菅さん、あなたが役人に愛されてどーすんの!?
あーあ、財務官僚にやられちゃったよ

「霞が関埋蔵金」に「脱官僚政治」―。菅副総理がよく口にしていたフレーズだ。だが、財務大臣に就任して聞こえるのは、「財政再建」や「消費税増税」といった言葉ばかり。菅さん、ひょっとして・・・。

 菅直人洗脳作戦―菅副総理が財務大臣を兼務して以来、財務官僚たちが進めてきた"プロジェクト"は、見事な成果を上げているようだ。

 2月14日、菅副総理はフジテレビ『新報道2001』に出演し、消費税引き上げを含む税制抜本改革を、予算が衆院を通過した後の3月から税制調査会(会長=菅副総理)で議論すると明言した。

 これまで菅副総理は、予算の無駄削減を優先し、消費税論議は'11年度以降とする方針を示していたが、大幅に前倒ししたわけだ。「税収が36兆円とか40兆円という段階で、このままの税制でいいのか」というのが前倒しの理由。税収不足を理由とする以上、目指すは増税である。洗脳の成果でなくて何であろう。

 菅副総理の「売り」は脱官僚だった。そのため、財務大臣兼務直後は財務官僚に取り込まれることを恐れて物理的に財務省と距離を置いてきた。財務省の建物には極力顔を出さず、執務は主に官邸5階の副総理室で行い、公用車には財務省秘書官ではなく民主党職員の「秘書役」を同乗させていた。

 だが、国会審議が始まるとそんなことをやってはいられない。国会開会から10日ほどすぎた1月29日の財政演説・経済演説(菅副総理は経済財政担当相を兼務)を聞けば、菅副総理の洗脳されっぷりがよくわかる。例えばこんな調子だ。

「健全な財政は安定した経済成長を支えるために欠くことはできません」(財政演説)

「未来に向けて・・・財政の健全化は不可欠の前提です」(経済演説)

 これらの言い回しは、景気回復より財政健全化を優先する立場であることを表している。

役人のカモになっちゃった

 また、税制についても「税制調査会において、税制抜本改革実現に向けての具体的ビジョンについて幅広く検討」(財政演説)と述べている。この「税制抜本改革」という言葉は、冒頭で紹介したテレビ発言でも使われていたが、財務省内では「消費税増税」と同義だ。

 さらに言えば、財務省は自公政権時代に財政至上主義者を抱き込んで'11年度までに消費税を含む税制抜本改革を行うという法律(所得税法附則)を通している。その意味では、「税制抜本改革」が「消費税増税」とイコールであることは、政界の常識。菅副総理も知らないわけがない。

 しかも、'11年度というタイムリミットを考えると、まだ1年の余裕があるし、ましてや民主党は野党時代に反対した法律なのだから、与党になった今、その附則を改正するのが筋のはずだ。にもかかわらず、菅副総理はなんの抵抗もなく「税制抜本改革」のくだりを読み上げた。財務省による洗脳が着々と進んでいることの証左であろう。

 現実問題として、国会開会中の大臣は休む暇もないほど忙しい。毎朝、官僚による国会答弁レク(質問に答えるために、大臣が官僚から「講義=レクチャー」を受ける)があり、日中は国会出席、役所に戻れば通常業務があり、山のような決裁文書にハンコを押して一日が終わる。

 なかでも財務大臣は、予算責任者の重責と守備範囲の広さの点で、他の大臣の比ではない。政府の活動で予算に無関係のものはないから、財務官僚は各省庁のほぼすべての国会答弁をチェックし、各省庁の担当者とそれぞれの大臣の国会答弁を調整する。財務大臣は、そうした各省庁大臣の答弁も含めて、レクを受けるのだ。

 もちろん、その量はハンパではないし、答弁当日の朝にごく短時間で行われるため、頭に詰め込むだけで精一杯。勢い、官僚の用意した答弁書を棒読みすることになる。菅副総理は連日の洗脳シャワーを浴びて、今では消費税増税が自分の役割であると思い込んでいることだろう。

 洗脳の成功には、怒濤のレク攻撃に加えて、菅副総理の経済オンチも大貢献している。読者も、テレビで全国放映されたあの異様なシーンを覚えているのではないか。菅副総理のもとに財務官僚OBの大串博志財務政務官や官僚が近寄って何度も説明するが、いっこうに埒(らち)が明かず、質疑がたびたび中断された、あの場面だ。

 1月26日の参院予算委員会。自民党の林芳正議員に子ども手当の「乗数効果(マクロ経済学の用語。政府支出を1とした場合の財政政策の波及効果)」を質問された菅副総理は、「おおむね0.7程度」と、「消費性向(支給額のうち消費に回る割合)」を答えてしまったのだ。

 乗数が1を下回れば、投資効果は当然ながらマイナスになる。そこで林議員が「消費性向と乗数効果の関係は」と重ねて追及すると、菅副総理はとうとう答えに窮し、官僚たちに助けを求めたというわけだ。マイクを前にうろたえる菅副総理に、エイズ問題で脚光を浴びた昔日の面影は微塵もなかった。

 国会における「乗数効果」は、実はよくある質問だ。過去10年で、乗数効果に関する質疑は104件もある。財務大臣がこのような頻出問題に答えられないとは、かなり情けない。

 乗数効果と消費性向との関係は、大学1年生の経済学試験によく出る基本問題だ。解答を記せば、子ども手当の乗数=消費性向÷(1-消費性向)だから、消費性向が0.7なら乗数効果は2.3が正解。菅副総理は残念ながら落第だ。乗数効果が答えられなかった初めての財務大臣だろう。

 なお、本来であればとっくに公開されているはずの議事録が、本稿校了段階(2月18日)ではまだ未公開。4回も議事が中断したせいか、それとも後の世にまで赤っ恥が残るのをいやがった菅副総理が発言訂正にならない範囲で議事録の微調整をしているのか・・・。

 ついでにもう一つ指摘しておこう。昨年12月16日、当時、国家戦略担当相だった菅副総理は成長戦略策定会議の席で、「1兆円で11兆円を生み出すような知恵があるはず」と、なんと乗数効果11を持ち出し、失笑を買った(日本のデータで計算した場合の理論上の最大値は3.3)。経済オンチぶりはすでにこのとき露呈していたのである。

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