一次資料も読めず、日銀の言いなりになってバーナンキ発言をミスリードする日本のマスコミは、役所に飼い慣らされた「ポチ」

 政府の東日本大震災関連15会議のうち原子力災害対策本部(本部長・首相)など10の会議で議事録を作成していなかったことが、1月、明らかになった。

私は、この議事録問題の不始末に驚きあきれたので、国会の事故調査委員会に通報、情報提供した。政府でも調査員会があるが、会議は非公開で、事務局は役人ばかりだ。その点、国会の事故調は、会議は公開、事務局は民間の人ばかりなので、信頼できる。ここまで役人が地に落ちたのだ。私の知っている限りの官邸内の会議室などの状況を説明した。

 その際、重要なのは、一次資料のメモとボイスレコーディングだ。私も大臣補佐官の経験があるが、いつもポケットにはメモ帳を持っていた。役人がメモをとるのはイロハのイだ。重要な会議に出席できるのは限られた人だから、役所に帰れば必ず会議内容のメモを求められる。各省大臣が出席する会議には秘書官は必ず同行しているので、彼らのメモは必ずチェックすべきだ。

 長谷川幸洋さんが『現代ビジネス』に2月3日の記事で書いていた、官邸での経済財政諮問会議の話をしよう。私自身の経験をいえば、正式に経済財政諮問会議特命室メンバー(これは竹中平蔵経済相が作った組織で、諮問会議ペーパーのドラフトを書き、民間議員に説明する部署で、私の他、内閣府の数名がスタッフになっていた)になったのは2003年7月からだ。その後、2005年12月に竹中総務相補佐官、2006年9月から安倍総理補佐官補で、安倍総理退陣の2007年9月まで経済財政諮問会議の情報入手は容易だった。

もちろん会議に出席することもできたが、出るといろいろな人からメモを見せてくれと言われるのが面倒だったので出なかった。もちろん会議後に竹中さんらからすぐ連絡があり会議の中身はすぐわかったので執務の支障はなかった。ある省庁の幹部が、どうしても出席し省庁向けメモをとりたいと懇願するので無理矢理に座席を作ったこともある。

 実はメモだけでなく、会議関係者ならボイスレコーディングも聞くことができる。一般的に会議は音声記録する。あとで業者に依頼して議事録を作るためだ。会議室のカギを開けて設営をする人(幹部クラスでない人)が音声記録をセットする。

 竹中さんがベスト諮問会議の一つといっていたのが、2005年10月27日の政策金融改革である。ドラフトは私が用意したが、その内容に谷垣財務相と中川昭一経産相が省益丸出しで怒ったために、内閣府幹部も会議中凍り付いた。それに会議の最後、小泉総理が爆発したのである。

議事録では「財務省と経産省の大臣も、余り役所に引きずられないようにお願いします。」となっている。しかし、音声記録を聞いた人は、小泉総理が机をバンバン叩いて怒ったのが手を取るようにわかる。これで小泉総理の本気が伝わったものだ。

役所からの毒まんじゅう

 いずれにしても、議事録のない会議では、こうした一次メモや音声記録をそのまま開示すべきだ。ところが、2月2日の衆院予算院会で、柿沢未途衆院議員(みんなの党)の質問に対して、野田総理は「客観的な検証を経ていない1次資料(のメモの開示)が適切とは限らない」と答弁している。客観的な検証といいながら一次メモを書き直すのは不適切だ。

 マスコミの人は一次メモの重要性を認識している。しかし役所サイドがマスコミにメモを見せるのは、記者を飼い慣らして「ポチ化」させるためだ。メモを内々に見せられた人は、役所からの毒まんじゅうを食らっているといえる。

 先日、現代ビジネスに牧野洋さんが『日本なら新聞協会賞間違いなしの巨大合併スクープを連発する記者は悪いジャーナリズムの見本』というコラムで書いていたのと似た話だ。すぐ後に発表する会議概要のようなものを先にマスコミにリークするのは、特定省庁に有利になるように「地ならし」するためだ。

 どうしてマスコミはポチになるのか。かつて役人として「ポチ養成係」をやっていた経験から言えば、マスコミは公開されている原典資料を読まない(読めないというほうが正確)。実は分析は公開情報から9割以上できる。経済財政諮問会議の時には、公表されている資料を読めばわかるのに読んでいないで、話ばかりを聞きに来るので閉口した。

 そんなマスコミの報道ばかり見ていたのでは真実はわからない。2日の日経新聞は「FRB議長、財政赤字に警鐘」とし、財政再建ばかりを話したように報じた。NHKも同様な報道で、財政再建を強調していた。しかし、これは明らかにミスリードする報道だ。

バーナンキFRB議長の議会証言は、ネットで簡単に動画などを確認することができる。たとえば、FRBサイトではテキストが掲載されているので見てほしい。実際の証言では、財政再建をいいつつ、同時に性急な財政赤字カットを戒めている。中期的な財政再建と今の状況での景気回復をはかるために財政再建を急ぎすぎないという二つの目標は矛盾しないとも言っている。米紙は、今の話により関心があるので、過度な財政赤字カットに警鐘というヘッドラインもあった。

 どうして日本ではこんな報道になるのかと言えば、いつもご当局の「レク」(ご説明)ばかり聞いているからだ。

 まず、1月25日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、FRBが2%のインフレ目標を導入したときから見ていこう。インフレ目標を導入したくない日銀にとって、これは不都合な事実だ。そこで、日銀は国会議員などに「これは、インフレ・ターゲッティングでない」と説明している。前原誠司政調会長はそのまま鵜呑みして話している。2日の衆院予算委員会で山本幸三衆院議員(自民党)はそれを誤訳だと切って捨てた。

実際、インフレ・ターゲティングの世界的権威であるバーナンキFRB議長は、インフレだけを目標とするのをインフレ・ターゲティングというなら、アメリカは物価の安定と雇用の最大化の二つを達成する責務があるので、その意味でインフレ・ターゲティングとはないといっているにすぎない。これはアメリカの特殊事情であり、物価だけをみれば立派なインフレ・ターゲットだ。日銀は、都合よくバーナンキFRB議長の話の一部だけを取り出して、曲解させている。

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