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2012年大変動 世界と日本はこうなる 
ポール・クルーグマン(ノーベル経済学賞受賞)ほか、著名学者・一流研究者・トップアナリストがすべてに答える

全国民必読 先んずれば人を制す

経済恐慌は? デフォルトする国はどこか? 円高60円台突入は? 日本国債暴落は? 株価は? 中国経済は大丈夫か? 野田総理はいつやめるのか? 解散総選挙は?

なにが起きてもおかしくない。そんな恐ろしい年になる。まずは目を見開いて、来るべき未来を直視することから始めよう。真実を知ることができるのは、知る勇気を持つ者だけなのだから。

民衆が銀行に殺到する

 2011年の世界経済を振り返ると、悪夢のような「大事件」が立て続けに起こった年だった。

 ギリシャに端を発する国債危機がドミノ倒しのように欧州各国に伝播し、ついにイタリア、フランスまでを呑み込んだ。

 超大国アメリカの国債も戦後初めて格下げされ、基軸通貨ドルの信頼に疑問符がつけられた。

 2012年はその延長線上にある。各国政府は抜本的な解決策を打てず、問題は先送りにされたままだ。その間に先進各国の経済は疲弊、不況の影も色濃くさしてきた。

 米欧の「国債クラッシュ」危機は予断を許さない。ウォール街発のデモが世界数十ヵ国に広がりを見せるように、不況と格差にあえぐ庶民の怒りも爆発寸前まで沸騰している。

 2012年。経済恐慌はあるのか、デフォルトする国はどこか。日本国債の暴落もあるのか。

 '08年のノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏は、本誌の取材にこう語った。

「2012年の悲観シナリオを言えば、まずギリシャがユーロ圏から追放され、イタリアとスペインでは、民衆が銀行に殺到する。ユーロ全体が崩壊し、国債がいくらの価値になるか誰にもわからなくなる。

 そうなると世界中の金融市場が凍結される。ヨーロッパの銀行がそのシステムの重要な部分を担っているからだ。そして、世界経済は完全なメルトダウンに陥る。1931年と同じ状況、つまりは、世界大恐慌の完全な再来だ。それが起こる確率を言うのは難しいが、常にこんな最悪のシナリオを頭に入れておく必要がある」

 ギリシャ国債は100%デフォルト(債務不履行)する。問題はギリシャの"死に方"で、市場を不意打ちする形でギリシャが"即死"したり、ギリシャのトップが突如ユーロ脱退を表明すれば、それが引き金となって国債クラッシュの連鎖が起きて、世界経済は同時不況の底へ突き落とされる---。

 これが2011年に、経済専門家たちが恐れたシナリオだった。しかしいまや、ギリシャ以外の欧州各国にも"即死"の可能性が出てきた。欧州はまさに一触即発の火薬庫と化した。

 クルーグマン氏が言う。

「これからギリシャ国債のデフォルトは間違いなく起こるだろうが、ポルトガルでもその確率は非常に高いし、アイルランドでも同様だ。政府は『ない』と言い張っているが、イタリアとスペインでさえ、もし欧州中央銀行からの助けがなければ、デフォルトする可能性がある。

 そしてイタリアやスペインがデフォルトすれば、ユーロが崩壊する。その時は、欧州の大手金融機関が破綻し、『第2のリーマン・ショック』が起こる可能性が十分にある。憂鬱になるほどに、その可能性はある」

 ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン・・・。まとめてPIIGS(豚)と揶揄される"欧州の問題児"5ヵ国は、2012年という不安の年を生き延びることができるのだろうか。

 日本総研理事の湯元健治氏は「年初から危険なイベントが続く」と指摘する。

「まず2月~4月にイタリアの国債が1000億ユーロ(約10兆円)規模の大量償還を迎えるなど、2012年は年初から各国で立て続けに巨額償還が待ち受けている。そのタイミングで大手格付け会社がユーロ圏の国債を格下げする検討をしているから怖い。

 一番インパクトが大きいのは、フランス国債が2段階引き下げられるケース。フランス国債の金利が急上昇(価格は急落)するだけでなく、その時はPIIGS各国も格下げされるので、国債が軒並み暴落する。

 ドイツ、フランスがギリシャ支援の枠組みを用意できなくなり、ギリシャがユーロから離脱。イタリアとスペインも離脱との見方が強まって、マーケットではさらに両国の国債が売り浴びせられる。そうなればPIIGSの国債を持つ欧州の大手金融機関が破綻し、世界同時恐慌になる。これは30%の確率で起こると思う」

米国と日本のデフォルトに注意

 こうした事態を避けるため、欧州の2大大国であるドイツとフランスが中心となって、対策が講じられている。しかし、「自分の国の税金で他国を助けることに躊躇する」ドイツと、「自分の尻にまで火がついて危機打開に躍起な」フランスの間で、完全な"共闘"は期待できない。

 さらに2012年4月にはフランス大統領選の第1回投票が控えており、この結果次第ではユーロ崩壊の契機となる可能性がある。

 「4月危機」の可能性について、みずほ総研シニアエコノミストの山本康雄氏はこう分析する。

「サルコジが勝てなければ、フランスがユーロ援助から、自国経済重視の方針に転換し、国債危機がさらに不安定な状況に追い込まれかねない。私はフランス国債の金利が"危険水域"と言われる7%を超える可能性もあると考えている」

 2012年は春先までこんな"綱渡り"が続く。だが実は、最も巨大な火種は欧州とは別のところにあるとの意見もある。同志社大学大学院教授の浜矩子氏は「米国と日本のデフォルトに注意」と警鐘を鳴らす。

「リーマン・ショックの時は金融危機がトリガーとなったが、今回は財政破綻がそれに当たる。すでに目に見える形で財政危機が騒がれているのは欧州だが、実は財政問題がより深刻なのは米国と日本だ。この両国はいますぐにでも国債が暴落してもおかしくない。

 日本国債は国内で保有しているから売られることはないといわれるが、国債の格付けが引き下げられれば日本の金融機関が手放し始め、あっという間に暴落する。米国債もさらなる格下げがあれば、同じ道を辿る。いずれかの国債暴落が、世界同時恐慌の最後の一押しになるのではないか」

 米国債については2012年の年末に予定されている大統領選がキモになる。

「オバマ大統領が負ければ、政治が混乱して財政健全化の見通しが立たなくなり、米国債が再び格下げされる要因になる」(前出・山本氏)からだ。

 一方の日本国債については、「明日にも暴落する可能性がある」---そう指摘するのは、ニッセイ基礎研究所チーフエコノミストの櫨浩一氏だ。

「欧州の財政問題は日本の問題でもある。ギリシャが危ない、イタリアが危ないと来て、この連想が日本に来ないという保証はない。逆に言えば、世界最悪水準の財政問題を抱える日本が安心だと考えている人はまずいない。

 2012年は新規に発行する日本国債が売れ残る"未達"が起こるかもしれない。そうなれば一斉に日本国債からの『逃避』が始まり、大暴落するだろう。それが起きるのは20年後かもしれないし、明日かもしれない」

 PIIGSにフランス、アメリカや日本までもがデフォルトする危機にあるのが2012年なのだ。

 そしていずれかの国がデフォルトし、世界同時恐慌になれば、その"震度"はリーマン・ショックどころではないというのが、専門家達の共通見解である。

「世界的にマネーが回らなくなると、欧米主要国以外にも影響が出てくる。特に経常赤字のハンガリーなどの東欧諸国、ベトナムなどの一部のアジア諸国が資金ショートしてIMF(国際通貨基金)の管理下に入るシナリオもありえる。ブラジル、ロシア、韓国もかなり厳しい苦境に追い込まれるはずだ」(前出・山本氏)

 このとき日本は、世界はどうなっているのか。続けてみていこう。

円高 円台突入は? 株価は?

 2011年、自動車、電機メーカーといった日本を代表する大手企業は悪夢に悩まされ続けた。政府の市場介入にもかかわらず、ついに"戦後最悪"の水準を突破したとどまることを知らない「超円高」だ。

 ドル円相場が1円でも円高に振れるだけで、利益が何十億円も吹き飛ぶ。経営者たちが苦渋の顔で赤字決算を発表するシーンが、テレビ画面に次々と映し出された。

 これに呼応するかのように、株価も低迷。株式市場ではホンダ、パナソニック、ソニーといった優良銘柄が軒並み年初来最安値を更新した。

 苦しむ日本勢を尻目に、韓国勢はウォン安を利用して、世界で急拡大した。

 2012年も円高は続くのか、株価の復活はあるのか。

 BNPパリバ証券投資調査本部長の中空麻奈氏の見方はこうだ。

「円高の要因は欧米の財政危機が収束しない中で、世界の投資マネーがリスクを回避し、相対的に"安全"と思われている円に向かうという事情がある。この状況は大きく変わらないので、2012年も円高は続く。また日本の株式市場は欧州の景気を先取りするので、こちらも欧州懸念の連想売りで株安が止まらない。しかも、円高だから製造業がキツイ、それなら株は売りだという悪循環も生まれる。

 為替はドル円相場は75円から80円台をウロウロし、ユーロ円相場は90円台の時代が来る。日経平均も1万円の回復は望めず、8000~9000円水準にとどまるでしょう」

 専門家の見方はおおむね、これと変わらない。

「欧州が良くなるシナリオが考えられず、『なんとか持つかな』という程度。米国も年末の大統領選が終わるまで共和党と民主党が対立しあって、抜本的な経済対策は打てない。となれば日本は輸出もだめ、国内消費も低迷する。

 為替は75円を一瞬突破することはあっても、基本は80円近辺で動く。日経平均も8000~8500円と横ばいでしょう」(前出・櫨氏)

「欧州圏はドイツが1%のプラス成長になるが、フランスはゼロ成長、イタリアとスペインはマイナス成長になる。米国も住宅価格がまだ値下がりしているし、借金の返済ができない国民が多いため、急速な回復は望めず、失業率が8%を切るのも難しいだろう。

 欧米の株式市場は2011年より値下がりする。円は対ユーロで90円台、対米ドルで70円台半ばから後半の円高になると思う」(前出・湯元氏)

 楽観シナリオがないわけではない。

 欧州はまだしも、米国経済に復調の兆しが見えれば、その恩恵にあずかる日本企業の株価が上昇することはありえるからだ。2012年末には米大統領選を控え、オバマ政権がなんとしてでも経済のてこ入れをするだろうから、期待は膨らむ。

「ただ、そう簡単な話ではない」と第一生命経済研究所首席エコノミストの嶌峰義清氏は語る。

「財政再建を約束した以上、公共事業などにジャブジャブとカネを出すのは不可能。金利も2013年まで引き上げないと約束しているので、残された景気浮揚策は、貨幣の流通量を増やすQE3(量的緩和第三弾)しかない。FRBのバーナンキ議長がQE3を実行できれば、米国の株式市場が上向き、株で資産運用する米国民も消費を活性化する好循環が生まれる。

 一方でこれは市場にカネをばら撒くため、インフレを起こす危険をともなう。ガソリン価格、食料品価格が上がれば、ただでさえ格差が拡大していることに怒っている低所得者層が、オバマ批判の声をあげる。オバマの決断次第だが、これができなければ米国はGDPがプラス0・2%程度の低成長しかできないジリ貧となるだけだ」

日経平均7000円割れの悪夢

 バーナンキ議長の知己であるノーベル経済学賞受賞のクルーグマン氏も、
「彼(バーナンキ)はQE3をやるべきだとわかっているし、それを実行するだろう。ただそれは十分な規模では行われない。彼はFRBの独裁者ではないので、何をするにも限界がある」

 と予測する。要するに景気浮揚策が行われたとしても、なんとも中途半端な結果に終わる可能性が大なのだ。

 悲観シナリオが実現すれば、想像もしたくない惨状がやってくる。

 それはもちろん、財政危機という爆弾を抱えた国のデフォルトを発端とする、世界同時恐慌のことだ。

 前出・山本氏は、日本経済、そして為替、株価への影響をこう見る。

「もし危機が来なければ、日本は復興需要が利いてくるため、GDPが0・8%ほど押しあげられ、失業率も4%くらいまでに多少改善。団塊世代が65歳をむかえて大量退職するため、若年層の雇用が増える可能性もある。

 ただ世界同時恐慌となれば、もちろんマイナス成長となる。日経平均株価も本来なら8000~9000円台で推移するところが、7000円を割る事態も考えられる。

 さらに世界的に市場が崩れると、日本の運用会社が投資信託に組み込んでいた世界の株式、債券を売らざるを得なくなり、『外貨モノは売り、円モノは買い』という流れが加速するため、危機がないケースでユーロに対して95円程度だろうが、危機がある場合は80円台まで急激に円高が進む可能性がある」

 前出・浜氏は、より厳しい相場観を持つ。

「世界同時恐慌になれば、世界同時株安となる。日本でも一時的に取引が停止されるほどのパニック状態になりかねず、日経平均株価は現在の半値くらいまで急降下する事態も想定しなければならない。

 通貨は米ドルでさえ『売り』にさらされる一方で、円はそれでも安全逃避先として『買い』が進む。世界中のマネーが円に逃げ込んでくるので、1ドル=50円に向かって超円高が進行していくでしょう」

 ハイパー株安とハイパー円高の組み合わせである。

 虎の子の貯金を「優良企業」に投資しておきながら、2011年の株安で、大損を被った中高年は多い。いつかは値上がりするはずと"塩漬け"にしている人もいるだろうが、2012年中にそんな好機が来るとは期待できそうにない。世界同時恐慌になれば、資産が半分以下になってしまう恐れもあるのだ。

 では、日本人はこれからどのように資産防衛すればいいのか。

 「基本的な考え方」を、前出・浜氏はこう唱える。

「恐慌の可能性があるときは、『慌てず、欲張らず、損をせず』ということを心がけておく必要がある。儲けを増やそうと思って動くことが、一番のリスクになる。特にいけないのが借金をしてまで、投資をすること。資産がパーになるほどの、取り返しのつかない事態もありえます。すでに借金をして投資をしている人は、まずは借金の清算をすることから始めるべきでしょう」

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