田原総一朗×堀義人(グロービス・グループ代表)×岩瀬大輔(ライフネット生命副社長)
「この悲劇を日本変革の機会に変えるために」

若手経営者に聞く3・11以降のニッポン VOL.1
左から田原総一朗氏、岩瀬大輔氏、堀義人氏

田原: まず岩瀬さん、今回の東日本大震災をどう捉えていらっしゃいますか?

岩瀬: 非常に悲しい出来事ですし、いろんなことが変わっていかなければならないと思います。

 でも、それ以上に気になっているのは、実は日本が抱えている構造的な課題---一番大きなものは財政の赤字をどうするかだと思いますけど、他にも増税は必要なのかとか、年金、医療をどうするのか、あるいは経済を大きくしていくために企業の競争力を高めるようなことをやっていくのか、1400兆円ある個人の金融資産にもっと稼いでもらうために金融市場を活発化させるのかとか---といった課題に取り組むような震災前にあった動きが滞っている。

 そういう課題は3月11日の前後でも何も変わっていないんです。

 本来、直していかなきゃいけないそれらの課題が、今回の震災を機にむしろ取り組みづらくなるんじゃないかと危惧しています。

田原: 取り組みづらくなる? 逆に取り組みやすくなるんじゃないの。

岩瀬: こういった課題っていうのは、現在の非効率を直して新しいものを生み出していくものなので、必ず痛みを受ける人がいるんです。

 例えばいま「増税」というと非国民的な扱いをされるでしょう。「医療費をカットしろ、自己負担を増やしなさい」「年金の需給年齢を引き上げるとか金額を下げる」とか言ったら、たぶん「こんな大変なときに国民に負担を強いるのか」といった抵抗があるのではないでしょうか。

 本来なら、いまだからこそウミを出し切って構造的な課題を解決することも考えられます。しかし、結局、「いま大変だからそんなことを言うな」とか「どさくさに紛れて増税を言うのか」みたいな話が出てきてしまう可能性がある。だから、短期的、しかも国民の一部に対してなんですが、痛みを伴う改革を提案しづらいムードになっているように思っているんです。

せめてこの大災害を契機に日本をよい方向に持って行かなければ、何のためにこれほどの大災害があったのかという気持ちなんです。(堀)〔PHOTO〕gettyimages

 復興に向けた動きというのは、「エネルギー政策をどうするのか」といった中長期の構造的な課題もある。しかし、もう少し短期的に見た場合、数十兆円の規模の財源を確保して取り組めば、東北地方はある程度の時間をかければ再び復興するでしょう。それによる景気にプラスの面もあると思うんですね。

 ただその先に何があるかというと、気づいてみると、長らく積み上げてきたGDPの2倍の借金だとか、垂れ流しで増え続ける医療費だとか、そういうところが手つかずのまま残ってしまうのではないかと思う。その点を非常に懸念しています。

30万円の献金問題で外務大臣が辞任する政治を変えたい

田原: 堀さんはどうですか。

堀: 大変不幸な大震災で、多くの人が亡くなったことと、被災された避難民の方にお見舞い申し上げます。その上で、私は今回は日本が変わる機会にしなくてはいけないと考えているんです。

 震災前の政治状況を考えると、在日外国人からのわずか30万円の献金で外務大臣が辞めてしまったり、あるいは政党間の足の引っ張り合いがあったり、可決の出来ない法案が山積みのねじれ国会という状況だったり、リーダーシップが発揮できていない状況、あるいは諸外国との外交面でなんら有効な政策を出せていないという状況があった。

 その中でこの大震災に遭遇し、そして多くの方が犠牲になった。せめてこの大災害を契機に日本をよい方向に持って行かなければ、何のためにこれほどの大災害があったのかという気持ちなんです。

 僕はこの変わるというのを三つの次元で考えています。

田原: 三つの次元?

堀: 一つ目は国です。国が変わる、あるいは政治が変わる機会と捉えようと。二つ目が企業が変わる機会、そして三つ目が人々が変わる機会と捉えようという発想です。

田原: 人々って国民っていうこと?

堀: 国民です。国民が変わる機会と捉えようと。

 まず第一の国に関しては、構造的な問題があった。例えば財政の問題、それから少子高齢化によって発生している問題---当然デフレもあるわけですが---その中で経済が伸び悩んでいるということに関して、ここ十数年間、明確な政策が打てたとは思っていません。

 異論はあるかもしれませんが、この十数年の中で一番効果的だったのは小泉純一郎・竹中平蔵コンビによる規制緩和の方向性でしたが、残念ながらそのあと自民党政権によって否定されてしまった。

 そして、その否定された路線がいまだに継続していて、この間やたらと社会保障が積み上がり深刻な財政赤字に陥っている。これを変えるしかない。

 また企業に関して言えば、世界経済のGDPに占める日本のGDPは20%近くあった時期があったんですが、いまや8%強でしかありません。今後、おそらく5%まで落ちていく。

 20年間、国民の所得も増えないし資産も増えないというのは、先進国で唯一日本だけです。一人負けの状況になっている。

 そういう状況の中で、今回の震災は、日本企業がグローバルに戦っていく、そしてシェアを奪い返していくためのチャンスとして捉えなければならないと思う。

 で、三番目が、国民。多くの方が亡くなり、生き残った人たちも住む家さえないような状況がある。この中で、国や政府に頼るんじゃなくて、自立して自分たちの力で生きていくようなマインドを持つことです。国にはもうおカネもない。そういう中で、自らの力で立ち上がり、自助努力でやっていくマインドに変わる機会だと捉えています。

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