特別読み物 大切に育てたから、いまがある
この親にしてこのプロ野球選手
おかわりくん 栗原 唐川 今江 館山 平野 東出

 息子がプロ野球選手で大活躍している。うらやましいと誰もが思うだろう。いったい、どんな風に育てるとそういう子ができるのか。いまをときめく7人のプロ野球選手の親御さんに聞いてみた---。

毎日、練習を見に行った

「おかわりくん」こと今季のパ・リーグ本塁打王、中村剛也(28歳・西武ライオンズ)と、父・重一氏の姿は、一目で親子とわかるほどよく似ている。そしてそれは、父から息子への野球指導の原点にもなっている。

「体重を落とすな」

 中村も所属したリトルリーグの監督だった重一氏は、4295gで生を受けた息子に口をすっぱくして、言い聞かせた。

「僕も子供の頃からこの体型で野球をやっていて、他の子よりよっぽど動けた。太っているというより、体が大きいという感覚です。いくら食べても動ければ問題ない。子供たちには『体重があった方が打球は飛ぶぞ』と教えていました」

 毎晩、食卓の真ん中に大皿が置かれると、家族7人の箸が四方から入り乱れ、残飯はほとんど出なかった。母親の久美さんによれば「健啖は中村家の家系」だという。だから母親にとっても、中村の体型は誇らしいものだった。

「でも剛也が学校から肥満児扱いされて、何度か母子で保健室に呼ばれたんです。食生活の注意や運動をしろとか言われましてね」

 だが、母は強い。

「『わが家ではウチの子供を大きく育てようとしているだけです。こんなことで二度と呼び付けないでください』とキッパリ言ってやりましたよ(笑)」

 名門・大阪桐蔭高校に進学したのも、大阪府大東市の実家から徒歩圏内だったからというのが大方の理由で、中村にとってそれが、最大の幸運でもあった。

 建設業を営む重一氏は、自宅で仕事を終えると必ずグラウンドに向かう。

「6時にはグラウンドにいるような毎日でした。試合を1回見るより、練習を見たほうがチーム内で息子がどの位置にいるかわかるんですよ」

 練習を見て気付いたことは、夕食の食卓を囲みながら直接息子に言って聞かせた。二人の関係は、落語家の師匠と住み込みの弟子のそれに近いかもしれない。

「弱音も文句も言わない子でした。『疲れた』とか、『しんどい』とかすらほとんど聞いたことがない」

 そんな中村が一度だけ、「試合を休ませてほしい」と言ったことがある。小学校高学年のころだ。

「当時彼は捕手だったんだけど、代わりがいなくてね。『明日学校休んでいいから、この試合だけ出てくれ』と頼んで、出場してもらったんです。家に帰ってみたら熱が40度あったんですよ」