核廃棄物の輸送ルートでデモと警察が激突したドイツーー議会で大事な政策を決められなくなった民主主義は、いったいどこへ向かっていくのだろうか
緑の党〔PHOTO〕gettyimages

 先週は、わが州、バーデン・ヴュルテンベルクで進行中の世紀のプロジェクト、「シュトゥットガルト21」をめぐる紛争について書いた。交通網の整備を含めた壮大な都市計画プロジェクトだが、2年前から一部の市民の反対で揉めに揉めている。去年の秋は、デモ隊と警察の衝突で400人もの負傷者が出るなど、不穏な事態になった。結局、にっちもさっちもいかず、市民投票(正確には州民投票)で民意を諮ることになり、その投票が先週の日曜、27日に行われたのだ。

 さて、その結果であるが、プロジェクト反対派の明らかな敗北となった。この2年間、反対派は毎週月曜日にデモをしてプロジェクトを糾弾し続け、したがって、報道されるのは、ほとんどが反対派の見解だった。

 もちろん、プロジェクトを応援する人々もいたのだが、反対派の過激さには遠く及ばず、一般市民は、そもそも賛成派と反対派のどちらが多いのかという見当さえつかなくなっていた。しかし、今回の投票結果で、必ずしも声の大きいグループが全体の意見を代表しているわけではないという事実が、明快に示されたのであった。

保守的な州で緑の党の知事が誕生

 バーデン・ヴュルテンベルク州というのは、50年以上もCDU(キリスト教民主同盟)が政権を担当してきた、いわば保守的な地盤である。ところが、3月27日に行われた州議会選挙で、思いもよらないどんでん返しが起こった。CDUが負けてSPD(ドイツ社民党)が伸してくるなら、まだわかる。ところが、この保守的な州で、なんと、突如、緑の党が政権の座に付いたのである。

 その理由はとてもわかりやすい。選挙直前に起こった福島の原発事故だ。緑の党は州内の原発の停止を唱えており、一方、CDUは原発擁護の姿勢を取っていた。福島の事故の後、州の有権者は迷わずに緑の党のエネルギー政策を支持し、それによって、CDUの牙城であったこの州に、突然、緑の党の政権が誕生した。ドイツで緑の党の州知事が出たのは初めてのことだ。

 それ以来、緑の党は、脱原発だけでなく、"シュトゥットガルト21粉砕"というもう1つの選挙公約の方も支持されていると思い込んでいた。ところが、今回の投票で、それが勘違いであったことが明るみに出たわけだ。今後、州知事は民意に従い、シュトゥットガルト21を推進していくことになる。

 1998年、16年のCDU政権の後、再び国政を握ったSPDが、それまで強行に反戦・平和を唱えていたにもかかわらず、2001年、自ら戦後初の海外派兵(アフガニスタン)を決定しなければいけなくなったことを思い出した。どの党も与党になれば、理想のみを唱えているわけにはいかない。

 さて、この同じ日曜日、ドイツではもっとすごいことが起こっていた。高濃度の核廃棄物がフランスからドイツ北部へ輸送中で、輸送を護衛する警察と、それを阻止しようというデモ隊が激しく衝突していたのだ。輸送中の核廃棄物は、元はドイツの物だ。ドイツは2005年まで、使用済みの核燃料棒は再処理のためにフランスのラ・アーグか、イギリスのセラフィールドに運んでいた。

 その量は、6670トンにも上る。2005年からは、核廃棄物の海外への輸送が禁止されたので、廃棄物はそのまま国内の中間貯蔵施設に保管しているが、以前に外国に出した物は、引き取る義務がある。放射線保護庁によると、すべての引き取りが完了するのは2025年とのこと。気の遠くなるような話だ。

 核廃棄物は、カストールと呼ばれる6メートルもの長さの頑丈な円筒型容器に閉じ込めて運ぶ。今回、11基のカストールが列車に積まれてラ・アーグを出発したのが23日。ラ・アーグは、ノルマンディー地方の一番北西の海岸沿いに位置する町なので、ドイツに入るまで、まず900キロぐらい走らなければいけない。

 ところが出発地点に、すでにデモ隊が集まっていた。400人というから、ドイツで起こるデモの規模に比べれば、何も起こっていないに等しいが、原子力大国フランスでも、ようやく反原発派が行動を起こし始めたということだ。そのデモ隊を、フランス警察が警棒でぼこぼこ殴っている映像には、ちょっと驚いた。ドイツでは、考えられない。

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