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 脳の皮質下にある直径1.5㎝以下の血管で起こる梗塞(小脳梗塞・ラクナ梗塞)は、ほとんどが無症状で、症状が出ても頭痛やしびれなどを感じる程度なので、見逃してしまいがちです。しかし、このような無症候性の脳梗塞によって、高齢になってからの記憶障害、認知症、アルツハイマー型認知症などのリスクが高まってしまうことが、ニューヨークのコロンビア大学医学部Adam M. Brickman博士らの研究によって明らかになり、1月3日付のNeurologyに報告されました。

 アルツハイマー病や年齢による脳や神経の病的な変性は、第一の症状として、短期記憶の喪失など、記憶の障害によって診断されます。以前の研究でも、無症候性の脳梗塞があった人は、なかった人に比べて認知症を発症するリスクが約2倍も高まることが報告されています。

 今回の研究では658人の認知機能の低下が少ない高齢者に、記憶に関するテストとMRI検査を実施。その結果、132人に脳の皮質下梗塞、42人に皮質性梗塞が見られました。このうち、無症候性の脳梗塞と診断されたことがある参加者は66人にとどまりました。以前の研究でも、脳梗塞のうち3分の2は無症候性であることが報告されていますが、今回の研究では、さらに無症候性の脳梗塞がいかに見逃されやすいかがわかりました。

 さらに記憶テストとMRI画像を分析した結果、無症候性の脳梗塞を起こした参加者の海馬の容量は、明らかに、脳梗塞を起こしたことのない参加者に比べて小さいことがわかりました。また無症候性の脳梗塞を起こした人は、起こしてない人に比べて、記憶能力が低下している傾向があることも明らかになりました。

 この結果について研究者らは、無症候性に限らず、脳梗塞を予防することが、記憶力の低下や、認知機能の低下、認知症やアルツハイマー型認知症の予防につながり、無症候性の脳梗塞の発生の有無を調べ、スクリーニングすることは、無症候性の脳梗塞を発症した人々の将来的な認知機能の低下を予防するために有益であると述べています。

医療ジャーナリスト 宇山恵子
Neurology,January 2012


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