雑誌
保管タンクを作っても作っても、高線量の水が建屋の地下に溜まっていくのだ
東電は「行き場のない汚染水8万t」
どうするのか

汚染水から放射性物質「セシウム」を浄化するセシウム吸着装置。4号機の横にある工作建屋内の1階部分に設置されている

「早ければ年内には、敷地内に溜まった20万tを処理する」

 4月27日、東京電力は、福島第一原子力発電所内の高濃度汚染水の処理目標をこう発表した。それから7ヵ月---。汚染水の現状はこの発表とは程遠いものだ。いまだにタービン建屋地下には汚染水が溜まり続け、その量は11月中旬の時点で8万tにも上っているのだ。

津波で浸水し、瓦礫が残されたままのプロセス建屋入り口。汚染水は、まずプロセス建屋に送られ、油分が分離された後に、セシウム吸着装置へと運ばれる

 原発事故以降、福島第一原発には原子炉を冷却するために大量の水が注入されてきた。1~3号機では一日500tもの水が注入され、そのほとんどが高濃度汚染水として漏れ出て、タービン建屋の地下などに大量に溜まった。そのままタービン建屋地下で汚染水が増え続ければ、外に溢れ出る危険がある。そこで東電は、アメリカ「キュリオン社」製とフランス「アレバ社」製の浄化処理施設を導入。6月から汚染水の浄化処理が始まった。

「まず汚染水の油分を分解した後、汚染水を『キュリオン社』製のセシウム吸着塔に通して『ゼオライト』などの物質に放射性セシウムを吸着させます。次に『アレバ社』製の装置で、残った他の放射性物質を薬品と結合、沈殿させて取り除く。これで放射性物質を1000分の1程度まで除去できます。除染された水は、原発の敷地内に作られた保管タンクに貯蔵されます」(原発作業員)     

 細野豪志原発相(40)は、11月12日に福島第一原発を訪れ作業員らを激励するとともに、年内の原子炉の「冷温停止」に自信を見せた。この冷温停止を実現する柱とされるのは、原子炉内に溜まった高濃度汚染水を浄化し、原子炉に戻して冷却のために再利用する「循環注水冷却」システムである。しかし、今回の汚染水の浄化処理は、この循環注水冷却とは別物で、タービン建屋内の汚染水の量を減らすためのもの。このもう一つの汚染水問題が、冒頭で触れたように〝待ったなし〟の状況に追い込まれているのだ。

 これまで除染された汚染水の累計は、約15万8000tにも上り、その保管のために東電は10月から、かつて「野鳥の森」と呼ばれていた原発敷地内の森林を伐採。東京ドームの8倍もの広さの土地を作り、11万tの汚染水を収容するタンクを設置してきた。しかし、これらのタンクもすでに容量の8割にあたる約9万tが一杯になっている状態である。現在、現場では急ピッチで追加の保管タンクが準備されているが、タービン建屋地下の汚染水の量は一向に減らない。その理由は、タービン建屋に大量に流入している「地下水」だ。

「タービン建屋地下の壁には、震災前からひび割れがあり、原発事故以降、そのひび割れが大きくなったのでしょう。9月の時点で、毎日200~500tの地下水が流入していると言われるようになりました」(前出・原発作業員)

解決策は「ない」

原発から約800m離れた地点で作業にあたる作業員たち。手前にある何本ものホースは、除染された水を保管タンク(写真奥)まで送るためのものと思われる

 地下水の流入が止まらなければ、タービン建屋地下の汚染水は溜まって行く一方であり、保管タンクを作っても作っても足りない。東電は、この致命的な問題にどう対処するつもりなのだろうか。

「地下水の流入を防ぐために、タービン建屋に止水工事を行っていますが、現在でも完全に止めることはできていません。今のところ、はっきりとした解決策はない状態です」(東電広報部)

 現段階では何も手がないというのである。しかも、仮に地下水の流入を防ぐことができ、建屋の地下に溜まった汚染水をすべてタンクに収容できたとしても、今度はその水を最終的にどう処理するのかという問題が残る。これについても東電は、「現段階で公表できるものではない。今後解決策の検討をしていく」(同前)と言うに留まったのだ。元日本原子力研究所研究室長の笠井篤氏はこう語る。

「セシウム吸着塔を通ることで汚染水の放射線量は減りますが、依然として少量のセシウム137などの放射性物質は含まれています。それを最終処理するためには何度も『ゼオライト』などの吸着剤に吸着させ、さらに汚染度を下げてから海に流す方法が考えられます」

 だが、大量の放射性物質を海に流出させて国内外から批判されたことを考えれば、たとえ除染された水とはいえ、この方法をとるのは容易ではないだろう。しかも、東電がこれまで発表していた海への放射性物質の流出量は4月1日以降の流出量の累計に過ぎない。9月下旬に電力中央研究所により発表された調査結果では、実際の汚染水漏れは3月26日から始まっており、その量は東電の発表値の3倍(3500テラベクレル)にあたるということが判明。東電への不信感が再び高まっているのだ。笠井氏はまた、新たな問題点も指摘する。

「セシウムを吸着するために使われた『ゼオライト』などの廃棄物質をどう処分するのかというのも、大きな問題です。最終的には、地下シェルターのようなものを作って、地層処分をするしかないのではないでしょうか」

 汚染水処理の問題は、まさに八方ふさがりの状況なのである。

「フライデー」2011年12月16日号より

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