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獨協医大・永井伸一名誉教授「子供をダメにする」親の研究
3000人の親子を聞き取り調査して分かったこと

週刊現代 プロフィール

 私は大学の教授職を辞した後、11年間獨協中学・高校の校長を務めました。就任当時、獨協中学は私語や遅刻が多く、生徒の学校生活はとても乱れていた。そこで、厳しい規律を設けたところ、生活態度が良くなって、結果的に学力も向上しました。

 家庭で社会の規範や秩序を教えるのは、父親の役割です。父親が秩序を強く指向する人だと、子供も秩序を重んじるようになる。反対に、父親が秩序を否定して生きる人間だと、子供は自分に甘く、だらしなくなってしまいますし、困難にあたると、簡単に諦めてしまう。

 頭の良い子供、自主的に勉強できる子供に育つかどうかは、中学生までに親がどう関わったか、それによってどのような脳が作られたかで決まるのです。

 逆に言えば、勉強嫌いな子供でも中学生までなら立て直すのは可能だということです。

 親が変われば、子供も変わるのです。

 成績が悪くても「やればできる」と子供を信じ、成功したら褒めてあげる。そして、たとえ失敗しても頭ごなしには叱らず、なぜダメだったか、次からはどうしたらいいのか、一緒に解決策を考え、勉強は自分のためにするものだということをよく言い聞かせてみる。そうすると、子供は目的を見出し、自分から勉強に向かっていくようになります。

 勉強に集中させるために部活を止めさせようとする親がいますが、それは大きな間違いです。部活動、特にスポーツは忍耐力の向上に役立ちます。また、筋肉を動かすことで脳の「前頭葉」が活発に働くようになります。前頭葉は、蓄積した情報をコントロールする思考の中枢です。ここが鍛えられることで、頭の回転は速くなるのです。

 また、テレビを見せるのを一日1時間未満に限定することも効果的です。映像は情報が断片的かつ一方的なので、脳はほとんど活性化せず、そこからの情報というのは前頭葉にあまり伝達されないんです。問題意識、目的意識が希薄で、考えない若者が増えているのは、日本人のテレビ視聴時間の増加と比例しています。前頭葉を活性化させるには、読書が最も効果的です。

 子供の学習能力は、親から受け継いだ遺伝子からも、もちろん影響を受けます。しかし、育て方によって、子供の力はいくらでも伸びるのです。

「ダメな子はいない。しかし、ダメな育て方はある」

 教員生活38年間、3000人の大学生、2200人の中高生、そして保護者たちに言い続けてきたのは、この一言です。

「週刊現代」2012年2月4日号より