放射性廃棄物「中間貯蔵施設」を福島県に
政府工程表 3年後の運用開始を目指すが・・・
[原発災害]

工程表などの資料を佐藤雄平・福島県知事(左)に手渡す細野豪志環境・原発事故担当相=福島県庁で10月29日

 東京電力福島第1原発事故による放射性物質の対処で政府はこのほど、除染で発生する汚染された土壌や廃棄物の「中間貯蔵施設」について、基本的な考え方と工程表を示した。中間貯蔵施設は福島県内に建設し、3年後をメドに運用を開始すると明示。貯蔵期間は30年以内として、最終処分は県外で行うことを約束した。しかし、施設建設用地も最終処分の方法や処分地についても案があるわけではなく、地元からはさまざまな懸念の声が挙がっている。先行きは極めて不透明だ。

 除染は、事故による放射性物質への対処を定めた特別措置法が来年1月1日に全面施行されてから本格化する。国は、自然界からの放射線量を除いた被ばく量が、年間1ミリシーベルト(毎時0・23マイクロシーベルト)を超える地域について責任を持って除染することを決めている。

 福島第1原発から半径20キロ以内の「警戒区域」と、事故発生からの1年間の積算線量が20ミリシーベルトに達する恐れのある「計画的避難区域」は、「除染特別地域」として国が直轄で実施。その他で対象となる地域は、文部科学省が実施している航空機モニタリングの結果や各自治体による地上での測定結果などを総合し、環境相が「汚染状況重点調査地域」に指定する。汚染状況重点調査地域については、費用は国が負担するが、実際に除染を行うのは自治体。国と協議しながら除染計画を策定し作業を進める。

 除染作業では、土を削り取ったり落ち葉や枝を拾い集めたりするため、大量の汚染物が発生する。環境省が文部科学省の航空機モニタリングの結果(9月18日時点)などから試算したところ、住宅地や工場など生活や産業活動の場となる地域を優先して作業した場合には、福島県で1500万立方メートルの汚染土壌などが発生する。また、森林なども含めて除染すると、同県で3100万立方メートルに上る。

 この結果から工程表では、中間貯蔵施設の容量を約1500万~2800万立方メートル程度、敷地面積は約3~5平方キロと想定した。一方で、福島県以外の都道府県の除染については、汚染土壌の量が比較的少なく、汚染レベルも低いことから、発生都道府県内の既存の管理型処分場などを活用し、中間貯蔵施設建設は検討しないとした。

 中間貯蔵施設には、廃棄物の大部分と考えられる土壌を濃度に関係なくすべて保管する。枝や落ち葉は焼却し、1キロ当たり10万ベクレルを超える灰を搬入。それ以下の濃度の灰は既存の管理型処分場に埋め立てる。

 大気と地下水での放射性物質の有無を検出する装置を中間貯蔵施設に設置し、モニタリングを続ける。また、保管方法は濃度によって変える。高濃度の廃棄物は、放射性物質が漏れないように細かく仕切った鉄筋コンクリート製構造物を地中に設置。廃棄物は容器に入れて小分けにし、搬入後はふたで覆い完全に地中に埋める。低濃度廃棄物は穴を掘って、小分けにして積んでいく。放射性物質を含んだ水が漏れないように遮水壁で囲み、搬入後は土をかぶせる。

 政府は、中間貯蔵施設の運用開始までは地域ごとに設ける「仮置き場」に汚染土壌などを保管する方針を示している。仮置き場は市町村ごとに設置し、除染特別地域では環境省が確保する。工程表では仮置き期間を3年とし、細野豪志環境・原発事故担当相は「国としても仮置き場の選定や安全の確保には責任を持ってやりたい。一定期間の後には中間貯蔵施設に移動させる」と強調する。

 しかし、工程表では中間貯蔵施設の具体的な立地場所の選定について、保管容量や施設の規模が明らかになった段階で「関係市町村や地域住民の理解と協力を求める」とするにとどめており、仮置き期間に根拠があるわけではない。

不透明な最終処分場の在り方

 また、裏付けがないのは中間貯蔵施設での保管期間「30年以内」も同じだ。環境省はその背景について「除染作業が20年以上続くと予想されるため」と解説するだけだ。最終処分場の場所や方法を明らかにしなかったことについて、環境省は「最終処分では放射性物質の量を減らすことが重要だが、一方で凝縮され高濃度の廃棄物が生じる。こうした廃棄物の最終処分場は国内になく、受け入れ先を探すのは非常に難しい」と釈明している。

 これについて森口祐一・東京大教授(都市工学)は「最終処分の方法まで見すえて初めて、今回の中間貯蔵施設の工程表が意味を持つ。早急に全国的な議論を始めることが重要だ」と指摘する。

 このような状況で、仮置き場も中間貯蔵施設も設置を受け入れる自治体が現れるかが最大の課題となる。住民の中には仮置き場からの放射性物質の漏出や放射線による健康被害への不安が根強い。一方、福島県内の自治体には、中間貯蔵施設がそのまま最終処分場になることへの懸念がある。市町村長からは「最終処分は県外でという約束が守られるのか」「30年後に空手形になるのではないか」との声も出ている。

 細野環境・原発事故担当相は「私は今、40歳。30年先をしっかりと見届けなければならないと思っている。そういう覚悟で工程表は作ってある。まずは耳を傾けていただきたい」と理解を求める。

 また、膨大な量の廃棄物をそのまま保管・処分する施設を作ることは現実的ではなく、汚染廃棄物の量を減らす「減容化」も課題となる。汚染廃棄物の発生量について、「環境省の試算よりも増える可能性がある」とする専門家もいる。米田稔・京都大教授(環境リスク工学)は「政府は減容への具体的な方針を示していくことが重要だ」と提言する。

 減容技術開発の例としては、財団法人「原子力研究バックエンド推進センター」が取り組んでいる研究がある。センターの森久起・専務理事によると、工事跡地の土壌から化学物質を法律で定める基準以下にするゼネコンの技術に着目し、放射性物質への応用を検討しているという。細野環境・原発事故担当相は「放射性物質の分離・濃縮など技術の研究開発を進め、責任を持って取り組んでいきたい」と話すが、減容技術の研究開発は始まったばかりだ。

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