終盤国会の"つまらなさ"を読み解く

 12月2日、臨時国会(第179回国会)は閉幕を迎えた。

 終盤の数日間、テレビ中継入りに質疑もいくつかあったが、全般にあまり面白くなかった。失言問題の一川防衛大臣をはじめ、"閣僚のクビをとる"ことが焦点になったためだ。

 本来、今このタイミングで、国会で議論してもらいたい政策テーマは、いくつもあった。増税、社会保障、震災復興、TPPへの対応など、それぞれ何日間の集中審議をやってもよいぐらいの重要テーマだったと思う。

谷垣自民党総裁〔PHOTO〕gettyimages

 だが、そういう政策論争が置き去りにされたまま、国会は閉会。

 その大きな要因は、11月30日の党首討論だった。

なぜ谷垣はやりこめられたのか

 マスメディアでも論評されたとおり、谷垣自民党総裁vs野田総理のセッションで、谷垣総裁はほとんど見せ場を作れず。逆に、野田総理から「TPPで自民党の立ち位置は?」「増税は協議に応じてくれるのか?」と逆襲を食らい、やりこめられた。

 大将が負けた自民党は、これ以上の政策論争は不利とみて、失言問題追及と問責決議に突き進んだ・・・というのが、終盤国会の経過とみてよいだろう。

 だが、野田政権の支持率が低下し、求心力が失われつつある絶好の局面で、なぜ谷垣総裁は見せ場を作れなかったのか?

 本人のディベート能力の問題もあろう。だが、それ以上に、構造的な問題が背後に潜んでいる。

 それを読み解くために、まず、このつまらない党首討論を、<質問>と<答え>という"骨組み"だけに分解して見てみたい。

 谷垣総裁が取り上げたテーマは、1)沖縄防衛局長失言問題、2)TPP、3)増税の3点。1)は省略し、TPPから見ていく。

(参考)11月30日党首討論ダイジェスト
「谷垣総裁vs野田総理」「山口代表vs野田総理」の全テーマについて、<質問>と<答え>だけ分解したダイジェスト動画は、以下でご覧いただけます。
http://www.tokyopressclub.com/2011/12/blog-post_07.html

<谷垣総裁vs野田総理:TPP関連>

 〈 谷垣総裁: 政府として情報の公開を十分に行なっていただきたい。

野田総理: 情報提供については、これはしっかりと提供していきたい。

谷垣総裁: (TPP交渉における)国益は何かを明らかにしていただきたい。

野田総理: 守るべきものは守る。勝ち取るものは勝ち取る。これが私どもの基本的な協議に臨む姿勢。

 野田総理: 今、御党のTPPに対する立ち位置はどういうことなんでしょうか?

谷垣総裁: そういうお問いかけをなさるんであれば、やはり政府の持っている情報を提供していこうというところからスタートしていただかなければいけないと思いますよ。

野田総理: 明確な賛否についてのお答えがなかった・・・ 〉

 前置きや説明などの"飾り"を削って"骨組み"だけにすると、以上がやりとりの全て。

 こうしてみると、谷垣総裁が本当につまらない質問をしたことがよく分かると思う。

「情報をちゃんと出せ」「国益を明確にしろ」と、いずれも当り障りのない話。相手を本気で追及しようという質問ではない。

 なぜこんな質問をしたか・・・といえば、結局、自民党内に賛否両論あり、立場を明確にできなかったからだ。

 だから、野田総理は、「そんなつまらない話より、まず立場をはっきりさせろ」と迫って、一本とった。

 だが、その野田総理にしても、さして威張れる立場ではない。民主党内にも同じく賛否両論をかかえ、「交渉参加に向けて関係国との協議に入る」という"あいまい戦略"で収めたばかりだ。

 つまり、一連のやりとりは、冷静にみれば、立場の不明確な者同士が「どちらがより不明確か」を争ったという、甚だ低次元な討論だったのだ。

 続いて、増税について。

<谷垣総裁vs野田総理: 増税関連>

 〈 谷垣総裁: 年内にきちっと税率、消費税の値上げの時期を含んだ実施法案をまとめられ、それを閣議で決定されるのかどうか?

野田総理: 年内を目途に結論を出していきたいと考えております。
素案を作ったあかつきには、自民党は協議に応じていただけるんでしょうか?

谷垣総裁: 素案というのではなくて、きちっと成案を閣議決定していただきたい。
(中略)

野田総理: 手続きの問題とかそういうことじゃなくて、本質論として、・・・この国のためにこれ以上先送りをしないということで、議論していけるかどうか。 〉

 ここでも、谷垣総裁は、「素案でなく、成案を閣議決定せよ」というつまらない手続き論を展開。野田総理が「手続き論ではなく本質論で」と、また一本とった。

 谷垣総裁が手続き論に終始したのは、もともと自民党が先に消費税増税を掲げているため。つまり、民主党が同じ方向に舵を切った今、政策の方向性そのものは合致してしまったためだ。

 結局、こうしてみると、現在の永田町で最も注目を集めるテーマであるTPPも増税も、実は民主党と自民党の間では、そもそも議論すべき争点として成立していなかった・・・というのが事の本質。

 谷垣総裁の"敗因"は、ディベート能力以前に、「議論すべきテーマがなかった」ことだった。

 党首討論のもう一つのセッション、「山口公明党代表vs野田総理」は本稿では省略するが(ダイジェスト動画は前記サイトにて公開)、こちらも、明確な争点で議論を闘わせているとは言い難い内容だった。

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