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 民主党政権のやることはいつもちぐはぐだ。経産省が送電部門を電力会社から独立した機関に委ねる「機能分離案」を軸に発送電分離の検討に入ったそうだが、手順が前後している。

 原発事故の賠償を考えた場合、東京電力の解体・法的処理こそが国民負担最小化の最善策だという識者の声を、民主党政権はこれまで完全に無視してきた。電力業界に天下りなどで便宜を受けてきた経産省に言われるまま、昨年夏に東電救済法(正式名称は「原子力損害賠償支援機構法」)を成立させた。

 東電を温存の一方で、株主責任や債権者責任は不問に付された。本来なされるべき株式の減資や債権カットはどこかに霧消し、そのツケは国民に回ることになった。額は5兆円をくだらないはずだ。

 株主や債権者が責任をとらないのだから、東電の経営者や従業員にも厳しいことが言えない。経営者は退陣を迫られてもいないし、まして個人財産を没収されることはなさそうだ。従業員の負担も、企業年金の一部カット程度のお茶濁しで済むだろう。冬のボーナス(一般職の組合員平均)は、前年の84万円から37万円に減額されたが、はっきり言ってもらいすぎだ。

 東電関係者には大甘なのに比べ、国民には厳しい。早速、電気料金値上げが俎上に上っている。国民にツケ回しされるのが仮に総額5兆円としても、東電の年間電気料収入に匹敵する額。ツケ回しが10年間続くなら、電気料金はその間、平均して1割程度値上げされた状態が続くことになる。

 識者が東電解体を主張してきたのは、解体すれば、東電の送電網を分離して売却できて、発送電分離による効率化も同時に実現でき、国民負担の最小化と一石二鳥になるからだ。

 発送電分離は'90年代以降の電力自由化の流れの中で米国やEUでも進められており、一定の効果が出ている。制度設計の不備で狙い通りの効果に達していない地域もあるが、北欧などでは高い実績を残している。

 日本の電気料金は国際的にも高く、効率化の余地は大きい。日本は積極的に取り入れるべきなのだ。安全面などに不安があるというのなら、制度設計の上手な国を参照すればよい。大きな問題が生じていない国はいくつもある。

 ところが、民主党政権は東電を温存したばかりに、送電会社を別会社にするような本格的な発送電分離はできない。そのため、完全な所有分離ではなく、「機能分離」という形で発送電分離を進めようとしている。形の上では電力会社から独立した機関にするというが、そのモデルは米の独立系統運用機関(ISO:Independent System Operator)という公的機関だ。

「USOでしょ」と叫びたくなるような話だ。公的機関というのが、なんとも民主党らしいが、これでは経産官僚が新たな天下り先をまんまと手に入れることになる。それに、米国の一部地域での電力自由化は、あまりいいお手本とは言えない。'00年初めのカリフォルニアの電力危機は、新規のISOを設置したことが一因とされているほどだ。

 「独立した公的機関」は聞こえがいいが、そもそも東電を解体して送電網を別会社にすればいいだけのことだ。手の込んだ天下り策を弄して、素人の役人がISOを取り仕切ることになれば、効率化どころか大きな間違いが起きかねない。かといって、天下りするだけで役立たずなら、カネ食い虫の誕生だ。政権幹部たちに、そんなことはまるで見えていないだろうが。

「週刊現代」2012年1月28日号より


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