警察庁、「車道走行の徹底」を全国通達
後絶たないルール違反と事故増で方針転換
[自転車]

歩行者、子ども、バスまちの人、自転車が混在する歩道(一部画像を加工しています)=東京都世田谷区で10月12日

 交通ルール違反が後を絶たず、事故が深刻化している自転車。こうした状況を改善しようと警察庁はこのほど、自転車交通総合対策をまとめて全国の警察本部に通達した。中核をなすのが「車道走行の徹底」。歩道走行が事故を招いているとの指摘がある中、従来の姿勢を大きく転換したといえるが、総合対策を浸透させていくにはハード・ソフト両面で課題が多い。

 総合対策の要点は、

①自転車通行可の歩道削減
②自転車レーン(自転車専用通行帯)設置、自転車横断帯撤去などによる車道走行環境の整備
③ルール周知と安全教育
④指導・取り締まりの強化

---の4点。警察庁が10月25日に公表した。

 ①は幅3メートル未満の歩道で自転車の走行を原則禁止する方向を掲げ、「自転車通行可」標識の撤去を検討していく。

 ②は自転車レーンのスペースを生み出すため、片側2車線以上の道路で車の車線を減らしたり、利用度の低いパーキングメーターを撤去したりする方法を例示。歩道の延長で交差点に設置された自転車横断帯をなくすのは、車道を走行する自転車が交差点をスムーズに直進できるようにするのが狙いだ。

 ③は自転車教室を授業に組み込むよう学校や教育委員会に強く要請し、社会人や主婦についても運転免許更新時講習や事業所単位でルール教育を行うよう指示。

 ④はパトロール中の警察官が、スピードを出したい自転車利用者に車道走行を指導し、歩道で歩行者が危険な目に遭う走行を繰り返した者には交通切符(赤切符)を切っていくことを盛り込んだ。

 総合対策の背景には、自転車政策の長期にわたる不十分さと、それによる事故増加、マナー悪化がある。

 1960年に制定された道路交通法は、自転車を「車両(軽車両)」と位置づけ車道の左側走行を義務づけた。しかし、60年代後半からの急速な車社会の進展による「交通戦争」を受け、交通事故死者を減少させる一環として自転車を車と分離する方針がとられ、70年と78年の道交法改正で自転車の歩道走行が容認された。緊急避難的措置だったが、この方針は長らく見直されなかった。

歩行者との事故が10年で5割増

 だが、この10年間で自転車事故は深刻化している。10年の自転車事故は15万1626件で件数自体は減少傾向だが、交通事故全体に占める割合は20・9%で漸増傾向。特に歩行者との事故は2760件で10年前の1・5倍、自転車同士の事故も3796件で1・6倍になった。

 自転車と歩行者の事故はもちろん、ほとんどが歩道上で発生。事故に至らなくても、スピードを出して走り抜ける自転車に怖い思いをしたとの歩行者の声は多く、特に高齢者や障害者は危険に直面している。

 歩道走行は車との事故増加につながっているとの研究もある。自転車事故の約7割は交差点で起きているが、歩道を走る自転車は街路樹やガードレールなどで車から死角になるため、気づくのが遅れて交差点で事故が起きるというものだ。

 自転車のルール違反、マナー悪化も目立つ。自転車乗用中に死傷した人の65%に何らかの交通違反があった。

 こうした状況が、警察庁に従来姿勢の転換を迫った。総合対策の「基本的考え方」は、「多くの歩道が自転車通行可とされていたため、自転車は歩行者と同様の取り扱いをされるとの誤解が生じた」と指摘し、歩道走行が「自転車は車の仲間でない」との意識を生み、マナー悪化を招いたとの認識を示した。

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