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陸軍第8特殊軍団に対日テロ部隊
北朝鮮が日本の原発施設を狙ったら

「若狭原発群」に特殊部隊上陸

 原発メルトダウンの恐怖が、再び日本列島を襲おうとしている---。

 権力基盤の不安定な金正恩政権下では、軍部の暴走による内乱や韓国侵攻といった「朝鮮半島有事」が勃発する事態も絵空事ではない。その場合、米軍が事態鎮圧に乗り出すことになるが、ひとたび戦端が開かれれば、まず狙われるのが米軍の出撃拠点であり、物資補給の要衝となる日本である。その時、日本はどのような攻撃を受けるのか。

 まず考えられるのは、北朝鮮の特殊部隊によるテロ攻撃だ。陸上自衛隊幹部が分析する。

「北朝鮮の総兵力は約110万人とされるが、海を隔てた日本に対して大規模な上陸作戦を展開することは難しい。おそらく、軍の中でもエリートとされる特殊部隊を動員し、隠密行動が可能な少人数編成でテロを仕掛けてくるだろう」

 北朝鮮特殊部隊の中核となるのは、陸軍第8特殊軍団。ここに所属する特殊部隊員10万人の中から、さらに選りすぐられた精鋭が対日テロ部隊となる。

 特殊部隊の攻撃目標としては、在日米軍基地や自衛隊基地といった軍事施設や国会議事堂、霞が関のような官庁街が考えられるが、これらの場所は普段から厳重な警備態勢が敷かれており、特殊部隊といえども簡単には侵入できない。

 そこで特殊部隊のターゲットとして浮上するのが、警備態勢が比較的緩いうえ、破壊によって大きなダメージを与えることのできる原発施設である。実際、'95年頃にはオウム真理教の信者が北海道の泊原発に原発作業員として潜入し、資料を持ち出す事件も起きた。日本の原発警備が甘いことは、自衛隊内でも以前から懸念されていた。

 わけても危険視されるのは、北朝鮮から海路による侵入が容易な福井県若狭湾に位置し、14基もの原発がひしめく「若狭原発群」だ。

 次ページの地図は、全国にある原発と、後述する北朝鮮のミサイル攻撃の標的となりうる主要な在日米軍基地および自衛隊の航空基地をまとめたものだ。一覧してわかる通り、若狭湾周辺には原発が集中している。

 '05年に北朝鮮による原発テロ攻撃の危険性についての論文を発表したこともある、元衆院議員で国際経済交流協会代表理事の米田建三氏は言う。

「私が論文を書いて警告してから5年以上経過していますが、残念ながら北朝鮮の原発テロに対する対策はほとんど進んでいません。たとえば、海外の場合、原発周辺は軍隊が警備するのが常識です。ところが日本の場合、そもそも武装した侵入者を想定していないため、武器を持たない民間警備員がいるだけです。

 福井県のある原発では、有事の際に県警の機動隊が原発に到着するまで50分もかかり、一番近い駐在所から警官が来るだけでも15分かかる。これでは精鋭ぞろいの北朝鮮特殊部隊の侵入を防ぐことなど到底、無理でしょう」

自衛隊基地は主な航空基地のみを表記。原発が集中する若狭湾を筆頭に、全国に危険地帯が点在

 以下に、米田論文で論じられている北の特殊部隊による原発施設攻撃の方法について紹介する。

 海路で侵入する場合、特殊部隊は若狭湾沖合に到着した潜水艦から、半潜水艇や水中スクーターに乗り換えて上陸する。若狭原発群周辺は切り立った崖が多いが、訓練を積んだ隊員なら軽々と原発施設に辿り着くことができる。

 上陸する北朝鮮の特殊部隊は2通りの編成が考えられる。ひとつはロケットランチャーなどで重武装した50人程度の小隊。もうひとつは、拳銃等で軽武装した5~6人のチームだ。

 このうち、重武装したチームが潜入した場合には、携帯式対戦車砲やロケットランチャーといった重火器により、原発の格納容器を直接、攻撃することもありうるが、分厚いコンクリートと鋼鉄で形成される本体を破壊することは容易ではない。考えられるのは、発電機や取水ポンプといった冷却系統の破壊である。

 福島第一原発事故でも明らかになった通り、原発は冷却手段を失った途端、メルトダウンに向けて暴走を始める。原発の原理そのものは軍事機密でもなんでもなく、世界共通で、北朝鮮の特殊部隊も当然、原発の特性は把握している。

 軽武装チームの攻撃方法としては、警備員を人質にするなどして中央制御室に侵入、制御システムを破壊または誤作動させることで、メルトダウンを狙う。

 どちらの作戦を取るにしても、一旦、施設内への侵入を許してしまえばテロの阻止は不可能。仮に警察官が常駐していても、警察の装備する拳銃やサブマシンガン程度では、ロケット砲など重火器を備えた特殊部隊には対抗できない。

 陸上自衛隊の「中央即応集団」のような対テロ・ゲリラ専門部隊に対応を任せるという選択肢はあるが、自衛隊出動には、警察では対処できないことが明らかになったうえで、総理大臣からの「治安出動」命令が必要になる。その手続きも官房長官や防衛大臣らを集めた安保会議の後、閣議決定するなど時間がかかる。総理の命令が下り、自衛隊が現地に到着する頃には、すでにメルトダウンは始まっているだろう。

 米田論文では、あらゆる角度から検証した結果、こう結論付けている。

〈いずれにせよ、軍事訓練を受けたテロリストらの原発への侵入、占拠は、少人数でも短時間に実施でき、原子炉の破壊や政府に対する恫喝など政治目的を達成することは可能である〉

 原発が攻撃などを受けて破局的な事態になった場合の被害規模について、京都大学原子炉実験所助手だった瀬尾健氏(故人)が、かつて全国の原発別に被害予測を行っている。破壊の程度や風向きなどによって異なるが、いずれの場合も原発が立地する市町村では、人口の90%以上が急性死。放射能によるガン死も、若狭湾原発群が被害に遭った場合、名古屋や大阪近辺はもちろん、東京にも及ぶと予測している。

 福島第一原発事故の処理さえ見通しが立たないなか、新たな原発がメルトダウンを起こせば、人的被害のみならず、経済的にも日本は致命的な打撃を受けることになる。

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