雑誌
山手線新駅
「計画から8年!"難産"のウラ事情」

品川-田町間に設置予定の30駅目だが、
2000億円の費用を巡って 官・民がせめぎ合い
泉岳寺駅周辺から品川駅方面を望む。左側に広がる車両基地が再開発エリアとなっている〔PHOTO〕郡山総一郎
現在の山手線の線路を最大約200m東側に移し、新駅を設置。品川駅の新幹線ホームから程近い所に位置する

「そりゃあ歓迎よ。ここからじゃ田町も品川も歩いて20分近くかかるんだから。そのうち、ここら辺にもエリートの外国人さんが増えるって聞いてるわよ」(新駅予定地の周辺に住む50代主婦)

 日本を代表するメジャー路線である山手線に、30番目の新しい駅が加わる可能性が浮上した。新駅設置が実現すれば、'71年に西日暮里駅が開業して以来となる。予定地は、品川-田町駅間(東京都港区)にJR東日本が所有している約20haの車両基地。

 現在、同基地では再開発の準備のため一部では既にレールの撤去作業が進んでいる。計画では、車両の引き込み線路をはがして、西側を走る山手線を東側の新幹線側に寄せ、空いたエリアに高層の商業施設やオフィス街を建設する予定だ(右写真を参照)。'14年度中の着工を目指し、新駅と周辺街区の完成には10年を要する見込みだという。

「JR東は現在上野から発着している常磐線や宇都宮線、高崎線を東京駅まで延伸して、東海道線と直通運転する『東北縦貫線』計画を進めています。これが実現すれば、今の基地に車両を留め置く必要がなくなるので、再開発に回せるわけです。そもそも品川-田町間は駅間距離が2.2kmと、現行の路線では最長だったため、新駅の設置を望む声は地元からも上がっていたのです」(全国紙経済部記者)

「再開発されれば採算は合う」と語った石原都知事。都が負担する費用がいくらになるのかも注目だ

 同エリアはリニア中央新幹線の乗り入れが予定される品川駅や羽田空港に近いことから、昨年12月、外資系企業を積極的に誘致する「国際戦略総合特区」に指定された。国は特区で働く外国人の入国審査に関する規制を緩和し、都は特区内の企業の法人事業税の免除などで外資系企業の誘致を支援していくという。

 だが、新駅設置のプランは今になって浮上してきたものではない。実は'03年12月に、日経新聞が「山手線に新駅設置。事業費は2000億円規模」と、今回とまったく同じ内容をおよそ8年前の時点で報じていたのだ。

 それではこの8年間、新駅の構想は棚上げされたままだったのか。JR東に問い合わせると、奇妙な回答が返ってきた。

「'03年も今回も、当社としてプレス発表はしていません。新駅設置の意思決定をしたという事実もありません」(広報部)

 すでに新聞各紙やテレビでさんざん取り上げられている話題なのに、JR東は「根も葉もない話」と主張するのだ。

 また、石原慎太郎東京都知事は1月6日の会見で「あの地域は非常に重要な拠点。駅として採算も合うと思う」と語る一方で、「誰が(新駅を)作るか、どうやってカネを出すかはこれからの問題だ」ともコメント。いつもの威勢の良さはどこへやら、慎重な言い回しに終始した。

 新駅設置や特区の再開発について当事者たちの口ぶりは一様に重い。これにはどのような理由があるのか。前出の全国紙記者がウラ事情を明かす。

「この8年間、JR東は東京都や港区と協議を重ねてきましたが、新駅の設置計画はさしたる進展を見せませんでした。理由は都知事が語ったように、費用の問題です。特区の再開発は当然、自治体がその費用を負担しなければならない。そこでJR東が目論んだのは、都に『再開発には新駅が必要だから作ってくれ』と言わせること。請われて新駅を作るのだから、費用は都にも負担してもらう。JR東が一貫してこうした狙いでいるものだから、協議は平行線のままでした」

 交通政策に詳しい鉄道アナリストの川島令三氏も、こう証言する。

「JR東は、ずっと前からある新駅構想をいまだに公には認めていません。認めれば自前のカネで作らなければいけないものだから、秘密主義を貫いている。こんなのは自治体へのタカリでしかありません。そもそも新駅の話なんて鉄道関係者なら誰でも知っていたことです。JR東の中でも、仮称の段階ですが『泉岳寺駅』と呼ばれていましたから」

 およそ8年間もJR東とせめぎ合いを続けている都の言い分はどうだろうか。都市整備局の開発担当課長が本誌の取材に応じたが、

「新駅については、東京都としてはJR東さんからまったく話を聞いていません。万が一、品川-田町駅間に新駅を作ることになっても、建設費はJR東さんに負担してもらいます」

 と、白々しいほどに他人事なコメントを発するのみだった。

 まるでキツネとタヌキの化かし合いの様相を見せる新駅建設。着工までには、まだまだ紆余曲折がありそうだ。

一周34・5km!山手線トリビア

やまてせん? やまのてせん?

 正解は「やまのてせん」。そもそも東京の〝山の手〟を走ることから名付けられた名称なのだ。'75年に新宿西口にオープンした『ヨドバシカメラ』のCMソングでは「回る緑のやまてせん~♪」と歌われていたので(現在は修正ずみ)、カン違いしていた人も多いのでは?

品川駅と目黒駅は何区にある?

 品川駅の所在地は品川区ではなく港区だ。もともと品川とは、東海道五十三次の最初の宿場。鉄道計画を地元住民から反対された明治政府が仕方なく東京湾を埋め立て、はるか北側に品川駅を置いたのだ。品川駅の南側には京浜急行の「北品川駅」があるが、これは文字通り、品川宿より北側に位置していたため。ちなみに目黒駅の所在地は目黒区でなく品川区。これも地元住民の反対運動が原因だ。

唯一残っている踏切はドコ?

 運行間隔が短く、ピーク時には2~3分おきで走る山手線。そのため踏切はほぼ閉まった状態になってしまうので、'12年現在で1つしか存在しない。駒込-田端間にある「第二中里踏切」だ。乗車中に確認してみては?

最長駅間は?最小乗客駅は?

 新駅が完成すれば、最長区間は品川-大崎間となり、その距離は2km。最短区間は日暮里--西日暮里間で、わずか500mしかない。

 乗降客数は多い順に(1)新宿(一日平均で約76万人)(2)池袋(3)渋谷(4)東京(5)品川。最下位は鶯谷だ。ちなみに「みどりの窓口」が未設置なのは鶯谷と新大久保の2駅だけ。

「フライデー」2012年1月27日号より

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