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全国民必読「世界恐慌」欧州からアジアへ
頼みの中国経済まさかの大崩壊

工場倒産、経営者は夜逃げ、エリートは国外脱出
今秋の交替が既定路線になっている胡錦濤中国国家主席。この危機を乗り切って後継に繋げるか。残された課題は重く、時間は少ない〔PHOTO〕gettyimages

 誰もが「本当にこのまま成長が続くのか」と疑いつつ、目先の儲けのために中国に莫大なマネーを注ぎ込んできた。だが、バブルは必ず弾ける。我々、日本人はそれを誰より知っていたはずだったのに。

ここまで悪いとは

 中国浙江省の東南部にある温州市。同市は死者40人を出した昨年7月の中国版新幹線衝突事故が起きた場所でもある。その温州市で1月14日、不動産業者が自ら命を絶った。

 地元の経済誌は「(1月23日の)旧正月を前に、中小企業経営者の自殺と夜逃げがピークに達している」と報じ、経営者の自殺が珍しくもないことを伝えている。実際、温州市では昨年9月22日から27日までのわずか6日間で、3人の経営者が飛び降り自殺。また、同時期に中国屈指の眼鏡メーカー「信泰集団」の会長が20億元(約240億円)以上の負債を抱えて国外逃亡、賃金支払いなどを求めた1000人以上の社員が大規模なデモを行った。

 中国では地域間格差の問題が長らく指摘されてきたが、温州市は田舎の地方都市ではない。中国の改革開放政策のモデル地区で、経済技術開発区に指定されている。約14万社の中小企業があり、眼鏡や靴、衣類などの軽工業を中心に栄えた同市は、「ニューリッチ」と呼ばれる俄か成金を次々と生みだしてきた、いわば中国の経済成長を象徴する都市だったのである。それが昨年夏頃から暗転した。先のデモが起きた際は、慌てた温家宝首相自ら現地入りし、鎮静化に当たったほどである。

 ジャーナリストの福島香織氏が語る。

「温家宝首相が温州入りした後、浙江省の夜逃げ問題は落ちついたと言われましたが、私が現地に行ってみると、11月も12月も続いている。その理由は、秋以降、担保企業という民間の金融業者が夜逃げをし始めたからです。担保企業というのは、個人や企業から資金を集めて、銀行より高い金利で貸し付けを行う高利貸し。

 つまり、昨年秋までは高利貸しから借りたカネを返せなかった企業の経営者が夜逃げし、それ以降は企業から貸付金を回収できず、出資者に返せなくなった高利貸しまで逃げ出したわけです。高利貸しにおカネを出していた市民はパニックに陥り、暴動寸前の集団抗議が行われているところもあります」

 高利貸しまで逃げ出す異常事態が起きている温州市では、14万社の中小企業のうち4割が倒産危機に陥っている。

 実は、こうした状況は温州市に限った話ではない。北京や上海こそ、ここまでひどい状況にはなっていないが、中国経済を牽引してきた沿岸部の広州、東莞などでも同様のことが起きており、経営者が夜逃げし、放置されたままの工場が無惨な姿を晒している。

 世界経済の頼みの綱だった中国で、いま、いったい何が起きているのか。

 独立行政法人・アジア経済研究所新領域研究センター長で、在中国日本大使館で勤務したこともある大西康雄氏が言う。

「欧州危機が中国経済にマイナスの影響を与えるのは避けられませんが、そもそも欧州経済の悪化がなかったとしても、中国経済は減速せざるを得なかったでしょう。中国は'08年のリーマン・ショック後の経済対策として、大型公共投資と大幅な金融緩和を実施してきましたが、その効果が切れかかっているからです。

 中国政府も、この緊急措置的な経済対策は『2年以上はやらない』と言ってきたように、昨年中には打ち切られた。その後、なんとかソフトランディングさせようとしていたところに欧州危機が起きたというのが実情です」

 リーマン・ショック後の経済対策で、中国政府は実に4兆元(当時の為替レートで約57兆円)をマーケットに注ぎ込んだ。そのうち8割が鉄道や道路、公共住宅に費やされている。公共投資で景気を刺激するのはかつての日本と同じだが、中国では同時に住宅ローン金利の優遇や貸出金利の引き下げなどの金融緩和も行った。このなりふり構わぬ対策で、確かに中国は、リーマン・ショックから世界でもっとも早く立ち直った国となり、中国の経済成長はこれからもずっと続くかのように思われた。

 だが、急激な経済対策は市場を歪め、投資バブルを生んだ。

「2010年春にかけて、不動産価格は急騰し、一部の大都市ではわずか2年で、2倍近い値段に跳ね上がったところもあります。銀行の貸し出しも前年比30%増という勢いで伸びました。そこで、政府は不動産バブルを抑制するため、今度は逆に、'10年秋頃から金融引き締め策を取ったわけです」(クレディ・スイス証券チーフエコノミストの白川浩道氏)

 冒頭にあげた温州市のケースでも、金融引き締め策で、銀行の貸し渋りや貸し剥がしにあった中小企業が、高利貸しに頼るようになったのが、破綻の原因だった。

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