「どのくらい幸せか?」政府が指標試案
「経済」「健康」「家族・社会との関係性」を柱に[幸福度]

 内閣府は国内総生産(GDP)など経済指標だけでは測れない国民の幸福感を調べるための「幸福度指標」の試案をまとめた。経済の行き詰まりや大災害による将来への不安が募る状況の中で、国民に希望を与え幸福を感じられる政策の優先順位や見直しなどに役立つ物差し作りを目指す。

 幸福度指標の作成は、2010年6月に菅直人政権(当時)が閣議決定した「新成長戦略」に盛り込まれ、同年12月に「幸福度に関する研究会」(座長・山内直人大阪大大学院教授)が発足した。これまでのような経済規模の拡大が望めない時代において、日本人の幸福につながる「成長」の在り方を探り、限られた財源の中で「幸せ」に焦点を絞った政策作りのための新たな指標が求められた。

 試案では、個々人が感じる「主観的幸福感」を測るために、「経済社会状況」「心身の健康」に加え、家族や地域、自然などとの「関係性」の3本柱を大枠として設定。また、財政から地球環境にいたるまで現代将来の幸福のために将来世代を犠牲にしてはいけないとの観点から重視される「持続可能性」は、3本柱とは別立てで検討することにした。

 「経済社会状況」は、「基本的ニーズ」と「住環境」「子育て・教育」「仕事」「制度」の5項目、「健康」は「身体的」と「精神的」「心身共通」の3項目、「関係性」は「ライフスタイル」「個人・家族」「地域・社会」「自然」との4項目に分ける。また、幸福感は、年齢によって差異があるため、各項目を子供、成人、高齢者とライフステージ別に調べる。指標案の総数は132に上る。

「経済社会状況」では、個人や世帯の貧困状況や子供の貧困率など生活基盤にかかわることのほか、食の安全への不安、原発災害で募っている「放射線量への不安」も調査対象に含めること検討する。さらに「学校から帰宅後子供だけで過ごす時間がある子供数」や高齢者の「孤独死する不安を感じる比率」「子育て満足度」「産婦人科医の地域格差」など幅広い分野に目配りする。

「健康」では、最も幸福度が低いととらえられる自殺者数に加え、ストレス、自殺リスクの高い「希死念慮」、「看病や介護を抱える家族の疲労度」、そのような家族への「外部のサポート体制への満足度」も加える。

 「関係性」では、家族とのつながりで「困った時に助けてくれる、本心から相談できる者がいる」「孤独を感じる子供・若者の割合」などを重視。地域での「自己有用感」「困っている人を助けるのは当然と思う者」など従来の調査にはなかった指標を入れる。

12年度に1万人調査

 内閣府は、試案に上げられている指標は「全国レベル、全世代で、パネルデータの形でデータを収集し検証することが不可欠」としている。当面は12年度までに全国約1万人を対象にパネル調査を実施する。郵送方式で、年代、性別、都道府県別の地域性に考慮する。

 同府経済社会総合研究所はさらに今後、数年間にわたり特定の人を対象に入学や就職などのライフイベントごとの幸福度に関するデータを試験的に収集し、試案の政策的な有効性を検証していく方針だ。

 今回の幸福度指標案が作成された背景には、先進諸国の中で日本は幸福度が低いとされている事情がある。自殺者が毎年3万人を超え、若い世代の死因のトップが自殺だ。しかも諸外国の調査研究では、幸福度は若い時の野心が失われる熟年期は下がるが高齢になるにつれて高まるUカーブを描くとされるのに対して、日本は高齢者の幸福度が低いという特徴があるという。

 幸福度に関しては、ブータンが先進国の経済指標と別に独自の指標である「国民総幸福量」(GNH)が有名だ。経済協力開発機構(OECD)は07年、「社会進歩計測に関するグローバル・プロジェクト」を開始し、経済、社会、環境問題を勘案した社会的進歩に関する包括的な指標の開発を目指している。フランスも指標としてのGDPの限界を認め代替指標の開発に乗り出すなど、世界的に「豊かさ」「幸せ」に指標の見直しが進んできている。

 日本では高度成長に伴った公害や都市への人口集中などが問題化した70年代半ば、「豊かさ」の指標化の取り組みが始まった。最初は「社会指標」(74~84年)で、非貨幣的な指標が中心だった。次いで「国民生活指標」(86~90年)では価値観と生活様式の多様化を探った。「新国民生活指標」(92~99年)は「豊かさ指標」として地域間比較をし、地方に比べ大都市地域が低く評価され話題を呼んだ。最近の「暮らしの改革指標」(02~05年)は構造改革による変化を見た。

 内閣府は、幸福度指標案では日本社会の良い点、悪い点を明らかにし政策作りに役立てることが目的で、安易な幸福度ランキングなどにつながらないように、一つの数値で表す統合化指標は策定しない方針だ。

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