企業・経営
東京モーターショーで豊田章男社長の興奮ぶりとは裏腹に見えてきたトヨタ自動車の経営が迷走する理由

 2年ぶりの東京モーターショーが12月3日から開催される。それに先立ち、11月30日と12月1日の両日は報道関係者限定で公開される。今回は、会場を縮小して幕張メッセから東京ビッグサイトに移すほか、前回に続いて米GMやフォードといった「ビッグ3」は参加しない。

 現代自動車が販売を撤退するなど日本の自動車市場は「長期低空飛行」が続いているため、日本で存在感をアピールしても意味がないと考える海外メーカーは増えており、これが東京モーターショーの衰退につながっている。

 東京モーターショーはかつて、デトロイト、フランクフルトの両モーターショーと並んで「世界3大モーターショー」と呼ばれていたが、今や北京や上海のモーターショーに比べると、出展企業や出展面積など活況ぶりは足元にも及ばなくなった。しかも日本の勝ち組企業の「代表選手」であったトヨタやホンダも赤字経営に苦しんでおり、ショーを盛り上げる余力がない。

レーシングスーツで登場した社長

 今回もいまひとつ盛り上がりに欠けることが予想される中で、トヨタ自動車の豊田章男社長が異様なほどにハッスルしている。しかもマスコミ嫌いで知られるのに、メディアに登場しまくっている。27日には富士スピードウェイで新型スポーツカー「86(ハチロク)」を公開し、豊田社長自らがレーシングスーツ姿で登場して紹介した。

豊田章男(28日、都内の前夜祭で、筆者撮影、以下同)

 珍しく一般紙のインタビューにも応じていたが、その筆者はレース好きの記者として知られ、国際C級ライセンスを持つ豊田社長のお気に入りの一人だ。

 28日にはこれまでに開いたこともないような豪勢な前夜祭を開催し、歌舞伎役者までも招待していた。挨拶した豊田社長も「色々なイベントがあるので、自分でも何が何だか分からなくなっています」と舞い上がっていた。

 業界のトップ企業として、東京モーターショーを盛り上げたい豊田社長の気持ちも十分に分かるし、その姿勢は評価してもいい。しかし、15年近くトヨタを取材してきた筆者にとって、イベントの多くが豊田社長の趣味や嗜好に合わせたものになっていることが気がかりになった。このため、自動車ファンや顧客に何を伝えたいのか今一つ分からないイベントとなっている。

 また、豊田社長自らが指示をしたのではなく、周囲のスタッフが社長の意向を慮って企画した内容であることが透けて見えてしまう。実はこの「構図」が今のトヨタの経営不振の真因であると筆者は考えている。モーターショーというたかがイベントだが、トヨタ不振の本質が垣間見えた。

 トヨタの経営は現在、創業家出身の御曹司の意向を慮ることばかりに注力されている。言ってしまえば、役員以下が御曹司の顔に泥を塗らないことに必死になっているのだ。たとえば、トヨタの国内事業は過剰設備や円高などが原因で大赤字を垂れ流しているが、豊田社長は「石にかじりついてでも現状の国内生産300万台を守る」と語る一方で、実務を預かる役員陣は、国内生産を守ることに限界を感じていることを吐露する。

 海外生産を加速すれば、国内の下請けの雇用を守れなくなり、地域から反発を食らうリスクがあるため、豊田社長にその矛先が向くのを防いでいるのだ。しかし、豊田社長の意向を慮りながらで対応では、経営にスピード感やシャープさが感じ取れない。これが日産自動車と比較して、経営のスピードが遅い本質的な要因になっている。

同イベントで

 現実的にはトヨタは下請け企業に対して厳しい値引き要求をしており、下請けは海外に行かなければ競争についていけない事態になっている。だから下請けからは「豊田社長の言うことと、現実に起きていることが乖離しているケースが多く、どれがトヨタの本当の方針なのか分かりづらいため、我々も動きづらい」(部品メーカー役員)といった声も出ているのだ。

 ある幹部はこう指摘する。

「社内で自由闊達に議論する雰囲気が消えた。誰も意見を言わず、社長に気に入られようとする社員が増えた。そして本質的な議論をしていないので、何か問題が起きた時の対応が遅くなり、かつ的確でない」

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