"ドラギ・マジック"は時間稼ぎ―ユーロ下落トレンドに大きな変化なし
〔PHOTO〕gettyimages

 足許の金融市場は、取り敢えず落ち着きを取り戻しているように見える。一時大きく売り込まれたユーロは、投機筋等からの買い戻しもあり値を戻している。一時不安定な展開を示していた株価は、米国などを中心に底堅い展開に変化している。こうした金融市場の動きの背景には、いわゆる"ドラギ・マジック"の効果がある。

 "ドラギ・マジック"のドラギとは、欧州中央銀行(ECB)のイタリア人総裁だ。そのドラギは、昨年12月21日に期間3年、金利1%で金額無制限の資金供給を行った。このECBのオペレーションによって、年末越えの資金繰りに窮していた欧州の金融機関などは救われた。当面、資金繰りに苦しむことから解放されたメリットは大きい。何せ、向こう3年間の資金繰りが劇的に安定的になったのである。

 "ドラギ・マジック"が与えた効果は金融機関だけに限らない。金融市場の雰囲気が変わった。それまで金融機関の資金繰りの苦しさを反映して、重苦しい空気が垂れ込めていた市場の空気が大きく和らいだ。それに伴い、金融市場の動向に悲観的な見方をしていた投資家の心理状態が微妙に変わり、明るさや楽観的な見方が目立つようになってきた。まさに、ECB総裁のマリオ・ドラギの政策="ドラギ・マジック"が奏功したのである。

"ドラギ・マジック"は根本的な問題解決にはならない

 "ドラギ・マジック"によって、金融市場の空気が変わったことを感じ取ったヘッジファンドなど投機筋のオペレーションにも変化が出た。それまでユーロを売り込み、主要国の株式に関してショートポジションを積み上げてきた大手ヘッジファンドは、ユーロや株式先物のショートカバーを始めた。ユーロは徐々に戻し、主要国の株式市場ではヘッジファンドなどの買い戻しに呼応して、一部投資家のバーゲン・ハンティングが目立ち始めた。

 しかし、この"ドラギ・マジック"によって、ユーロ問題がすべて解決できたとは考えにくい。"ドラギ・マジック"は、突き詰めて考えると、中央銀行が多額の流動性を金融機関などに供給することによって当面の資金繰りを安定させただけで、ユーロ圏諸国が抱える多額の債務や、大手金融機関の経営懸念の問題を解決したわけではない。ということは、マジックにも限界があるということだ。

 まず、その限界は大手金融機関の資本増強策に表面化するだろう。今後、ユーロ圏の大手金融機関は厳格な自己資本比率を達成するために、保有する資産を減らすか、あるいは資本を増強しなければならない。今のところ資本増強策を実行した金融機関は僅かで、今後、思い切った資産削減策や増資などを行うことが必要になる。問題は、それが思い通りに実行できるか否かだ。

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