中国
のべ31億人の民族大移動「春節」で感じた「10%のヨーロッパと90%のアフリカ」が混在する北京の実情
北京駅〔PHOTO〕gettyimages

 ふるさとの訛りなつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく――しんしんと冷え込むこの時節、いまから102年も前に石川啄木が上野駅で唄ったような趣に駆られて、上野駅によく似た造りの北京駅へ足を運んだ。

 確かに北京駅も、東北地方へ帰る人の群れで一杯である。ただしこちらの「東北地方」とは、遼寧省・吉林省・黒竜江省の東北三省のことで、「訛り」とは中国語の東北弁のことだが・・。

 1月23日、中国は春節を迎えた。春節とは、中国人にとって一年で一番大事な祝日、旧正月のことだ。普段は都会生活を満喫している中国人も、この日ばかりは、誰もがまるで強迫観念に駆られたように生まれ故郷へ里帰りする。今年のこの季節の中国の長期旅行者は、延べ31億人を超える見込みと、中国メディアは報じた。文字通り、人類史上最大の民族大移動となったのだ。

ダフ屋一掃はいいが、怪しい商売人がうろうろ

 そんなわけで、北京駅は「人ごみの中にそを聴きにゆく」などという悠長な状況ではなく、中国語で言う「人山人海」状態になっていた。文字通り、人が山のように重なり合い、海のように連なっているのである。

 今年の春節から、鉄道当局は悪名高き「黄牛」(ダフ屋)を一掃するため、切符実名制を導入した。切符には乗車する人の実名と18桁の身分証明書番号が刷り込んであり、駅員に切符と身分証明書を提示して本人照合を行わないと電車に乗れない。より正確に言えば、駅の構内に入れないようにしたのである。鉄道警察に加えて、武装警察まで出動して、ものものしいことこの上ない。

 だが、黄牛一掃はよいが、次のような他の諸々の人たちは、相変わらず駅周辺にタムロしていた。

○ 偽ホームレス・・「事故で重傷を負い一歩も歩けません」などと張り出しているくせに、全速力で走り去ったりする。


○ 偽領収書売り・・どんな機関・店舗の領収書を求められても、額面価格の1割払えば見事にそれっぽく偽造してくれる。

○ 偽地図売り・・一見すると北京ぽいがどこの街だか不明の「北京地図」を、1枚6元(1元≒12・2円)で売っている。

○ 白タク・・こちらでは「黒車」と呼び、平気でタクシーの10倍くらい吹っかけてくる。

○ ポン引き・売春婦が数人で、駅近くにひと部屋を借りて、300元~500元でショートの客を連れ込むのが流行中。

○ 人買い屋・・人手不足の建設労働者を大卒者より高い月額3500元程度で囲い込む。それ以外にも、駅の構内へ入る入口では、手荷物が多すぎて与太っている婆さんや、名残惜しくていつまでもディープキスを止めないカップルらが、後ろから「早く進め!」とどやしつけられていた。春節の北京駅は、このように十人十色、千差万別、百花繚乱のユニークな光景が広がっているのだ。啄木がこの地に踏み立ったなら、きっと名句を詠んだに違いない。

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