町田徹「ニュースの深層」
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また浮上した「東電国有化」の実態は、重い国民負担を招く官僚の失策隠し

2011年12月27日(火) 町田 徹
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〔PHOTO〕gettyimages

 いったい、これで何度目だろうか。2011年も大詰めを迎えた先週、またしても、東京電力の国有化問題が世間の注目を集める事態になった。直接のきっかけは、大手紙各紙が、「政府と東京電力が同社の国有化の調整に入った」と報じたことである。

 ニュースソースとして経済産業省のリークが取り沙汰されていることなどお構いなしに、「国有化」と書くことで、各紙の記者たちが東電から経営権をはく奪して鉄槌を降したかのような錯覚に捉われているとすれば、ピントはずれも甚だしい。

 一口に「国有化」と言っても、様々な選択肢があるが、各紙が報じている「東電国有化」は、東日本大震災直後に、財務省、金融庁、経済産業省が犯した判断ミスが表面化するのを防ぐための失敗隠しに過ぎない。結果的に、事実上破たんしている企業を延命させ、「東電」という不良債権の処理を先送りするものだ。

 当然ながら、口には苦いが、事態を解消できる良薬は、自由主義経済の原則に従って、破たん企業を破たん企業らしく扱う法的整理に委ねることだ。そうすれば、分担されるべき責任は分担されるし、ゾンビ企業が経済活動を続けて不良債権を増やす矛盾にも終止符が打たれる。

 逆に、法的整理をしなければ、政府・東電が進める安易な福島原発の事故処理に歯止めがきかなくなる。そのコストは、国家予算の2~3倍の200~300兆円規模に膨らみ、被災者を含む日本国民の肩に重い負担としてのしかかることになる。対応が遅れれば遅れるほど事態が深刻になる構図は、1990年代のメガバンクの不良債権問題とそっくり。最善の策は、問題の越年を許さず、直ちに処理することである。

 一連の報道で"特ダネ"を放ったのは、21日付朝刊で「東電、実質国有化 官民で総額2兆円支援へ」と報じた読売新聞だ。同紙は、歴史的に原発推進論で知られる。

 同日付の夕刊で、朝日新聞は「東電、事実上国有化へ 官民で2兆円支援」と判で押したような追っかけ記事を掲載。日本経済新聞も「東電、実質国有化へ 値上げ・経営刷新前提」と追随した。

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