内閣府事務次官に財務省出身者を送り込む用意周到さ。財務省が着々と進める「増税一直線人事」

 民主党はよく政治主導という。しかし官僚の代わりに電卓を叩いたり、夜遅くまで仕事をしたりするのを政治主導といわない。

かつて小泉純一郎総理は「総理大臣というのは二つしか仕事がない」と話していた。一つは衆院解散。これは誰でも知っていることだろう。もう一つは人事だ。いろいろ説明をしても、彼からは「うん」と「任せた」以外の言葉はほとんどきいたことがない。小泉流にいえば、人事で任せられる人を選んだということだろう。竹中平蔵さんのことを、自分ではわからないから竹中さんを選んだとはっきりいっていた。そして、郵政民営化では専任大臣として制度設計からすべてを委ねた。

 政治家が何かをやりたいときに、自分でやるのではなくどのような部下を選んでやるかが重要だ。私は竹中さんの下で仕事したが、コアメンバーは数名だった。といっても、日常業務もさばかなければいけない。そこで、大臣になると、側近スタッフ以外の役所の人事もとても重要だ。ここを間違うと、やりたいこともできなくなってしまう。

 一般に官僚は人事を大臣に左右されたくない。政治主導しようとすると、政治介入だとマスコミにリークして騒ぐ。そのやり方はかなりえげつないもので、マスコミへ政治スキャンダルのリークも官僚は行うことさえある。大臣に人事権があるのは当然なのだが、官僚はそれを行使させないようにするのだ。

内閣府事務次官に財務省出身者を配置

 こうした観点から見ると、新年早々に新聞報道された内閣府人事は、野田政権らしく財務省の完勝だった。ここまで完璧に財務省ペースになると、もう笑うしかない。

 政府は1月6日の閣議で、内閣府の浜野潤事務次官が退任し、後任に財務省出身の松元崇官房長を充てる人事を決めた。松元氏は財務省出身で、主計局ポストを中心に務めた後、内閣府政策統括官となった。財務省出身者が2001年の省庁再編で発足した内閣府の事務次官となるのは初めて、とも解説されていた。 

 内閣府はいろいろなことをやっている役所だ。庁舎も霞ヶ関各所に点在している。総務課、人事課、会計課など大臣官房と行政刷新会議事務局などが入っている内閣府庁舎は総理官邸の前、経済財政運営など旧経済企画庁や旧沖縄開発庁などが入っている中央合同庁舎第4号館は財務省の後ろ、構造改革特区担当室などが入っている永田町合同庁舎、そのほかにもいくつかの中央合同庁舎にも関係部署が入っている。

 松元氏の歩んできた経歴を見ると、内閣府にくる前は、財務省の主計局次長だった。主計局次長というのは、予算編成の責任者だ。かつて旧大蔵省時代、相手省庁の事務次官を相手にした次官折衝では主計局次長が対応した。内閣府に来てからは、旧経済企画庁のマクロ経済政策がほとんどだ。

 マクロ経済政策の部署は、財務省によって重要だ。そのため、財務省は局長級の政策統括官や課長級の参事官へも出向させていた。財務省の伝統は、経済見通しについて成長率を低めに見積もることだ。というのは、次年度の予算編成において、高めの経済成長だと税収の伸びが大きくなって予算シーリングを高めに設定せざるをえなくなり、予算編成において財務省のありがたみがへり、財務省の利害に反する。表向きは、慎重な税収見積もりで健全な財政運営のためというが、実際は各省へのにらみが効かなくなって財務省の権力の低下になるからだ。

 今回のように、増税をいうときにも、経済成長はせずに税収は伸びない、その一方で社会保障費は伸びるので増税というロジックでみんな騙される。

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