本当に県民を愚弄しているのは誰か。谷津憲郎朝日新聞那覇総局長の「防衛局長発言」コラムが明かす朝日沖縄報道の「構造的差別」

佐藤 優 プロフィール

 さらに最も深刻なのは、谷津氏は、「本当に沖縄を愚弄しているのは誰か。本土に目を向けてほしいのは、むしろそちらの方だ」と、沖縄側に立って本土の政治家を糾弾する。スターリン時代のソ連に「告発者は告発されない」という俚諺があった。谷津氏は、「酒の席で基地問題を男女関係に例え、政府が意のままに出来るかのように表現するケースは、防衛局に限らず、時々聞いたことがある」と告白する。

 それならば、なぜそのことを書かなかったのか。オフレコの約束があった云々というのは、本質的な理由にならない。このような情報を報じることに公益性、公共性がないという判断を谷津氏がしたからだ。

本当に沖縄を愚弄しているのは誰か

 朝日新聞の那覇総局長が、田中氏の不適切発言について、「では、もし聞いていたら記事にしたか。参加したのが自分ではなく同僚で、そう報告を受けたら『書け』と指示したか。いまこう書くのは大変気が重いが、たぶん記事にしなかったのではないかと告白せざるを得ない」と明確に記し、そのようなコラムを朝日新聞が掲載したことの意義はとても大きい。

 朝日新聞の沖縄における最高責任者は、官僚とのオフレコによる拘束と国民、なかんずく沖縄県民の知る権利を比較した場合、前者が重いと判断していることが明らかになった。まさにこれこそが構造的差別者の視座と筆者は考える。そして、これが朝日新聞の現実なのである。

 沖縄を愚弄するのは、「基地問題を男女関係に例え、政府が意のままに出来るかのように表現するケース」を知りながら、記事にしなかった記者ではないのだろうか。いずれにせよ谷津氏のコラムは、朝日新聞の沖縄報道が岐路に立っていることを如実に示すものだ。

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著者:佐藤優
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