雑誌
怒れサラリーマン!「公務員天国」
このままではギリシャの二の舞だ

本誌直撃に応じながらも、具体的発言は避け続けた勝事務次官。ニヤけた表情は〝陰の総理〟の余裕なのか

「宿舎25%削減案」に漏れた豪華宿舎がまだゾロゾロある上に、彼らの給与削減案は見送り濃厚。庶民は「大増税&年金カット」だというのに年金は信じられない手厚さなのだ

 東京・目黒区大橋といえば、誰もが羨む高級住宅地。その一角に2万m2近い敷地を占める公務員宿舎「大橋住宅」がある。午前8時46分、その4階建て宿舎から出てきたのは勝栄二郎・財務省事務次官(61)である。野田佳彦首相や安住淳財務大臣を手玉に取って消費税増税を主導し、「陰の総理」とも呼ばれる大物だ。実は、勝氏が後にしてきた宿舎の家賃はべらぼうに安い。広さは約90m2、3~4LDKの間取りで家賃と管理費を合わせて月約8万円。近辺の民間マンションなら25万円前後はするから、3分の1だ。

 公用車に向かって歩を進める勝氏を直撃する。

---次官が住んでいるこの大橋住宅は、公務員宿舎削減計画の対象になりませんでしたね。

「ええ~っと・・・・・・(苦笑い)」

---宿舎削減は消費税増税を実現するためのパフォーマンスとの声もあります。

「いやいや(小さな声でつぶやき、迎えの車に乗り込む)」

---陰の総理と言われることについてはどう思いますか。

「・・・・・・(視線を合わせず無言のまま)」

 ついに何も答えず、そのままドアを閉めて走り去った。

(注1)土地価格は財務省ホームページより(2010年3月時点路線価。千円以下切り捨て) (注2)三番町住宅の敷地面積と土地価格は、「宮内庁庁舎の敷地内に庁舎と宿舎が一体となった建物が建っている」(財務省理財局)ため、「不明」とした

 財務省は12月1日、国家公務員宿舎の削減計画を発表した。それによると、全国に約21万8000戸ある宿舎のうち、今後5年間で全体の25・5%にあたる5万6000戸を減らす。都心の千代田、中央、港の3区内の宿舎は、「危機管理用宿舎」などを除いて原則廃止。野田首相が建設凍結を表明していた朝霞住宅(埼玉県朝霞市)や、方南町住宅(東京・杉並区)は建設を中止。これらの跡地売却などで、約700億円を捻出することができるので、復興財源にあてるのだという。

 この計画に従って、南青山住宅(東京・港区)、広尾住宅(同渋谷区)、三番町住宅(同千代田区)の三つの公務員宿舎も削減されることになった。それだけを聞くと評価してもよさそうだが、騙されてはいけない。実際には、削減対象から外れた「高級物件」がまだゴロゴロあるのだ。『独身手当---公務員のトンデモ給与明細』(新潮文庫)の著者でジャーナリストの若林亜紀氏が指摘する。

「今回の削減計画を要約すると、『千代田区、中央区、港区の官舎は廃止の方向。ただし、危機管理住宅は残す。新たに建設することは自粛する』ということだけです。この3区以外の区にある既存の宿舎は、何も変更なしで残るということになる。本気で官舎用地の有効活用を行おうというのであれば、3区に限らず、勝次官が住む目黒区も含めて、他区の官舎も売却するなり、民間と共同開発するなりしていくべきです。勝氏の年収は約2300万円です。もともと公務員の給料は生活給で、住居費を含んでいます。それなのに格安官舎に住んでいるのは、給料の二重取りです。勝次官は高給を得ているわけですから、ご自分でお買いになるか、お借りになるべきでしょう」

 ちなみに、大橋住宅の土地価格は60億9656万円である。処分するなり、他に活用すれば大きな資金を捻出できることだろう。今回、削減対象にならなかった、都心の他の物件(上の表)がいかに「豪華」であるかを、一部、若林氏の解説を交えて紹介しよう。

●東郷台住宅(渋谷区) JR原宿駅から徒歩5分という便利さで、すぐ近くに東郷神社。都心なのに豊かな緑があって、最高の一角にある。「公務員の特権を象徴する宿舎で、政府税調会長('06年当時)の本間正明氏が愛人と同棲していた宿舎でもある」(若林氏)。土地価格は106億円。

●南平台住宅(渋谷区) 豪邸や億ションが立ち並ぶ一角にひっそりと「南平台住宅」の看板がある。
「国家公務員の官舎には所管官庁の名前はなく、その地区名しか入っていない看板が多い。民間の同等物件と比べて格安ですから、その批判を恐れてのことだと思います。姑息ですね。高級住宅地の中にも、こうした〝官〟であることを隠した宿舎が建てられているのです」

●紀尾井町住宅(千代田区) 7階建てで公務員宿舎と知らなければ億ションと見間違える。ここは、削減対象から除外される「危機管理用宿舎」とされている。同住宅について財務省理財局国有財産調整課は、こう説明する。

「紀尾井町住宅は、内閣の危機管理監が指定した、各省庁の危機管理要員が、職務上住まなければならない住宅です。災害などに備えてすぐに官邸に駆けつけられる場所に作られており、新しい危機管理要員が来たら出ていかなければなりません。入居中は無料です。本人の意思に関係なく、危機管理要員として住まなければならないからです」

 確かに危機に際してすぐに官邸や各省庁に急行する人員は必要だが、タダでいいのか。若林氏も疑問の目を向ける。

「私が厚生労働省の外郭団体に勤務していた頃、上司が危機管理用住宅でもある六本木宿舎に住んでいました。しかし、平日ですら出勤して来ず、遊んでばかりで、やがて天下りを前にして、赤坂に一軒家を購入しました。これでは、豪華宿舎が公務員の特権になってしまっています」

 削減対象から外すなら、実態を白日のもとにさらすべきである。

●目黒東山住宅(目黒区) 500戸数を超える世帯が住む大規模住宅。高級住宅地の青葉台が近く、民間との家賃格差が激しい宿舎だ。周囲は豪邸ばかりで、普通のサラリーマンではとても住めない。

●鵠沼寮(神奈川県藤沢市) 湘南屈指の高級住宅地の鵠沼松が岡にある。この地域はマンションを購入すれば1億円以上、借りても月20万円近い物件がゴロゴロしている。小田急線鵠沼海岸駅、江ノ電鵠沼駅にいずれも徒歩10分圏内。

 この他にも、例えば、湾岸地区の江東区東雲にこの春完成したばかりの36階建ての「東雲住宅」がある。3LDK約68m2の家賃が約5万円! 削減を免れたこんな新築タワーマンションで、国家公務員がぬくぬくと暮らしているのである。

年に21万円も多い共済年金

 公務員が恵まれているのは、何も住宅だけではない。給与も民間に比べて高い。人事院がまとめた国家公務員の'11年の平均給与は月39万7723円(42・3歳)。一方、厚労省調査による '10 年の民間企業の平均給与は29万6200円(41・3歳)だ。1歳の差があるとはいえ、月額約10万円も国家公務員のほうが高い。民主党は今国会で、国家公務員の給与を平均7.8%削減する「特例法案」の提出を目指していたが、野党との実務者会議の段階で破談し、とても実現しそうもない。

「復興財源捻出を目的に仕上がった12・1兆円の第3次補正予算には、この7.8%削減で見込まれる2900億円が組み込まれている。削減は2年間の時限立法だというのに、公務員は守られすぎではないか」(全国紙社会部記者)

 元外交官で人事コンサルティングを手がける山中俊之・関西学院大学経営戦略研究科教授が言う。

「私が実際に働いてみた体験や、コンサルティングの経験から、公務員の給与は3割ぐらいカットしてもいいと思います。公務員の地位が安定しているのであれば、民間企業より低くてもよいのではないかという議論すら成り立つ。それに、やはり公務員の仕事は民間企業に比べて暇であることが多い。非効率、無駄なことをやっている。人事評価も民間に比べて甘い。一般行政職は人数を3割カットしていいと思います」

東京・千代田区の一等地にある三番町住宅。2階建ての瀟洒な建造物が目を引く。宮内庁の高級官僚が入居してきたが削減対象に入った

 橋下徹大阪市長が府知事時代に、一般行政職員の人事評価の分布を公表した。それによると、「非常に優れている」=13%をはじめ、「優れている」=53%、「良好」=33%と、上位評価がなんと99%を占めた。「やや劣る」は、わずか1%である。常識で考えても、そんな分布があり得るわけがない。公務員のお手盛り体質には呆れるばかりだ。

 もう一つ。公務員が圧倒的に有利なのが年金制度だ。一般サラリーマンが加入する厚生年金は、基礎年金(国民年金に相当)という1階部分と、所得に応じて金額が変わる比例報酬部分の2階建てになっている。ところが、公務員が加入する共済年金には、これに加えて「職域加算」という3階部分があるのだ。経済ジャーナリストの荻原博子氏が言う。

「職域加算の年額は、報酬月額の1000分の1・154とされています。例えば、月収40万円の人が38年間勤めた場合、40万円×1・154÷1000×456ヵ月=21万500円にもなります。同じ月収でも、公務員は年に21万円も年金受取額が多くなるのです。職域加算が設定されている理由は、『民間企業には公的年金に加えて企業年金があるが、職域加算はそれに相当する』というものです。しかし企業年金があるのは大企業だけで、中小企業にはないところが多い。しかも企業年金は従業員が自分で稼いだものを年金として受け取るのに対し、職域加算は税金から支払われる。まったく意味が違います」

 さらに、支払う「年金保険料」も公務員のほうが低いのだ。例えば、月収40万円の場合、厚生年金なら40万円×16・412%=6万5648円。これに対して、国家公務員は15・862%だから6万3448円と、月額で2200円も低い。他にもある。「遺族年金」は、厚生年金では両親が死亡した場合、子供に支払われる。ところが、共済年金の場合は、父母や孫、さらに祖父母にまで遺族年金の受給権がいく仕組みになっている。

 厚生年金と共済年金に、あまりに差があるため、これまで何度も一元化が図られてきたが、自治労など労組の反対で実現しなかった。ところが、野田政権になって、突然一元化に向けた動きが出てきた。荻原氏が厳しく批判する。

「これまでなぜ実現しなかったかといえば、公務員の共済年金には厚生年金にない旨味があるため、手放したくなかったからです。それがなぜ、一元化に向けた動きが出てきたかというと、今、本当に困っているのは、厚生年金ではなく共済年金のほうだからです。共済年金は現役1・1人でOB1人を支えている状態ですが、今後、日本郵政グループ労働組合員24万人が抜ければ、さらに維持するのが難しくなる。そこで、危機感を持った共済年金が、厚生年金と一体になることで、破綻を回避しようとしているのです。これだけでも相当に図々しい話ですが、さらに驚くのは『職域加算の特典だけは今まで通りにしてね』と言い張っている。とんでもない話です」

 かくして、庶民が所得税増税、消費税アップ、年金カットで苦しむのを尻目に、公務員は我が世の春を謳歌し続ける。このままでは日本はギリシャの二の舞になるだろう。前出・山中氏も警告する。

「大いにその可能性はあると思います。公務員の人件費削減すら滞っている。それが進まないことによって、他のあらゆる改革が進まない可能性があります。公務員の人件費は温存しながら、増税をして年金の負担も増やしていたら、国民は日本を見捨てます。国も破綻です」

 公務員天国など許してはならない。

[PHOTO]船元康子 結束武郎

「フライデー」2011年12月23日号より

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら