乳酸だけではない! 筋肉疲労と脳の関係

 運動をしているときに「これ以上走れない」「疲れてもう自転車をこげない」と感じ、無理のないように筋肉の運動を抑制させることができるのは、筋肉から脳へ送られる神経系のシグナルによって制御されていることが、スイスのチューリッヒ大学の人間行動科学スポーツ研究所のKai Lutz博士らの研究によって明らかになり、2011年12月号のEuropean Journal od Neuroscienceに発表されました。これまでの研究では、筋肉疲労は、筋肉から分泌される疲労物質「乳酸」などによって、筋肉痛などが引き起こされることがこれまで確認されてきました。

 今回の研究は被験者に自転車こぎ運動をしてもらい、その時の脳の動きをfMRIで観察したもの。これによると筋肉を動かす運動を続けていると、運動ニューロンと呼ばれる、筋肉につながっている神経細胞と連動する脳の大脳皮質にある一時運動野(運動をコントロールする部位で、体幹、腕、手、足などを自発的に動かすための指令を出す場所)と島皮質(痛みや不快感、恐怖感など感覚的な情報を処理する場所)が活発に働いていることが明らかになりました。別の実験で、脊髄に麻酔をして、筋肉からの神経伝達を遮断した場合、脳の一時運動野や島皮質の活動は低下して、疲れを感じにくくしてしまうことがわかりました。

 この結果によって研究者らは、筋肉自体が作り出す疲労物質の存在も大切だが、その人にとって最適な筋肉運動の量を知らせるために、「疲れた」と感じさせるメカニズムには、神経と脳の働きがとても重要であることが明らかになったとし、今後は原因がよくわかっていない慢性疲労症候群などが起きるメカニズムの解明にもつながるのではないかと述べています。

医療ジャーナリスト 宇山恵子
European Journal of Neuroscience, 2011; DOI: 10.1111/j.