雑誌
古賀茂明×佐藤優
国を食いつぶす「霞が関 という病」

週刊現代 プロフィール

 高度成長は優秀な官僚たちのおかげだったとされてきたが、実は大幅な円安が真のエンジンだったという研究がある。官僚=優秀という「前提」が間違っていることに、国民はそろそろ気づくべきだ。

「過去問」解いてる場合か

佐藤優氏

佐藤 先だって、防衛省の田中聡沖縄防衛局長が不適切発言で更迭されましたが、いくらオフレコ懇談の場とはいえ、あんなレイプを想像させる発言をしたことに愕然としました。

 あれは官僚の劣化が極まったということに他なりません。特に防衛省の文化の問題です。はっきり言って財務省や警察庁からの出向ではない防衛省プロパーの幹部クラスはレベルが低い。もともと国家公務員試験の成績が良くないし、その一方で競争もないから、よほどの異常性癖の持ち主でもないかぎり局長になれる。古賀さん、通産省(現経産省)の同期は何人ですか。

古賀 僕のときは25人ですね。局長ポストは外局も入れて10くらいありますが、このうち同期で上がれるのは5~6人です。

佐藤 外務省もそのくらいの競争がある。ところが防衛省は競争が非常に少ないうえに日常的に使われているボキャブラリーの問題があると思う。外務官僚だって上品ではないですが、少なくとも日常的にレイプだとか買春だとか、そんな話はしない。防衛官僚はいつもそういうボキャブラリーで話をしているから、記者懇談の場でああいう発言が出てしまうんですよ。

古賀 まあ、昔はどこの省庁も似たり寄ったりでしたけど、時代が変わってそういうのが許されなくなった。そのなかで防衛省だけがそれに気づかないというのは、やはりお粗末極まりないですね。

佐藤 いずれにしても、あの防衛局長の不適切発言は日本の官僚史に残る官僚の劣化事件だと思いますよ。

古賀 そうですね。ただ、官僚の劣化という場合にはふたつ問題があって、ひとつは能力そのものの問題、もうひとつは何のために働いているのかという問題。能力についていえば絶対的レベルでも低下しているし、民間の人たちとくらべても相対的に落ちている。国際的な比較においては目も当てられない状況です。

佐藤 同感です。能力問題というのは官僚にとってタブーで、傲慢だとかツラ構えが悪いと批判されても平気ですけど、能力がないと指摘すると官僚の逆鱗に触れる。外務省の役人は、語学の話をされると怒るんですよ。外務官僚は語学ができるという世間常識は大ウソ、大誤解ですからね。

古賀 少なくとも英語だけは達者なんじゃ・・・・・・。

古賀茂明氏

佐藤 とんでもない。私が入省した当時は公電などの書類に日本語訳なんか一切ついてなかったですけど、10年くらい前から抄訳がつくようになった。それも、新聞記事にですよ。

古賀 じゃあ、ロシア語はもっとひどい?

佐藤 私が知る範囲でロシア語で外交交渉ができる駐露大使は一人しかいませんでしたね。忘れられないのは、ユジノサハリンスク日本総領事館が開館したときのことです。総領事がロシア語で挨拶をしたんですが、私の隣にいたロシア人に、「ロシア語で通訳してくれないか」って頼まれたんですよ。それくらいデタラメなロシア語だった(笑)。

古賀 語学のできない外務官僚が普通なら、経済政策を立てられない経産官僚も普通です。とくにいまはあらゆることを根本から見直さなければならない時代なのに、まったく対応できない。たとえば東京電力をどうするかについても、彼らはまず過去の大企業破綻の例を探すわけです。それこそ何十年もさかのぼって、チッソの例があったと。

佐藤 チッソ?時代も状況も全然違うのに。

古賀 そのチッソの事例を当てはめてどうか、次にダイエーはどうか、JALは・・・・・・というように過去の破綻例を集めて一覧表をつくり、それを眺めてウーンと唸っているんですね。

 まず東電をどうするのかを決めて過去の例を参考にするならわかりますけど、最初から過去の例に答えを見つけようとしてもうまくいくはずがない。これは結局、役所に入ってくる人の勉強の仕方が参考書を覚えて過去問をやって、というパターンだからです。

佐藤 理解しなくても、覚えさえすればいい。

古賀 いまは原発事故やら何やらで、以前とは前提が違っていて白紙から新しい答えを考えないといけないのに、それには何の知恵もない。要するに現状に対応する思考力がないんです。

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