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北朝鮮大崩壊→暴発そして日本の惨劇
200万人の難民、サリン搭載ノドン、テポドン・・・

「5029」作戦が発動

 前項では、金正日総書記の死去により、北朝鮮国内では後継者・金正恩の暗殺をも含んだ内乱が起こる可能性を詳述した。北朝鮮が暴走すれば、その混乱はわれわれ日本人にとっても、決して対岸の火事では済まされない。

 そもそも、日本と北朝鮮の間に国交はなく、'98年に日本上空にテポドンが飛来して以来、拉致問題などでたびたび対立。日本海を挟んでわずか1000km足らずの隣国であるにもかかわらず、日本人にとって北朝鮮は〝近くて遠い国〟であり続けている。

 多くの日本人が北朝鮮という国家に対して抱くイメージは、「何をやってくるか予測不能な国」というものだろう。実際、これまで北朝鮮はおよそ国際社会の常識では理解できない行動ばかり起こしてきた。

 金正日総書記の後継者として、金正恩が国際舞台に登場し始めた'09年以降に限っても、'09年4月にミサイル発射実験、5月に核実験を強行。'10年3月には韓国の哨戒艦『天安』を撃沈し、40名以上の乗組員が行方不明になった。続く11月にも、韓国・延坪島をだしぬけに砲撃し、韓国軍兵士および民間人の計4名を死亡させている。

 世界にとって、もちろん日本にとっても不幸なことに、今回の金総書記の死去でこうした北朝鮮の特異な国家体質は変わるどころか、むしろエスカレートする危険性を孕んでいる。

 というのも、金日成の後継者に内定した32歳から実際に指導者となる53歳まで、実に20年間もの歳月をかけて着実に準備してきた金正日に対し、正恩はまだ20代と若く、後継内定から3年弱しか経過していない。北朝鮮という国家は軍部の存在抜きに語れないが、その軍部での基盤が弱い正恩に、軍人たちを指導できるとは考えにくい。事実、前項でも紹介したように、正恩と軍部の関係は、すでに修復不能なほどに悪化しており確執も起きている。正恩が金正日という後ろ盾を失ったいま、軍部はさらに勢いづくばかりだ。

 関西大学教授の李英和氏もこう危惧する。

「もともと北朝鮮は、少なくとも'12年いっぱいは、ロシアのプーチン首相とメドベージェフ大統領のように正日氏と正恩氏の『双頭体制』で国家を統治する予定だった。ところが今回の正日氏の急死により目論見は崩れ、正恩はいわば〝よちよち歩き〟のまま国家運営に当たらなければならなくなったのです」

 金正日のように北朝鮮国内では絶対的な権力を持つ指導者でさえ、軍部のクーデターを恐れ、反乱の疑いありとなれば見せしめのように粛清することで、なんとか軍部を操ってきた。それなのに、よちよち歩きの「子供」がトップに立つ。今回の事態は、当の北朝鮮にとっても未知の体験なのである。

 それが、日本にどういう影響を及ぼすのか。きっかけとなるのが米朝の対立だ。北朝鮮軍部の強硬派が権力を手にした時、真っ先に対抗するのは、世界の警察を自任する米国である。米国防総省幹部が言う。

「もし、北朝鮮の実権を軍の反米強硬派が握るようなことがあれば、われわれとしては座視するわけにはいかない。なぜなら、北朝鮮は数個の核爆弾および核物質、さらには弾道ミサイルを所有しているからだ。北の混乱に乗じて、これらの兵器がアルカイダやイランといった反米勢力の手に渡れば、米国の国防にとって大きな脅威となってしまう」

 今回のような北朝鮮有事に備え、米軍はかねてから作戦計画5026~5030まで、4通りのプランを用意してきた。各作戦の概要は以下の通りだ。

●5026・・・北朝鮮の核施設を限定的に爆撃する。

●5027・・・北朝鮮軍の南侵(韓国への侵攻)が明白となった段階で進撃し、北朝鮮主要部を占領する。

●5028・・・欠番

●5029・・・北朝鮮の内部崩壊に際し、核・ミサイル施設を制圧する。

●5030・・・軍事力や謀略により揺さぶりをかけることで、朝鮮人民軍幹部を動揺させ、体制の内部崩壊を促す。

 これら作戦計画のうち、金総書記死去によって注目が集まっているのは「5029」である。在韓米軍高官が、その内容を解説する。

「この計画は、北朝鮮の内乱により、軍部の強硬派が国内の核物質および核兵器を入手しそうになった場合、米国の特殊部隊や海兵隊を投入し、核を奪取するというものだ。また、核を奪取する時間的余裕がない場合は、こちらから核施設への先制空爆攻撃を行うこともあり得る」

 北朝鮮と米軍の圧倒的な戦力差を考えれば、作戦は容易に完遂できるように思える。だが、軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏はこう警告する。

「米軍も、偵察衛星などを使って主だった核施設の所在は把握しています。しかし、山岳地帯の地下などに隠された核物質は簡単には発見できない。しかも、山岳地帯に隠れた北朝鮮軍がゲリラ攻撃を仕掛ければ、戦闘が予想以上に長引く恐れもあります」

 金日成主席が指揮したとされる抗日パルチザンが、圧倒的な戦力差にもかかわらず、山岳地帯の地の利を生かし、日本軍を苦しめたように、精鋭ぞろいの米特殊部隊であっても、山間部でのゲリラ戦は苦戦必至だろう。

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