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大反響!憤怒レポート第7弾
地方公務員の「休暇制度」に怒れ!&休職制度
「役人天国」は「お休み天国」

橋下市長を迎えて、大量の早期退職希望者が出たことで話題になった大阪市。職員たちの足取りは重い?〔PHOTO〕本多治季(以下同)
大阪府の休暇制度の改革を済ませ、今度は大阪市の改革案をぶち上げた橋下徹市長。その案は正論と言える

「夏季休暇」だけでは足りないとばかりに「夏季における休暇」「お盆休暇」まで取得する。さらに「お祭り休暇」まである自治体も。有給休暇の取得日数も民間に比べ年に4日も多い。「美味しすぎる実態」を暴く!

「公務員の厚遇は、高い給料や退職金だけではありません。その休暇制度を見れば、サラリーマンの方などは驚くはずです。例えば、運転免許証の更新手続きにかかる時間が、休暇扱いになる。そんな制度が信じられますか?」

 こう指摘するのは、公務員問題を追及するジャーナリスト・若林亜紀氏である。公務員と民間の格差を追及する本特集「公務員天国」シリーズでは、これまで6週にわたって、給料や手当、退職金、年金など、主におカネの面での公務員優遇を暴いてきた。第7弾の今回は、「休暇制度」にスポットを当てる。むろん、休暇が労働者の権利であることは言うまでもない。しかし、公務員、特に地方公務員には、民間に比べて格段に長い休暇を取れる制度が現存しているのだ。

 まず、公務員(国家・地方)の休暇制度を見てみよう。公務員法などによれば、完全週休2日制で、土・日・祝日と年末年始が休みなのは民間と同じだ。そして、いわゆる「有給休暇」と、忌引休暇など様々な名目が付された「特別休暇」がある。これも民間とほぼ同じなのだが、その内容に大きな差が見られるのだ。

 有給休暇はこうだ。公務員は初年度から年20日間取得できる。対して民間(労働基準法)は、勤務年数が6年半を超えて、ようやく公務員と同じ年20日間の有給休暇が発生する。民間は、勤務日数によって段階的に有給休暇の日数が増える方式(半年勤務・10日間、1年半・11日間など)で、公務員のように初年度から20日間貰えるわけではないのだ。

奈良市の仲川げん市長。同市は職員らの休職制度のありかたについて新たに調査を始めることを1月に発表

 官民格差は制度だけではない。その運用実績、いわゆる消化率でも顕著だ。

 総務省が '10年に公表した資料『平成21年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果』によると、民間が年間平均で8.5日しか利用していないのに対して、国家公務員の平均は12・8日。公務員のほうが4日多く有給を取っている計算なのだ。

「それだけではありません。公務員の場合は、20日間を限度として翌年に繰り越せるのです。つまり、次の年にまとめて取ろうと思えば最大で40日間休める。そもそも労働基準法に繰り越しの規定はありません。大企業では労使協定で繰り越しを認めている会社もありますが、繰り越せるのは10日程度というところが大半です」(前出・若林氏)

茨城県牛久市の「大英断」

牛久市長室で、特別休暇を廃止するに至った経緯や、その効果について舌鋒鋭く語り尽くした池辺市長

 注目すべきは「特別休暇」だ。次ページの表をご覧いただこう。総務省の資料をもとに作成したものだが、そのバラエティの豊かさには感嘆する。どれも有給休暇扱いなのだ。前出・若林氏が説明する。

「公務員の特別休暇には、民間にはほとんどないような休暇が多数存在します。様々な理由をつけて、規定の有給休暇20日間に10日間ほど積み増しされます。国家公務員には勤務時間法という法律があって、『(特別休暇は)選挙権の行使、結婚、出産、交通機関の事故その他特別の事由により職員が勤務しないことが相当である場合に付与』となっています。これを人事院が、『職員が夏季における盆等の諸行事、心身の健康の維持及び増進又は家庭生活の充実のため勤務しないことが相当であると認められる場合』と拡大解釈して、公務員に優しい規則を定めた。地方公務員の場合は首長の裁量で(新たな特別休暇を)作ったり変更できるので、さらに甘くなっているのです」

 確かに、総務省もわざわざ「国に制度のない特別休暇」と明記して、地方自治体に多く設定されている特別休暇が7種ある(表参照)。例えば、「夏季における休暇」。これは、国の制度にもある「夏季休暇」とどう違うのか。総務省に聞いた。

「国の制度上の夏季休暇は3日ですが、それより長いものが該当します。盆休暇も同じで、お盆の時期に特別に用意されているものです」(公務員課)

 国が定める夏季休暇は3日だが、5~7日間など、国より長くしている自治体が112(1県、2政令都市、109市区町村)あるのだ。表では、「お盆休暇」を設定している自治体も36(1県、35市区町村)あるが、具体名について総務省は「公表できない」と言う。また、「お祭り休暇」というのも千葉市などにある。千葉市の規則には「神道の年祭、仏教の法事など、必要日数休める。遠隔地なら往復の日数も加算」とある。

「国の制度にもある特別休暇」では、「ボランティア休暇」なるものもある。大阪府では年5日認められていたが、橋下徹知事の時代に廃止した。

「本来ボランティア活動は、必要であれば担当部局の職員を派遣するなど、行政で行うべきで、自発的に行いたいのであれば、年次休暇(有給)などを利用して行うべきだという知事の考えが基本になっています」(府人事室企画厚生課)

 まさに正論である。ちなみに、大阪府では「リフレッシュ休暇」も廃止した。当時は、勤続10年、20年、30年を迎えた職員は、2年以内に5日間休暇を取れるという制度だった。これについても、有給休暇を取れば済む話である。

「運転免許更新休暇」があるのは埼玉県、福島県伊達郡国見町、新地町などである。埼玉県の職員組合ではこう説明する。

「免許更新に必要な時間を休暇にすることができます。ただし、対象は全員ではなく、一般行政職で公用車を運転する業務を担当する人限定です」

 こうした休みの大盤振る舞いはおかしいと、しごくまっとうな発想で、'09年に夏季休暇を国が設定している3日間も含めて全廃した市長がいる。'03年から茨城県牛久市の市長を務める池辺勝幸氏(62)だ。なぜ廃止したのかを聞いた。

牛久市役所前にあった標語。「みんなの税金」は公園を造るおカネだけではない。公務員が一番分かっているはず

「ウチでは、職員の有給休暇の取得状況を毎年調査していますが、結果を見て愕然としました。休んでいる職員と、休んでいない職員との格差がひどかった。明らかに仕事をしていない職員が、特別休暇もめいっぱい取って、忙しく働いている職員は有給休暇を取れていなかった」

 年功序列の公務員は、働こうが働くまいが給料に差が出ない。真面目な公務員も次第にやる気を失っていく。池辺氏が'07年の市長選でこうした主張を展開すると、公務員の組合組織である自治労が圧力をかけてきたという。決起大会をわざわざ牛久市で開き、千人規模のデモを行った。池辺氏は、「やってやると余計に燃えた」と、当時を振り返って笑う。

「牛久市の職員なら、市の住人のために一生懸命働いて、市民の福祉を向上させていくのが仕事でしょう。それをしないで、自分の権利、福祉向上ばかりやってきた。役所の職員としてあるまじき行為です。役所というのは、その地域と住んでいる人たちが良くなるためにある。ところが、時間が経つうちに、そこに働く人のための組織になってしまった。市の職員は、給与水準も休暇も、その他の労働条件も、牛久市内でダントツ。市役所の職員のほうが、楽に仕事をして生活水準が高い。こんなことはおかしい。こういう体質こそ直したかったのです」

 改革を断行した結果、どう変わったか。

「休暇の枠を小さくすることで、これまで働かないで休みばかり取っていた人も、以前より働くことになる。すると仕事が進みますから、これまで忙しかった人の負担が減り、有給休暇を取りやすくなる。特別休暇としての夏季休暇は廃止したので、みんな年次有給休暇を利用して夏季休暇を取る。その結果、有給休暇の使用日数での格差が減りましたよ」

 特別休暇を廃止することで、正常な状態が戻ってきたのだ。

 公務員の休暇でもう一つ問題視されているのが「病気休職制度」だ。大阪市長になった橋下氏が、大阪府知事時代に断行した改革をもとに、市でも全面的な見直しを打ち出して注目を集めている。

「大阪市では職員約500人がこの制度を利用している。条例では、病気休職は最長で3年間認められる。休職中の給与は最初の1年は8割支給。残り2年は無給だが、職員共済組合からの補塡で、ほぼ同額が支給される。復職後2年以内に再度休職すれば、それまでの休職期間と合算されるが、病名が違う場合はまた3年間認められる。制度上の計算では、病名さえ変えれば、最長で9年間実質〝有給〟で休職できることになる。この点を橋下市長は『この制度を悪用するのは税の詐取だ。悪用されかねない制度は見直す』と明言しています」(全国紙社会部記者)

 奈良市でも、「市職員病休問題検討委員会」を発足させ、1月16日に初会合を開いた。同市の調査では環境清美部(現環境部)の職員315人のうち、'10年度に36・2%の114人が病気休暇を取った。市全体の職員の病気休暇取得率14・3%と比べると、突出して高い。市総務部人事担当が説明する。

「現業職場(現場担当)ですから、単純に事務職と比較できない部分はあるにしても、約2.5倍は非常に高率。職場自体にいろんな問題があると思われます。ある職員は16回病気をして44日休んでいる。1回平均病休が2.5日。短い期間を、短期間で繰り返して取得している。長期間の場合は診断書が必要なのですが、こうしたケースは発覚しづらい。今回、いろんな抜け道が可能だということが分かりました。職場環境、風土、意識を含めて、改善していこうというのが、今回の検討委員会の趣旨なのです」

 楠茂樹・上智大准教授を委員長とした外部委員が調査を行うという。

 公務員のありかたについて、前出の牛久市長、池辺氏がこう提言する。

「今の公務員は『権利』って言葉を使いすぎなんです。市民、県民の皆さんの生活をサポートするのが本来の業務。それを忘れている。お上意識ばかり強い。市民らはお上に年貢を納める水呑百姓ではないんです。市の職員は考えを改めなければいけません」

 公務員の権利意識を助長するだけの休暇制度は、早急に改革すべきである。

「フライデー」2012年2月17日号より
 

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