再審開始へ動き始めた「袴田事件」だが、長過ぎる拘禁生活に死刑囚も無罪を信じた元判事も「心神喪失」

 またひとつ死刑判決が下された殺人事件が、再審開始へ向けて動き始めた。

 「袴田事件」---静岡県清水市(現静岡市清水区)で、1966年、一家4人が惨殺、逮捕され、自白した袴田巌死刑囚が、公判では無罪を主張したものの通らず、68年9月、静岡地裁で死刑判決。東京高裁で控訴するも棄却、最高裁の上告も棄却され、80年12月、死刑が確定した事件である。

 袴田事件弁護団は、再審を請求するも棄却され、第二次再審請求を行っているが、12月12日、静岡地裁の開示勧告を受けていた静岡地検は、取り調べの録音テープ、公判未提出の供述調書、犯行時の着衣など176点を開示した。これを受けて弁護団は、証拠を精査、再審環境は整いつつある。

 有罪率99・9%を誇る日本の刑事裁判の歪みが、最近、噴出しており、菅家利和さんの再審無罪が決定した「足利事件」では、犯人を作り上げる捜査当局の"無法"が、改めて実証され、同じように冤罪を訴え続ける「袴田事件」が、昨春、映画化されたこともあって、再び注目された。

 「袴田事件」の衝撃は、一審で無罪判決を下した元判事が、「私は袴田死刑囚の無罪を信じていた」と、告白したことである。

 元判事の名は熊本典道氏。判決は3人の判事の合議制で、熊本元判事は無罪を信じていたものの、「2対1」で通らなかったという。だが、良心の呵責に耐えかねて判決の7ヵ月後に退官、弁護士となった。

 その後も「袴田事件」を忘れることができず、独自に警察による証拠を実証調査、「証拠は偽造」とするレポートを袴田事件弁護団に送るなど水面下での"支援"を続け、2007年2月、ついにマスコミの前で「彼は無実だ」と、訴えた。