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週現スペシャル
億の収入がある人間たちの「本当の姿」
大金を稼ぐ仕事は幸せか

週刊現代 プロフィール
〔PHOTO〕gettyimages

 ●稼いでも稼いでも尊敬されないファンドマネジャーの嘆き ●「時給10万円」エリート弁護士たちの自己弁護 ●「米国民の敵」元・ヤンキース井川慶の悲劇 ●稼ぎすぎた金、さあどうやって隠そうか ●共通の悩みは「子供がドラ息子になること」

 カネだけで人は尊敬しない。そのカネで何をするかが大切なのだ。もうひとつ、そのカネをどうやって得たかも。カネさえあれば、幸せになれるわけでもない。だが、そう思っている人は少なくない。

周囲に白眼視されながら

 大金を稼ぐ仕事の恐ろしさを、かつてまざまざと見せつけた人物がいる。

 元プロ野球選手、川崎憲次郎(41歳)。大分・津久見高校からドラフト1位でヤクルトに入団、巨人キラーと呼ばれ'98年には沢村賞も獲得した。

 '00年オフ、中日へのFA移籍を決める。3年間は年俸2億円、4年目は出来高の大型4年契約だった。

 ところが'01年からの3年間、川崎はついに一球も一軍のマウンドで投げることができなかった。

「客観的に見れば、FAはハイリスクハイリターンの投資です。契約とはそういうものだから、球団から何か言われることはありませんでした。

 ただ、心の中は『申し訳ない』という気持ちでいっぱいでした。人間ですから『評価(年俸)に見合う仕事をしなければ』と当然思います。『もうもらったからいいや』とはならない。

 実際は右肩が痛すぎて、投げたくても投げられなかったわけですが、ファンからも厳しい声をかけられ、やっぱり外を大きな顔をしては歩けなかった。できるだけ外に出ないように、派手なことをしないようにしていましたね」

 ファンからの厳しい声、それは「給料泥棒!」という野次だった。

 川崎は4年目、落合新監督の奇策で開幕投手を務めるが、その試合も次の試合も打ち込まれる。結局、引退試合を含めて、川崎の登板は中日の4年間で3試合だけ。投じた球はわずか65球で、「一球1000万円の男」と揶揄された。

 その川崎が、みずからの境遇とも重ね合わせて案じるのが、NYヤンキースをお払い箱になった井川慶(32歳・元阪神)のことだ。

「自信があって向こうに行ったんだろうから、悔しいでしょう。野球選手はグラウンドに立てばカネのことなど考えず、その試合、その年どうやって勝つかに集中しますが、彼は一軍のマウンドにもほとんど立てていないわけですから。

 年俸が高い人ほどプレッシャーが大きくなるのは当然のことです。たとえば1億円の人が3億円の活躍をしたら『安かった』となるし、5億円の人が同じ活躍だったら『もらいすぎだ』という評価になる。金額が大きければ大きいほど、周囲は『やって当たり前』と思うわけですから」

 井川の場合、移籍金2600万ドルと5年契約の年俸総額2000万ドルをヤンキースは支払っている。30億円超のギャラで5年間の通算成績2勝4敗では、「米国民の敵」と呼ばれても仕方がない。

 メジャー球団のある日本担当スカウトが言う。

「'08年オフに日本を含め他球団に移籍するチャンスがあったが、井川が断ったときいています。もしそれが、残り3年1200万ドルのためだとしたら残念です。普通に考えれば、一生カネには困らない。でもそのことで、井川は『日本で一から出直す』という発想を持てないのかもしれません」

 昨年、ヤンキースにコーチ留学していた現巨人コーチの大道典嘉氏の見方はちょっと違う。

「キャンプで会った時は腐っているとか落ち込んでいる様子はまったくありませんでした。なんとかメジャーに上がろうと必死に汗を流していました。マスコミの厳しい批判もありましたが、いい意味で鈍感なところがあるから気にしていない。『おカネはどうでもいい。とにかく投げるチャンスがほしいんです』と常々話していました」

 鈍感でいられるのは、生活の心配がないからとも言える。一生暮らしていけるカネを得て、周囲に白眼視されながら「かなわぬ夢」を追い続けるとしたら---それは冒険譚ではなく、もはや悲劇だ。

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