雑誌
特別対談 二宮清純×清武英利
ああ、読売巨人軍

(左)二宮清純氏×(右)清武英利氏

 東海大の菅野は浪人してまでこんなチームに入りたいんだろうか。内紛と専制、そして追従のオンパレード。他者への敬意、感謝の喪失。スポーツの持つ魅力と対極にあるこのチーム。明らかに病んでいる。

横浜・村田獲得でいいのか

 二宮 清武さんが代表兼GMを解任され、新たに同職に就いたのが副代表だった原沢敦さんです。原沢さんは横浜からFA宣言した村田修一の獲得に乗り出しました。村田本人も「まずは優勝争いしたいというのが僕の中では第一」と乗り気でした。予想通り入団が決定しましたね。

清武 最初から決まるだろうと思っていました。僕がこれまでやってきた育成路線を否定する意味合いもあるのでしょう。

二宮 清武さんが引き続きGMだったら村田獲得には手を挙げなかったと?

清武 僕は彼の獲得には極めて否定的でした。これについては渡邉(恒雄)会長も、桃井(恒和)オーナー(現社長)も、同じでした。

二宮 どんな理由でNGだったんですか?

清武 ほら、髪に剃り込みとか入れていたじゃないですか。渡邉さんや桃井さんは要するに紳士らしくないと。生え抜きを育てる計画もあり、バッターとしても得点圏打率の低さとかマイナス要素がたくさんありました。桃井さんも「これじゃ難しいね」と言っていたくらいですから・・・・・・。

二宮 とはいえ、今季、巨人は9人の選手がスタメンでサードを守った。いずれも帯に短し襷に長し。期待された3年前のドラフト1位・大田泰示がまだ育っていないことを考えると、この補強は妥当なのでは?

清武 僕はFA補強はあってもいいとの考えです。それは外国人についても同じ。ただ計画的じゃなければダメだと思うんです。

二宮 確かに清武さんが指摘するように、一時期、巨人は大艦巨砲主義でした。費用対効果ははかばかしくなかった。

 その反省から清武さんは育成路線に舵を切り、その結果、'08年・山口鉄也、'09年・松本哲也、'10年・長野久義、'11年・澤村拓一と4年連続で新人王を出しました。渡邉さんですら、〈「育成選手」制を作ったことなど清武君の功績は認めています〉(11月12日付談話)と手腕を評価しています。

 1990年代中頃から'00年代前半にかけて巨人の強化策はいびつでした。私はチーム強化はドラフト、外国人、FA、トレード、育成の5つの柱で成り立っていると考えます。

 それぞれのバランスを図に表すとなるべく正五角形になるようなかたちが望ましいのですが、一時期は育成部門が全く機能していないように映りました。二軍のコーチに言わせれば、「育てても一軍に空いているポジションがない」ということになるのでしょうが・・・・・・。

清武 確かにあの頃は四角形の状態でしたね。それを五角形に近づけようと頑張ってきたわけです。そのために育成選手制度もつくりました。

 僕が代表に就任したのは'04年です。その年、一場問題(明大・一場靖弘に対し、複数の球団が裏金を渡していた)が発覚し、その影響で翌年から各球団2名までだった自由獲得枠が、1名のみの希望入団枠に変更になりました(その後、'07年に撤廃)。

二宮 自由獲得、希望入団と言っても、実質的には逆指名制度ですよね。

清武 そのとおりです。代表に就任した頃、逆指名制度下の巨人のドラフトを調べていて、あることに気付いたんです。

 確かに逆指名で入った選手、たとえば高橋由伸、上原浩治、高橋尚成、阿部慎之助ら鳴り物入りで入った選手は額面どおりの活躍を見せてくれました。しかし、下位指名で獲得した選手は、ほとんど一軍で活躍していなかった。強いて言えば矢野謙次('02年6巡目)、林昌範('01年7巡目)くらい。

二宮 それは空いているポジションがなかったからじゃないですか?

清武 いや、それだけじゃないんです。スカウトが逆指名候補の選手に付きっきりになるから、他の選手に労力が割けないんです。

 たとえば関東に、どうしても欲しい選手がいたとする。その選手は巨人だけじゃなく阪神だって中日だって欲しいわけですよ。そうなると3日にいっぺんくらいは顔を出して〝誠意〟を見せる必要が出てくる。

清武英利氏

二宮 要するに特定の選手にかかりっきりになっちゃうわけですね。

清武 そうなんです。狙っている選手の顔を1週間も見ないと、もう不安で眠れなくなる。その間によそのスカウトと親しくなる可能性だってあるわけですから。だから、〝いつも、君のことを見ているよ〟という関係を常につくっておかなければならない。

二宮 狙っていた選手が他球団に持っていかれた場合、巨人では大変なことになるでしょう?

清武 まぁ、それもあります(笑)。だから、他球団の下位指名で活躍している選手について「なぜ、この選手を見落としたの?」とスカウトに聞くと、「いや、その選手の実力はつかめなかった」という声も返ってきた。これはショックでした。

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