が停止中。残る3基も今春に定期検査入りする予定で、政府内には「節電で何とかなる状況を超えてしまう」(経産省幹部)との懸念がある。

 福島第1原発は全6基が運転開始から30年を超えており、老朽化と事故との関係を疑う指摘も根強い。運転開始から40年を超す美浜原発1号機など商業用原発13基を抱える福井県が「高経年化(老朽化)についての安全評価の策定」を再稼働の条件とするなど、老朽化対策を早急に行うよう求める声は各地から出ていた。

 このため「原発の寿命」を40年に設定することは「住民の不安への回答の一つになるのではないか」(資源エネルギー庁幹部)と期待がある。さらに、運転から30年後、10年ごとに運転延長を国に申請して寿命を延ばしてきた現行制度と「事実上、変わらない」(経産省関係者)との指摘もあった。

 そして政府は、細野担当相の発表から11日後に、最長で20年もの延長を容認する原子炉等規制法の改正案を発表した。内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室によると、原子炉等規制法に「40年」の運転期間制限を明記する一方、「環境相の認可を受けて20年を超えない期間、1回に限り延長を可能とする」との規定を追加する。例外的に事業者から申請があった場合、施設の老朽化と施設を保全できる技術的能力を審査して延長を承認できるとした。

 この改正案は「60年運転でも十分な余裕がある」としてきた経済産業省の従来見解に合致し、政府の原発規制姿勢が後退した印象を与えるものと言える。政府は「延長には高いハードルを設ける」と例外を強調するが、具体的な延長基準は示されず、専門家から強い疑問の声が出ている。

延長根拠は米国事例を踏襲

 延長の考え方は米国を踏襲したものという。米国では法律で認められた40年の運転期間の後、交換困難な機器類の劣化対策を確認し、原子力規制委員会の許可が得られれば、最長20年の延長が何度でも認められる。同準備室は「国際的な動向を参考にした」と説明する。事業者から運転延長の申請があった場合は、

(1)施設自体の老朽化の評価
(2)施設を保全できる技術的能力――を審査し、問題ない限り延長を承認する。

 内閣官房の担当者は、20年という延長期間の根拠として米国の例を挙げ、「世界的に認められている。(延長できる)可能性として短過ぎるのも妥当ではない」と説明。具体的な延長期間や基準は、新たな規制機関となる原子力安全庁で、専門家の意見を聞いて政令などで決めるという。

 原発を抱える地元からは疑問や反発の声が相次いだ。国内最多の14基の原発が立地する福井県の幹部は「細野担当相が『運転は原則40年』としたことと整合性が取れるのか」とし、「運転開始から30年が経過した原発は10年ごとに安全性を確認してきた。一気に20年延長を認めるのは唐突な印象だ」と疑問を呈した。

 細野担当相は、40年を原則とした理由について「原発の老朽化についてさまざまな専門家の議論もあり、一つの線を引いた。(例外的な延長は)相当厳しいというのが大前提」と説明。「40年以上の運転は極めてハードルが高くなったと考えている」と強調している。

 改正法ではこのほか、東京電力福島第1原発事故のような「想定外」への対応として、炉ごとにリスク評価の公表を義務づけた。さらに、これまでの事業者の自主的取り組みだった過酷事故対策(シビアアクシデントマネジメント)を法規制の対象とする。

 運転制限や、既存の原発にも炉心が溶けるような過酷事故への対応を自主規制から法規制に変えることは、これまであいまいにされてきた安全対策で、法改正できちんと位置づけるのは当然だ。

 しかし、法律が抜け道だらけになることが懸念される。安全対策の実効性を担保するための議論は生煮えの印象がある。運転延長の具体的な条件は何か。これまでの制度との違いをはっきりさせなければ、なし崩しに例外ばかりになってしまう恐れがある。

 原発の老朽化問題に詳しい市民団体「原子力資料情報室」の上澤千尋氏は「米国でも延長基準は緩く、実際に(運転延長が)例外になるかどうか疑問だ。原子炉の劣化を診断する方法が技術的に確立していないことを真摯に受け止めるべきだ」と厳しく批判しており、原発の40年運転制限制が形骸化する恐れは依然ぬぐいきれない。

 原発の寿命はこれまで安全性だけでなく経済性も加味して決められてきた面がある。今後は、安全性に特化し、年限にこだわらず、老朽化の影響を精査していく体制が必要だ。政府は「放射線による有害な影響から人と環境を守る」という基本理念も法律に明記する。これをお題目に終わらせてはならない。

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