福原義春 第3回「2人は漱石と池田菊苗の間柄?」

第2回はこちらをご覧ください。

撮影:立木義浩

シマジ 最近、福原さんから沢山教えていただいた本のなかで『「うま味」を発見した男』(上山明博著 PHP研究所刊)は傑作でしたね。

 とくに後年、味の素を発明した東大の化学の教授になった池田菊苗がドイツの名門ライプツィヒ大学で学んだあと、ロンドンに短期留学した。そのときちょっとした縁で、夏目漱石と共同生活を送るあたりが面白くて圧巻です。

福原 ノイローゼに悩む漱石が暗い日々を過ごしていたところに、闊達な池田菊苗が飛び込んできて、日本の将来を憂いながら、毎晩、文学、哲学を語り合うあたりがいいでしょう。

シマジ 池田は若いとき、坪内逍遙の後任として國學院でシェークスピアを教えていたくらい文学に造詣が深かったから、化学者ながら漱石と文学談義に花を咲かせたのでしょうね。

福原 明治時代の知識人は多彩な才能を持っています。あの鴎外だって軍医総監まで務めながら、『澁江抽齊』なんて傑作を書いてしまうんですからね。

シマジ 鴎外は女にもモテたようですね。ドイツからわりない仲の女が横浜港まで追っかけてきたりして大変だった。

福原 ああ、『舞姫』のモデルになった女性の話ですね。

シマジ どうして漱石はイギリスで女にモテなくって、鴎外はドイツで女にモテたんでしょうか。

福原 その辺は立木さんがご専門ではないですか。