「'90年代の飢饉では200万~300万人以上が死亡したと言われていますが、今回の混乱がこのまま続けば、同規模の惨状となるかもしれない。北東部地方ではすでに餓死者も出ている。自殺者、食糧を原因とする犯罪や暴動も起きている。'90年代の飢饉の時は政府の締め付けや取り締まりもあり、人民は黙ったまま死んでいった。だが今回は、政府への不満を訴える市民が多いと聞きます」(ある脱北支援者)
北朝鮮の経済が大混乱に陥っている。その元凶は、昨年11月30日に実施されたデノミネーション(通貨呼称単位の変更)だ。インフレに苦しむ金正日政権が、旧通貨100ウォンと新通貨1ウォンとの交換を強行した結果、逆に、さらなるインフレを引き起こしてしまったのである。
混乱の詳細は後述するとして、まずは本誌が独占入手した新ウォン札をご覧いただきたい(左ページ参照)。新紙幣は5000ウォンを最高額に9種類発行された。本誌はその内、5、10、50ウォン札を入手した。
紙幣左上には「2002」とある。8年前よりデノミを準備していたと推察できる。モデルは市井の人々が中心北朝鮮のウォン札は国際社会で信用がない。そのため、偽造対策を必要とせず、日本の紙幣のようなホログラムや凹凸感のある透かしもないお粗末な造りとなっている。色は緑が基調だ。
この新札発行によって北朝鮮経済は大混乱となったワケだが、アジアプレスの石丸次郎氏はその惨状をこう説明する。
「今回のデノミの狙いは、インフレ抑制や計画・統制経済への回帰と言われる。しかし、開かれていた市場は厳しく規制されたことで、物流が停滞、食糧価格が高騰し、ハイパーインフレを招いた。
実施直後は米価1kg約40ウォンだったものが、1月末から2月中旬で最大20倍の800ウォンまで跳ね上がり、1kg20ウォン前後だったトウモロコシも350~450ウォンとなり、売り手も買い手も値がつけられず国内の流通網も麻痺。市場はパニックになった。当局は2月に入り慌てて規制緩和に踏み切ったが、混乱が収まるには相当時間がかかる」
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