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激白!吉田昌郎 福島第一原発前所長「私のがんはステージⅢ」「福島の人たちへのサポートを死ぬまでしていきたい」
来月の手術を前に決意を語った

本誌記者の取材に笑顔で答える、吉田氏。雪が舞う中、セーターに黒のダウンジャケットという装いだった

「私のがんは、ステージⅢだと医者からは言われています。今となっては、淡々と入院して、手術をするだけですよ」

 衝撃の緊急入院から、はや2ヵ月。本誌記者にそう語ったのは、東京電力福島第一原発の前所長、吉田昌郎氏(56)である。入院していたとは思えないほど顔色は良く、ふっくらとした様子。自らの病状をストレートなもの言いで話す〝吉田節〟も健在である。優しい目元の、以前と変わらない吉田氏がそこにいた。

 吉田氏は、昨年3月の東日本大震災に伴う福島第一原発事故の際、所長として菅直人首相(当時)や東電本店の指示に逆らい、原子炉への海水注入を開始し、原発のさらなる崩壊を食い止めた。事故後も8ヵ月にわたって、第一原発の免震棟に籠もり、事故の収束のために奔走し続けたが、衝撃が走ったのは、昨年の11月28日のことだった。東電が吉田氏の緊急入院を発表したのだ。当初は「体調不良」とのみ発表されたため、病名や容体に関して様々な憶測が流れた。12月1日付で所長を退任し、後に病気は食道がんであることが分かったが、その後、公の場に姿を現すことはなかった。

 1月22日、本誌はその吉田氏に都内近郊で直接、話を聞いたのである。突然の取材にもかかわらず、丁寧に応じてくれ、話は入院時の出来事から始まった。

---お元気そうで安心しました。昨年11月24日に入院してからは何をされていたのですか?

「抗がん剤の点滴を2回やったんです。一度退院して、状況を見て年末から年始にかけて、また入院しました。もう一回抗がん剤を点滴して、その結果を見てまた検査して、という繰り返しでしたね」

---ネットなどでは、吐血されたと言われていましたが。

「まったくない! ほんとにあれは全部デマ(笑)。まったく自覚症状はなくて、検査を受けて見つかったんです。今も自覚症状がないんですよ。血を吐いたこともないし、倒れたこともありません。一部のインターネットに書いてあることは全部ウソ。勝手な思い込みですよ」

---現在、体調はいかがですか。

「診察結果は食道がんということです。ステージは、Ⅱに近いⅢなのか、Ⅳに近いⅢなのか、非常に微妙なところで、厳し目に言うとⅣに近いと言われていたんだけど、他への転移は今のところ見られないと言ってもらっている。手術で(胸を)開いてみたら、どうなるのかは分からないですけど。食道がんということで息の通る所も近いじゃないですか。私は肺の機能があまり良くないので、そこを鍛えなさいと言われています。肺活量を鍛えたり、術後、体力が落ちる可能性があるので、しっかり食べて、運動ができるように体力保持に努めています」

---今後の治療の予定は?

「検査の結果をもって主治医と相談して、段取りが決まります。なので、2月上旬ぐらいに入院して手術することになると思いますが、(検査の)結果次第ですよ。いずれにしても今は元気ですから」

吉田氏のがんと「被曝」

 がんという決して軽くはない病を眼前に突きつけられても、吉田氏はジェスチャーを交えながら、時折笑顔も見せた。退任後、大きく話題になったのは、吉田氏の病気と被曝との関連性だった。昨年12月上旬、東電は病気をがんと明かしたが、被曝との因果関係を否定した。吉田氏の事故後からの累積の被曝線量は約70ミリシーベルトで、緊急作業時の特例の被曝線量限度250ミリシーベルトを下回っていること、被曝の影響による食道がんの場合、潜伏期間が5~10年であることなどを、その理由に挙げた。この点について、吉田氏にぶつけてみた。

---吉田さんの病気と被曝との関連性が世間では騒がれていますが・・・・・・。

「今の病状だけで言えば、放射線の影響は直接ないんじゃないかなあ、と私もそう思っています」

---最後に検査をされたのはいつ?

「一昨年の秋です。ウチの会社ではいつも秋に人間ドックレベルの検診をやっているんですが、その時には何にもなかったんです。バリウムを飲んで食道と胃の検査をして、写真も両方見ましたが何にもない。素人が見て分かるかどうかは別として、きれいなんです。しかし、病気が分かった時の検査の写真を見ると、ちょうど喉のところに引きずっているような異常がある。素人が見て、何か異常があるなという程度ですが・・・・・・」

---素人目にも分かるような変化が急に出たということでしょうか。

「一昨年は医者も何にもなかったと言っているので、まあ、やっぱりこの事故の、あれだと思うんですけれども・・・・・・」

 事故直後の過酷な状況における心身の疲労が病の進行を早めたと言いたかったのだろう。冒頭にあるように、吉田氏が自らのがんの進行状態をステージⅢと明かしたのはこの時だった。

 今後どのような治療を進めていくのか。食道がんの専門家である、東京女子医科大学の高崎健名誉教授が解説する。

「病巣を手術で取り除くことが可能なのが、ステージⅢです。手術は、胸を開いてがんの部分を除去し、胃袋を引っ張り上げるのです。残った食道と、この胃袋をくっつけることで、食道を確保する。手術時間は、4~5時間ほどかかると思います。一般的には入院期間は2週間から3週間ぐらい。単純な手術なので、術後の回復は早いです」

 福島第一原発事故はいまだ収束にはほど遠い。いずれ、吉田氏が現場に復帰する可能性はあるのだろうか。本誌記者が、復帰は考えていますか、と質問すると、「もちろん」と即答した。

「あれだけのことに対応してきましたからね。どういう形になるか分かりませんが、福島の人たちに何らかのサポート、支援をしていきたい。死ぬまでそういうことをしていきたいと思っています」 

 昨年11月、入院直前の会見で事故直後を回想し「死を覚悟した」と語った男の眼差しは、今も鋭かった。

「フライデー」2012年2月10日号より

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