弁護士業界に、「返還ビジネス」という新しいジャンルが誕生した。
きっかけは商工ローン業者や消費者金融業者に対する「過払い金返還請求」だった。その後、さすがにサラ金いじめもピークアウトしたが、しっかりと次のマーケットを探している。風は弁護士業界に吹いている。消費者庁が誕生、民主党政権は「自己責任」より「消費者保護」の立場を鮮明にしている。その風潮を見極めて、裁判所が「返還」を命じるケースが多くなることが予想される。

たとえば賃貸住宅の更新料である。
昨年8月、大阪高裁は「更新料は消費者契約法第10条に違反する」という判決を下した。
最終判断は最高裁に委ねられたが、高裁判決が"踏襲"されると、消費者契約法の施行(2001年4月)に遡って更新料の返還を求められる可能性がある。
この波及効果は大きい。更新料を伴う賃貸契約が最低でも年間100万件はあるということなので、9年間を対象とすれば1兆円内外の「返還ビジネス」が誕生することになる。
脱税で摘発された弁護士事務所
また、残業代についても返還請求が増えているのをご存じだろうか。
「過払い金返還請求」でテクニックを磨いた弁護士事務所が、小口請求を代行しているのだ。企業サイドも訴訟はさけたいと、現在のところ支払いに応じている。残業代は2年の短期消滅時効ではある。しかし「取り戻せる」と分かれば駆け込む離職者が、今後、急増しよう。ここでも「返還ビジネス」は広がりつつある。
前述のように「返還ビジネス」は、多重債務者の救済を名目にした「過払い金返還請求」から始まっている。しかし、実は弁護士救済のプログラムでもあるのだ。
過払い金問題を振り返ってみよう。
電車の中吊りやテレビCMなどで、「その借金、払い過ぎていませんか」などと、弁護士事務所や司法書士事務所が、「過払い金返還請求」を消費者金融や商工ローンの顧客に呼びかける広告が増えたのは最近のことだ。
きっかけは、2006年1月、最高裁がグレーゾーン金利(利息制限法の上限20%と出資法の上限29%の間の金利)を認めないという判決を出したことだった。弁護士業界(簡易訴訟代理を認められた司法書士も含むが本稿では除外)は、「過払いバブル」に沸いた。
月に7000万円もの広告費を使ってテレビCMを流す弁護士事務所もあれば、パラリーガルと呼ばれる弁護士業務の補助者を数十人も雇い、1日に100件もの任意整理事務を処理する弁護士事務所もあった。
力を入れるのは儲かるからだ。国税当局がそうした弁護士に税務調査を入れたところ、脱税で摘発されたケースが続出。業務はパラリーガルに任せ、本人は海外旅行を楽しむといった悪質なケースもあった。
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