こんな復興会議、何の意味があるのか
まず目の前の被災者を救えよ
〔PHOTO〕gettyimages

被災地で暮らしてみなよ

「被災地では、依然として〝有事〟の状態が続いています。ところが政府の対応は〝平時〟に戻ってしまっている。菅首相や大臣が現場の視察に行くのはいい。でも行って見て、何をどう感じているかが問題です。

 たとえば被災地に行ったら、トイレに行ってみればいい。それだけで、被災者が何をどう不安に感じているのかが分かります。仮設住宅も、実際に中に入って生活してみる。すると、利便性も不便性もすぐに分かる。床に横になってみれば、毛布一枚じゃ寒くて大変だとか、隣の声が聞こえてプライバシーに問題があるとか。それこそが本当の『視察』ではないのですか」

 そう語るのは、民主党の黄川田徹代議士だ。黄川田氏は今回の大震災による大津波で、両親と妻、そして長男と秘書の5人を一挙に失ってしまった。

 壊滅した岩手県陸前高田市が地元だった同氏は、同じように家族や知人を失った被災者たちと手を取り合い、最前線で復興のための活動を続けている。

 そんな黄川田氏から見て、五月雨式に被災地にやってきては、現場をさらりと一周してすぐに東京に戻っていく首相や閣僚たちの行動には、「違和感を感じざるを得ない」という。

 政府がいま、あらゆるものを差し置いて、最優先でなすべきこと。それは言うまでもなく、膨大な数の被災者の救援だ。

 被災者の中には、震災発生から1ヵ月以上が経過したというのに、いまだ身を寄せる場所もなく、体育館などの避難所での生活を余儀なくされている人々がいる。原発事故によって故郷からの退去を強いられた人々は、戻れるあてもなく、職や生活の糧を失う不安に苛まれながらの避難生活を送っている。

 しかし、菅直人首相が夢中になっているのは、「会議」なのだ。この1ヵ月の間に首相が没頭してきたことは、被災地に仮設住宅を一挙に建てたり、放射能汚染で故郷を失った人々に適切な避難場所を提供したりすることではなかった。「○○対策」などと称する本部・会議を、やたらと乱立させただけだった。

 現在、政府内には閣僚が参加する主なものだけでも、「緊急災害対策本部」「原子力災害対策本部」「被災者生活支援特別対策本部」など6つの組織が存在する。さらにその下部には、副大臣らが取り仕切る「検討チーム」が複数乱立し、どこで何をやっているのか、全容を把握する人間がほとんどいないような状態だ。

 これらの事務処理にあたるスタッフからは、

「会議が多すぎて1日が会議だけで終わってしまう」

「それぞれの準備に忙しすぎて自分がいまどの会議に出ているのか、何を決めているのか分からなくなる」

 などの声が頻繁に上がる。これが〝有事〟の真っ只中にある政府中枢の現実だと思うと、暗澹たる気持ちになってくる。

 そんな政府の異常事態を象徴するのが、4月14日に発足した「東日本大震災復興構想会議」だ。

 首相は会議の立ち上げにあたり、「全国民の英知を結集して復興にあたる」などと、その基本コンセプトを誇らしげに説明した。

 この「復興構想会議」議長には、五百旗頭真・防衛大学校校長が就任。議長代理には建築家の安藤忠雄氏と東京大学教授の御厨貴氏が就き、委員には脚本家の内館牧子氏やソニー副会長の中鉢良治氏、さらに福島県の佐藤雄平知事や岩手県の達増拓也知事、宮城県の村井嘉浩知事ら、被災地の首長も名を連ねている。

 顔ぶれだけ見れば確かに豪華メンバーで、彼らの英知を集め「復旧ではなく復興」(菅首相)に向け、エコタウンなど理想論的都市計画を構想(≒夢想)するというのだ。

 しかし、顔ぶれが豪華なのと、組織に実行力があるかどうか、現実的な構想が出されるのかは関係がない。政治アナリストの伊藤惇夫氏は、こう指摘する。

「会議のトップ・五百旗頭氏と、ナンバー2の御厨氏は政治学者です。皆さんがそれぞれの分野で一流の方々であるのは疑いありませんが、官僚OBのような〝実働部隊〟が入っていない(達増氏は官僚出身だが外務官僚)ので、どんな素晴らしい構想を練り上げても、それを実施するのにもの凄い時間を費やすことになる。本来は提案された構想を同時並行で実行する、タイムラグなしの作業が必要ですが、これではムリだと思います」

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