2011.12.28(Wed) 本郷 明美

「日本人は何を食べてきたか」第5回 森鴎外
「あんこ茶漬け」が好物のスイーツ文豪

筆者プロフィール&コラム概要

好んだのは、筍、ナス・・・「技巧のない」野菜料理

 いかついお顔に口髭、鋭い視線は何を見るのか。今に残る写真の森鴎外は、いかにも「文豪」、これぞ「文豪」。国語の時間に習いました、「高瀬舟」「舞姫」・・・。まあ、ドイツで恋に落ちたりはしたものの、武家に生まれ、軍医でもある鴎外先生は生まれながらに質実剛健。息子さんもこう言ってます。

 「家でも多く軍服で過ごし」、「身のまわりすべてキチンとして」、「自分でごみを拾って歩くほど神経質」(森於莵『父親としての森鴎外』)。

 すごいっ、イメージ通りの鴎外先生。普段の食生活もまた、きっちりと自分の規則を持っていた。

 美味しいご馳走が嫌いなわけではない。頻繁に子供たちを『精養軒』や『神田川』に連れていったりもした。だが、「本当の一流の料理屋以外は、家庭料理がいい」というのが鴎外の信念。さらに、肉類より野菜、とくに「技巧のない野菜料理」が好きだった。

 例えば、「じゃがいもをゆでて醤油を添えたもの」。ホクホク、おいしいですよね。その他、筍の煮たもの、キュウリ、ナスなど本当に野菜そのものの味を楽しむ。

 鴎外の好きな「簡単料理」はまだまだある。もともとは妻の実家の流儀だったという、「漬物にしょうゆをかけて、さらにかつおぶしをかけて食べる」のもお気に入り。妻がいなければ、「ごはんに醤油をかけて食べる」ので満足。

 出張のときは、卵焼きと梅干以外は口にしない。半端な料理を食べるなら、食材そのものに近い「技巧のない」ものがいい。鴎外の「食」論は、極めてわかりやすい。最高の贅沢を知っていた人なのかもしれない。

アンパン大好き スイーツ文豪

 ここまでは私、写真の印象通りでございました。ところがみなさん、いいですか。鴎外先生の好物は「あんこ茶漬け」なんです。

 「甘い物を御飯と一緒に食べるのが好き」で、「お饅頭を御飯の上に乗せてお茶をかけて食べたりする」(『晩年の父』小堀杏奴)

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