佐々木俊尚「ブレイクスルーな人たち」
2012年02月07日(火) 佐々木 俊尚

佐々木俊尚が5人の若者に迫る『21世紀の生き方』第3回「『日本は』『日本人は』なんて大きな主語の議論をやめて、個人をベースにものを考えよう」

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第2回はこちらをご覧ください。

佐々木: いまは前よりも生活にかかるコストが劇的に下がっていますよね。日本社会というのは何が良いかというと、生活文化の質が高いとよく言われている。海外ではコンビニとかドラッグストアに行くと、たとえばお菓子がまずいとか、タオルを買っても良いタオルは高くて、ドラッグストアで100円で売っているようなタオルは一回で使い捨てになってしまう。

 日本では、ユニクロとか無印良品にいろいろなものがあって、すごく安価に良い生活ができる。マンションでも今は賃貸で7万円とか8万円で借りれるところで、オートロックとかすごく立派な設備が整っていますよね。そういうふうに考えると、以前よりも生活にかかるコストは劇的に下がっていて、生活するための損益分岐点が前よりも下がっていると思います。

 だったらそこで、あまりに高いところを目指さなくてもいい、という考え方も成り立つかもしれませんね。昔はもう、上を目指さないとあとはスラム街で生きるのみ、というような、そういう黒澤明の「天国と地獄」みたいな時代もあったわけですね。それに比べると、今回聞いているよな生き方を選ばれるというのは、今おっしゃったような「縦軸を横に倒す」というのはすごく「アリ」だなと思います。そういう部分が非常にノマド的に感じますね。

米田: 成功モデルが複数あるというか、今まで一方的に与えられてきた成功モデルって、個々人で設定条件が違うから全員が全員GREEの社長になれるわけではないのに、たとえば芸能人とか著名人、スポーツ選手、あとはモテる人とかにならないと成功者じゃない、みたいなのがあった。みんながみんなそうなれるわけがないのに、ずっとそういうモデルを与えられてきたわけですね。

 とくに女性なんかは小さい頃からそれを女性誌で叩き込まれるわけじゃないですか。こういうふうなファッションをこういうふうなTPOでしなさいとか。そのモデルから一度降りてみるというか、設定条件が違うなかで、自分がいちばん心地よくて自分がいちばん幸福だと思えるスタイルがどういうことなのか、というのが、僕にとってはいちばん重要です。

佐々木: 多分昔は終身雇用の会社に就職して、安定したローリスク・ローリターンの生活を選ぶか、そうでなければ大企業の経営者を目指してアメリカンドリームを狙うというような、2種類のモデルしかなかったんですよね。今はそのどちらでもなく、ある程度の満足感を得られるような人生観が選択できるようになっていると思いますね。

大石: それで一時期起業という夢があったんですが、堀江さんの事件以降、そういう夢がしぼんでしまった。起業でリッチになれるという夢がまだあれば、多分みんなまだどんどんやっていると思うんですが、そこがしぼんできたと思います。

佐々木: 彼がああいうふうになったことで、ベンチャーを目指す日本の若者が減ったというふうにお考えですか?

大石: 減ったというか、ストーリーとして目指すべき目標としての魅力度が減ってきたな、と思います。今までは、何かをやる場合に目指すべき模範的なストーリーのようなものがあって、どの時点でどれに乗るかという話だったと思うんですが、今はそれが全部潰れてきたということがあると思います。

 まだあるとすれば、アジアとか他の地域に進出して起業している人たちがいらっしゃって、そういう新しい市場で新しいチャレンジをするのは全然アリだと思いますから、それが別のストーリーとして出てきていると思います。

時代の先端を探る疾走感が欲しい

安藤: 今のお話をうかがって、なるほどな、と思ったんですが、最近成功モデルって何だろうとよく考えていて、ちょっと思い出した話があるんですが、先週ある出版社で新しい働き方について企業講演をさせていただいたんですね。そこで編集者の方から講演後に、「今はビジネス書をはじめ本が売れなくなっている、その原因はどこにあると思いますか?」と質問があったんですよ。

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