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緊急特集 完全保存版 東京「震災避難マップ」で我が身を守る 巨大地震からどうやって逃げる、どこへ逃げる
第1回 渋谷・世田谷・目黒・品川・大田区編

「火災危険地帯」「津波浸水」から被害地を詳細予想し、 スペシャリストが生き残る術を指南する

 自宅で、会社で、取引先で、あるいは移動中の地下鉄内で、〝その時〟はいつ来るか分からない。東京直下型地震が起きた時、あなたはどこに逃げればいいのか---。そんな疑問に答えるべく、編集部が作成したのが上の東京震災避難Mapだ。千代田区、中央区、港区のオフィス街を基点に、23区を城南地区、城北地区、下町地区の3つに分け、震災危険度を3週にわたって紹介する。

 今回は城南地区(渋谷区、世田谷区、目黒区、品川区、大田区)を見ていく。東京都都市整備局は地震による都内各地の地域危険度を調査しており、この調査データをもとにMapを作成した。同データは、火災危険度と建物倒壊危険度を5段階でランク付けし、さらに総合危険度を算出している。それぞれの危険度が高い地域はほぼ重なっているため、地図上には火災危険度がランク3以上の地域を示した。Mapを見ると、渋谷区では甲州街道沿いの幡ヶ谷周辺、品川区では戸越公園周辺に火災の危険地域が集中している。

 だが、東京都のこの調査データだけでは不十分だと指摘するのは、防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏だ。

「東京湾には津波が来ないという安全神話がまかり通っていたため、東京湾の津波がまったく扱われていません。ところが、東日本大震災では木更津に2・85mの津波が到達し、多摩川、荒川、隅田川で津波の遡上が観測されています。臨海部の避難所はすべて見直すべきです」

 そこで編集部では、国土交通省のデータをもとに、津波の浸水被害の予想Mapも作成し、併せて掲載した。

(左)品川区二葉3丁目、4丁目
区は土地を買い上げ、防災広場の整備を進めているが、立ち退きを拒む住民も多く、整備は完了していない
(中)目黒区目黒本町5丁目
区の都市整備部が主導して建て替えを促している。また街頭消火器を置く間隔を狭める対策も行っている
(右)渋谷区本町2丁目
火災危険度ランク5とされる地域(写真左2点も同ランク)。木造住宅が多く、耐震化が進んでいない

 また避難Mapには、東京都が指定している大規模公園や大学などの広域避難所をマッピングしている。さらに各区の一次避難所など、より細かい避難場所については次ページの表にまとめた。

 地震が発生し、身の回りで火災や倒壊などが発生した時は、まず一次避難所(区内の小中学校など)に避難するのが原則だ。そして、そこも危険な場合には広域避難所へ移動する。大火災が発生した時、より助かる確率が高いのは、広大な公園などの広域避難所だからだ。

 しかし、この地図を見て、広域避難所までもが火災や津波の危険地域と重なっているところがあることに注目してほしい。戸越公園は火災危険地帯の真ん中に位置しているし、東京国際空港の一角や森ヶ崎公園、天王洲アイル周辺などは津波被害の危険に晒されていることが分かる。自分のオフィスや自宅近辺で、どこが〝より安全な広域避難所〟なのか地図でしっかり確認してほしい。

地図で考える「城南地区への帰宅」

 では、城南地区で東京直下型地震に遭遇した場合、どのように逃げるべきなのか。大田区・大岡山の自宅から千代田区にある会社に通っている会社員のAさんがオフィスで被災した場合を想定して、シミュレーションしていこう。

 実はAさんのオフィスのある千代田区は東京23区で唯一、区全域が「地区内残留地区」に指定されている。同地区は、建物の不燃化対策が進んでおり、火が燃え広がることは少ないとされている地域のことだ。他に中央区の日本橋周辺や渋谷区の渋谷駅周辺、品川区の港南、東品川地区、勝島地区などが同地区に指定されている。Aさんのオフィス周辺でも幸いなことに火災は発生しなかった。ところが、Aさんのオフィスビルには問題があった。建築耐震基準が変更される'81年以前に建てられたものだったのだ。

「17年前の阪神・淡路大震災では'81年以前に建てられたビルの多くが倒壊しました。古い建物の場合、たとえ最初の揺れで倒れなくても、余震であっけなく潰れる恐れが十分にあります。その時、自分がいる建物が'81年以降に建てられたものか否かが運命の境目になります。自分が住んでいるマンションや働いているビルがいつ建てられたものかチェックしておくことが大事です。揺れが収まった時にもし無事だったら、古い建物からはすぐに出ることが大切です。外に出れば、落下してきた看板やガラスに当たる危険もありますが、そこは究極の選択をしなくてはならないのです」(前出・渡辺氏)

 耐震基準に問題があることを知っていたAさんは、すぐにビルの外に出た。次の選択肢は、前述した一次避難所や広域避難所への避難である。オフィス周辺のそれらの場所は熟知しておこう。また、土地勘のない外出先での被災に備え、掲載したMapのコピーを常時携行するのもお勧めしておきたい。

 しかしAさんは、家に残してきた家族が気になった。携帯電話やメールは通じない。家族は無事だろうか。そう思ったAさんは大岡山の自宅まで徒歩で帰宅することを決心した。大渋滞を横目にAさんは自宅を目指した。会社から自宅までは、桜田通りを直進し、環状七号線にぶつかって、右折するのが最短ルートだ。だが、このルートには大きな危険がある。途中、23区内で最も火災危険度の高い戸越一帯を突っ切らねばならないのだ。

「戸越周辺は古い木造住宅や工場が密集し、建物倒壊の危険が高く、いったん火事が起きたら付近一帯が火の海になりかねない。広域避難所である戸越公園も、そこが火の海になる可能性があるのですから、別の場所を選定し直さないと、関東大震災の時のように避難した住民が火災に巻き込まれて死んでしまいます」(前出・渡辺氏)

 迂回ルートとして、第一京浜(国道15号線)から環七に出る手もあるが、これも危険度は高い。東京湾沿岸に大津波が押し寄せ、山手線の内側まで浸水する可能性があるからだ。埋め立て地区では液状化による地盤沈下も懸念される。

 残るは、目黒通りから環七へと抜けるルートか、恵比寿ガーデンプレイス横を抜け、駒沢通りへ出るルートだ。

「道路はとにかく広い道路を選び、高架下は避けできるだけビルから離れたところを歩いてほしい。渋谷のセンター街や新宿歌舞伎町のようなクーラーの室外機や看板が無造作にぶら下がっている繁華街も危険です」(前出・渡辺氏)

 Aさんは恵比寿から駒沢通りへ抜けるルートを選択した。途中のコンビニでは食料・飲料の棚から商品が消えていた。

「区民の避難場所とは別に、帰宅困難者は、国立代々木競技場や青山学院大学、恵比寿ガーデンプレイスやホテルサンルートプラザ新宿などで宿泊することができます」(渋谷区防災課)

 渋谷区に限らず、各区がこうした宿泊場所などを用意しているので、事前に調べておくべきだろう。

 Aさんは恵比寿ガーデンプレイスで一泊し、翌日、大岡山の自宅にたどり着き、無事、妻子と再会することができた。時間こそかかったが、迂回ルートを取ったことが功を奏したのである。

 2つのMapと各区の避難所の表を参考に、複数の帰宅ルート、避難ルートを設定し、〝その時〟に備えてほしい。

「フライデー」2012年2月17日号より

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