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平成の特攻隊「フクシマ50」に突入命令を出せますか
大量被曝の危険性が分かっていながら
〔PHOTO〕gettyimages

誰かがやらねばならない

 福島第一原発の大事故発生から約1ヵ月半、復旧の兆しはまるで見られない。東電は事故収束への「工程表」を発表し、「今後6~9ヵ月で安定状態に戻す」としたが、内容はあまりに楽観的。原発の暴走ぶりを見ると、ただの夢物語だ。

 そもそも、絶対に忘れてはならないことがある。工程表の目標を達成するには、どこかの段階で、「人間の手」による長時間の作業が必要---ということだ。

 たとえば、工程表の最初の3ヵ月「ステップ1」では、放射線量を減らすため、圧力容器に窒素ガスを注入し、格納容器に水を満たすことになっているが、この過程でも、人間が現場で自ら行わねばならないことが多い。遠隔操作ロボットはすでに一部で使われているが、建屋内の高湿度でレンズが曇り、瓦礫の上を前進もできず・・・と、本格的な作業は不可能だ。

 もちろんそんな環境は、ロボットだけでなく人間にも厳しい。ひどい蒸し暑さの中、ゴーグルが曇って前が見えず、重い防護服での作業も困難を極める。

 そして最も恐ろしいのが、言うまでもなく、放射線による被曝。現在の建屋内の放射線量では、人が「突入」して4時間余り作業をすると、年間の被曝線量の限度を超えてしまい、その後1年以上は現場に戻れなくなる。そのため、次々と人を投入、交替していかねばならず、最終的に何人の作業員が必要になるのか見当もつかない。

 今、現場の作業員たちは、気力も体力も限界に近いところで、苛酷な職務に奮闘している。彼らは当初、約50人とされたことで「フクシマ50」と呼ばれ、国内外でヒーロー視されている。

「フクシマ50」の現在の人数は約700人。内訳は東電の社員に加え、原子炉メーカーの東芝や日立製作所、それらの関連会社や子会社、そして自衛隊、消防、警察といった組織の人たちだ。彼らには今後、限度を超えるレベルの放射線を浴びて作業するという、さらなる危険が待ち構えている。

 ここで改めて考えてみたい。国と東電には、「フクシマ50」の面々を、放射線が充満する中に送り出す権利や権限があるのか。誰かがやらねばならぬこととはいえ、死ぬ可能性のある「特攻隊」のような仕事を命じることは正義なのか。

 法律家の立場から、名城大学教授で元東京高検検事の郷原信郎弁護士は言う。

「危険な職場で働くことは、命令されても拒否できます。これは、労働者に法的に認められた権利です。ただし、拒否した作業員が職場で不利益を被らないようなルールはないので、それを定める必要がある。公益通報者保護法と同じです」

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