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憤怒レポート第3弾 これぞまさに「天国」
公務員の「おいしい定年延長」を許すな!

休日に自宅近くで直撃。本誌の質問に正面から答えた江利川氏。定年延長については必要性を滔々と話した

 民間企業の65歳雇用義務化に、経団連は「限界がある」などと音を上げているが、公務員はどうだ! 定年後も現役時代の70%の給与を保障され年収1000万円超もあり得る---国民をバカにした案が政府に提出されていた

埼玉県内にある江利川氏の自宅。江利川氏はここからバスと電車で通勤。「ハイヤーは嫌い」なのだという

「今回、人事院が意見書として提出した国家公務員の定年延長案は絶対に許してはなりません。一見、民間企業で進められつつある65歳雇用延長策に合わせたように見えますが、内容は似て非なるものです。これでは公務員の好待遇だけが膨らみ、『官民格差』がさらに進んでしまう。人事院のやり方は本当にズルい」

 こう憤るのは古賀茂明氏(56)である。古賀氏は元経済産業省のキャリア官僚。急進的な国家公務員制度改革を提案して’09年に解任され、その後も同趣旨の発言を続けたため退職勧奨を受けて、今年9月に退任したばかりの論客だ。ベストセラー『日本中枢の崩壊』(講談社)の著者でもある。古賀氏が批判するのは、人事院が密かに進めている国家公務員の定年延長案である。

 公務員問題を追及するジャーナリスト・若林亜紀氏が解説する。

「定年延長案は、人事院の江利川毅総裁名で出された意見書で、国家公務員の定年を段階的に65歳まで引き上げるよう提言しています。理由は、公的年金の報酬比例部分の支給開始年齢が’13年度以降、段階的に65歳に引き上げられること。そして、民間企業に従業員の65歳までの継続雇用を義務づける方向性が見え始めたことなどです。しかし、マスコミはあまり大きく取り上げませんでした」

 というのも、同意見書が野田佳彦首相と衆参両院議長宛に提出されたのは、’11年9月の国会閉会の日。人事院勧告に付け加える形で「こっそり出された」(全国紙政治部記者)からだという。

 なぜ、そんな姑息な手を使って公務員の定年延長を図るのか。それは公務員にとってあまりにおいしい内容で、国民の憤激をかうことを恐れるからだろう。

 国民に大増税を押しつける一方で、自分たちの利権・好待遇をしゃぶり尽くしている。そんな公務員たちを批判する「公務員天国」追及キャンペーン第3弾は、定年延長でさらなるウハウハを企む人事院の小狡いヤリ口を暴いていこう。

またも事務次官の特権が!

国家公務員の定年延長について批判を繰り広げる古賀氏。「公務員の身分保障を延長するだけだ」と厳しい

 人事院が提案する定年延長案は、大きく分けて以下の2点からなる。

①65歳まで定年を延長する。
②60歳で「役職定年」をもうける。

 ①について意見書では、65歳まで定年を延長した場合、60歳以降の年間給与(年収)を「60歳時点の70%にする」としている。その根拠は、民間企業の一部でスタートしている「再雇用」でも、年収は現役時代のほぼ70%だからだという。しかし、前出・古賀氏はその大ウソを指摘する。

「民間の再雇用者が手にする現役時代の70%の年収とは、50歳以降に大幅に下がり続けた最終年収額が基準で、それほどの金額にはなりません。それに対して公務員案は、60歳までずっと上がり続けた最終年収の70%を保障するという。要するに、一見、下がるように見えますが、公務員の高給は65歳まで続くのです」

 現在、局長クラスの年収は1700万円超と人事院が公表している。つまり、定年延長で年収が70%になっても、1000万円超の年収が保障される官僚がゴロゴロ出る可能性が高いのだ。

 この点について、経済ジャーナリストの荻原博子氏もこう話す。

「民間企業の給与は普通、50歳ぐらいがピークで定年時の給料は低い。そして平均年収にしても、民間が約450万円。対して公務員は約700万円と言われる。60歳以降の年収が現役時代の70%になるといっても、官民格差は歴然としている」

 そもそも民間企業の定年延長など実現性に乏しい。経営が苦しくてそれどころではないのだ。厚生労働省によると、過去1年間に定年退職した人のうち継続雇用された人が73.6%、希望しても継続雇用されなかった人が1.8%だという。が、実際には、「継続雇用されても、現役時代の職種と無関係な職場に回されて1年程度で辞める人が多いのが現実」(前出・荻原氏)なのだ。厚労省は12月14日、企業の65歳継続雇用の義務化を提案したが、経団連は、「全企業が実施するには限界がある」と即座にはねつけている。

経産省の安達事務次官の自宅。世田谷区内の高級住宅地にある。先日の直撃時には、走って逃げてしまった

 公務員の定年延長のメリットはまだある。前出・古賀氏が続ける。

「公務員は再雇用ではなく定年の延長なので、正職員という身分が続く。だから、家賃の安い公務員住宅に住み続けることができる。退職金にしても、民間の再雇用の場合は、退職時に退職金を出し、後は期限付きの雇用なので、再雇用では退職金が出ないケースもある。しかし、公務員は定年の延長なので、勤続年数が長くなり、退職金も増えていく。5年延長すれば、5年分退職金が増えるのです」

女性宮家の創設問題などで注目を集める宮内庁の羽毛田長官の自宅。埼玉県内にあり、敷地面積は230m2

 ②の「役職定年」はどうか。人事院は、60歳を超えると課長・部長・局長には就任できないとしている。しかし、ここにもとんでもない例外をもうけている。官僚の最高峰役職である「事務次官」については適用しないというのだ。つまり、事務次官は65歳まで就任が可能で、公務員として最高の給与が最後まで保障されるというのだ。いったいどんな了見なのか。

 本誌は、人事院の給与局に質した。すると、こんな回答が・・・・・・。

福島第一原発の事故対応の不足で更迭された経産省の松永前事務次官の自宅。退職金は7500万円だった

「事務次官は厳しい選抜を経て最終的に到達する国家公務員のトップです。その過程で培った知識や経験を、65歳になるまで活用されたほうが、公務の能率の向上に結びつくと考えたので対象外としました」(給与局生涯設計課)

 事務次官の高い能力を自慢されたところで、我々の怒りは高まるばかりだ。そもそも「公務員=怠け者」という定説もある。そんな怠け者の定年後を予想させる、ある制度がある。現在、公務員に実施されている「再任用制度」だ。

「人事院の3月の発表によれば、国家公務員の約60%が退職後も仕事に就いています。そのうち約4分の3が、元いた役所に雇われている。これが再任用制度です」(前出・若林氏)

 この再任用の現場で、OBたちの呆れた実態を前出・若林氏は目撃している。若林氏は厚労省の外郭団体に勤務していた経験がある。

「外郭団体の職員も再任用されますが、彼らには仕事がありません。霞が関では実務は外注してしまうので、OBはぶらぶら遊んでいる。再任用されると、個室をあてがわれる。個室に隔離して後輩たちをコキ使わせないためです。OBの中には、私用の資料を探すために後輩を使う人もいました。逆に職員がOBに仕事を頼んだりすると、『再任用された人に仕事を頼んではいけない』と叱られたりするのです」

 公務員の定年延長の〝実現後〟が推して知れようというものだ。果たして、現役時代から民間に比べて高給に恵まれている公務員に、定年延長など必要なのか。

「公務員の定年を延長するにしても、民間並みの給与水準にするか、あるいはそれ以下にするべき」(前出・若林氏)という意見が至極真っ当であろう。

 ちなみに、現役の事務次官の資産状況の一端を知るために、本誌は、ここ最近世間の話題をさらった事務次官とOBの自宅を訪ねてみた。写真にあるとおり、訪ねたのは、経産省の安達健祐事務次官(59)、宮内庁の羽毛田信吾長官(69)、8月に「更迭」されながら7500万円もの退職金をもらった松永和夫前経産省事務次官(59)だ。ご覧の通り立派な邸宅が並んだが、安達氏と松永氏は現時点で無借金。

 羽毛田氏はローンは組んでいたが敷地面積230m2を超える豪邸だった。確認したのは一部ではあるが、定年まで住宅ローンを抱えるのが一般的なサラリーマンから見れば、官僚はやはり「天国」なのである。

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