出版社が本のポータルを提供、そして著者がマーケターになる時代に
米大手出版社サイモン&シュスターが立ち上げた著者のためのポータルサイト。画面はスティーブ・ジョブズ氏伝記の著者、ウォルター・アイザックソン氏の専用ページ

 2011年10月、米大手出版社で、スティーブ・ジョブズ氏の自伝の出版元でもある、サイモン&シュスター社が新しく発表したサービス、「Author Portal(著者のためのポータル)」は、とても革新的なことを出版業界にもたらしました。

 同社から書籍を出版した著者(イラストレーター、エージェントも含む)のみが登録可能なこのサービスを利用することで、著者は自分が出版した書籍の主要な売上データを閲覧することが可能になったのです(情報源:ロサンゼルス・タイムズ)

 実はオンライン小売り大手のアマゾン・ドット・コムも2010年12月から同様のサービスを提供しているのですが、対象は紙で出版された売上の75%分のみが対象でした(ニールセン・ブックスキャンのデータ)。サイモン&シュスター社のポータルでは電子書籍、ハードカバー、文庫、そしてオーディオブックの過去6週間分の売上データの閲覧が可能で、書店店舗毎の詳細なデータまでのアクセスは適わないものの、売上全体のデータにアクセスが可能になったのです。(エージェント専用のポータルもあり、そちらでは過去全期間の売上データへのアクセスが可能)。

View My Salesというコーナーからは売上データの閲覧が可能

 もう一点同ポータルの特徴的な点は、著者が書籍のプロモーションを効率的に行えるよう、フェイスブック、ツイッター、ブログ、ユーチューブ等のソーシャルメディア・ツールを使いこなせるためのアドバイスがウェブ上で提供されている点です。「ウェブ・ブート・キャンプ」と称したこのプログラムを通じ、同社のデジタル・マーケティング・チームのメンバーがオンラインでのインタラクティブな講座も提供しているとのことです。

 かつて著者は本を執筆し、本を売ることは出版社の仕事とされることが一般的な認識だったといえます。ただ今日のようにソーシャルメディア上の共感やクチコミが本の売上に重要な役割を果たす時代において、もはや著者は本を書くだけではなく、マーケターとして本を売ることが求められる時代になりつつあると言えるのではないでしょうか。

 出版社による"著者ポータル"開設、そして「マーケターとしての著者への期待」という動きは、サイモン&シュスター社以外にも他の大手出版社であるアシェット社の書籍グループ(2012年にポータル開設予定)やランダムハウス社が既に名乗りを挙げていることからも、見て取ることができます(情報源:ニューヨーク・タイムズ)。

ソーシャルメディアを活用した書籍プロモーションとは?

 英語で「author marketing(著者マーケティング)」とウェブサイトを検索してみると、数多くの専門エージェントやコンサルタントが存在し、著者自身が自分で出来る効果的なマーケティング方法についてのアドバイスがまとめられたブログ記事を多数見つけることができます。

 Facebook、ツイッター、ブログ、そしてメールマガジン等を運営することで書籍出版の裏話や興味喚起するコンテンツ情報を共有したり、読者同士のコミュニティを開設したり、どのようにして影響力のある人に書評を書いてもらったりするか等のアドバイスを、ウェブ上で容易に見つけることができます。

 各出版社のユニークな取り組みが事例としても紹介されていることがありますが、著者が自分でどのようにセルフ・ブランディング、セルフ・プロモーションをするかに関する情報のほうがネット上では数多く目にすることが出来ます。

 もちろん日本でもソーシャルメディア上での影響力を持っている人は書籍の売上にも優位性を発揮する場面もありますが、専門のエージェントやコンサルタントが数多く存在する米国の状況は、日本ではあまり見ることがまだ多くない専門サービス、職業であり、非常に示唆に富むことが多いです。

 日本国内でも豊富なブログ文化やソーシャルメディアの盛り上がりに後押しされる形で、数多くの書評がウェブ上で共有され、本に関するオンラインのコミュニティやリアルの読書会が生まれつつあることも近年目立つようになってきたように感じます。

 ただ、日本では著者がそのコミュニティに積極的に参加していく、ということに関してはなかなか効果的な接点が存在してなかったようにも思います。

 米国に見られるようなリアルタイムの売上データの開示が今すぐ可能になるかは不明ですが、出版社が読者と著者を結ぶようなポータルとしての場所、そして著者に対する効果的なソーシャルメディア・ツールの指南を提供することで、こうした書籍を巡る出版社、著者、読者のコミュニティの盛り上がり、ビジネスの発展は早々に可能になるのでは、ということを強く感じます。

 効果的な著者マーケティングに関するソーシャルメデイア活用事例、取りくみ等に関し、社会課題解決、ムーブメントつくりという文脈からも注目していきたいと思っています。共有すべき事例等ありましたら是非お知らせ頂けたら幸いです。

 本記事に関するご意見、ご質問、フィードバック等は筆者のFacebookページまでお願いいたします。ツイッターは@socialcompanyです。

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