牧野洋の「ジャーナリズムは死んだか」
2012年01月26日(木) 牧野 洋

医師の資格を持った記者が医療問題を取材。ネット時代の記者の競争力は専門性にある。南カリフォルニア大学のパークス教授インタビュー(後編)

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ピュリツァー賞受賞時のシェリー・フィンク(左端手前の女性)

前半はこちらをご覧ください。

 医師の資格を持ち、著名大学で脳神経科学の博士号も取得している---こんな経歴のジャーナリストが医療問題を取材できれば怖いものなしだろう。

 日本ではこれほどの専門記者は見つけにくいが、アメリカにはいる。民間非営利団体(NPO)報道機関プロパブリカ所属の記者シェリー・フィンクだ。彼女はハリケーン・カトリーナの災害現場で極限状態に置かれた医師や看護師の実態に迫るルポを書き、2010年に調査報道部門でピュリツァー賞を受賞している。

 興味深いのは、フィンクは新聞社などに勤務したことがないフリーランス出身という点だ。医療問題にどんなに詳しくても、ジャーナリストとしての訓練を受けていなければピュリツァー賞級の記事は書けないのではないか。

 実は、フィンクはフリーランスとして働くなか、一流誌のベテラン編集者らから手厚く指導してもらっているほか、スタンフォード大学在学中に長文の読み物であるフィーチャー記事の書き方も学んでいる。アメリカではフリーランスでもジャーナリストとして訓練を受けられるのだ。ここでは大学が大きな役割を担っている。

 スペシャライズド・ジャーナリズム---専門分野を深く取材し、分かりやすく伝える報道のことだ。世の中がますまず複雑化しているだけに、ジャーナリストも専門性を身に付けなければ対応できなくなってきた。インターネット上で瞬時にニュースが流れる時代、過去24時間以内に起きた出来事を速報ニュースとして伝えるだけでは「ジャーナリスト失格」なのである。

 前回のコラムでも紹介した「カリフォルニア・ヘルスケア財団(CHCF)医療報道センター」はカリフォルニア州の医療問題に特化して報道しており、スペシャライズド・ジャーナリズムのお手本だ。医療問題は経済などとも密接に絡んで複雑であり、報道する側にも専門性が求められる。

 慈善財団CHCFからの資金支援で発足した同センターの創設者兼センター長は、南カリフォルニア大学(USC)アネンバーグ校のジャーナリズムスクールでスペシャライズド・ジャーナリズムを教えるマイケル・パークス。前回に続いてパークスとのインタビューを紹介する。<>で示したカッコ内は私の補足説明。

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